「旅行業を営みたいが個人でも事業を立ち上げることができるだろうか」といった疑問をみかけます。旅行業にも種類がありますが、結論からいえば「できる」ということになるでしょう。ここでは、旅行業を個人事業主が営む場合の注意点や申請書類・添付書類について説明していきます。
目次
個人事業主でも旅行業を営むことは可能
旅行業とは、以下の業務を行って報酬を得る事業のことをいいます。
【旅行業の業務】
基本的旅行業務
(1) 自己の計算における、運送・宿泊に関してのサービス(以下、運送等サービス)提供契約の締結行為
(2) 運送等サービスに関しての代理・媒介・取次・利用行為
<例>航空券の販売、旅館の紹介、貸切バスを利用したツアーの販売など
付随的旅行業務
(3) (1)に付随して行う、自己の計算における、運送等サービス以外のレストラン利用、観光施設入場等の
旅行サービス(以下、運送等関連サービス)提供契約の締結行為
(4) (2)に付随して行う運送等関連サービスに関しての代理・媒介・取次行為
(5) (1)及び(2)に付随して行う渡航手続き(旅券・査証取得)の代行、添乗員業務等の行為
相談業務
(6) 旅行日程の作成、旅行費用の見積り等の旅行の相談に応じる行為
個人でも旅行業登録は可能ですし要件も変わりませんが、申請書類の一部が法人と個人では異なることとなります。
※北海道経済部観光局ホームページ参照
したがって、重要なのは「個人か法人か」ということではなく、旅行業としての条件を満たしているかということになります。つまり、個人事業主でも旅行業を営むことは十分可能なのです。ただし、いくつかの注意点がありますので確認していきましょう。
個人が旅行業を営む際の注意点
法人に比べると信用度に差が生じる
旅行客の立場になって考えれば、個人よりも法人が営む旅行会社に依頼した方が安心感は高い、というのが正直なところでしょう。実際に旅行会社を利用する側は「この会社に依頼しても大丈夫かな」という不安を持っていますから、不安を払しょくするために、法人が営む旅行会社を選んでしまいがちかもしれません。実際には、安心できる旅行を提供できるかどうかは「旅行業を営むのが個人か法人か」という点ではないのですが、信用という視点から考えるとどうしても法人の方がメリットはが高くなるといえます。
金銭的ハードルが高い
旅行業登録申請を行う際、営業保証金という金銭を供託しなければなりません。営業保証金は非常に大きな金額であるため、個人が旅行業を営む場合は、公的融資なども活用しながらよく計画を立てて準備する必要があるでしょう。
【営業保証金】
第1種旅行業:7,000万円(旅行協会入会の場合は1,400万円)
第2種旅行業:1,100万円(旅行協会入会の場合は220万円)
第3種旅行業:300万円(60万円)
地域限定旅行業:15万円(3万円)
※北海道経済部観光局ホームページ参照
なお、「売上が伸びたら法人成りする」という手段は使えませんので注意が必要です。個人で営業を始め、後に法人化する場合は、改めて旅行業登録申請を行う必要がありますので、資金面には十分な余裕を持って法人成りへのイメージを描いておきましょう。
労力に限界がある
個人で旅行業を営むということは、事務からお客様の旅行計画の企画や手配作業などすべてを自力で行わなければなりません。このため、創業時に1人でスタートする場合は、資金的にも業務的にもハードルが低めである第3種旅行業や地域限定旅行業を選択する人もみられます。
北海道における個人の申請添付書類
個人が新規に旅行業の登録申請を行う場合、申請書に加えて以下を添付します。
- 住民票
- 役員の宣誓書
- 事業計画
- 組織の概要
- 直近の確定申告書の写し
- 管理者の合格証または認定証の写し
- 管理者の履歴書
- 管理者の宣誓書
- 管理者の定期研修修了証の写し
- 事故処理体制
- 旅行業務約款
- 旅行業界への入会承諾書(入会する場合)
※北海道経済部観光局ホームページ参照
まとめ
個人でも旅行業を営む人は多々見受けられますし、個人だからといって売上を上げることができないわけではありません。ただし、資金面や法人成りの条件面など、さまざまな点について想定しておくことが非常に大切です。
当事務所では、会社設立関連業務に加え旅行業登録申請についても取り扱いがあります。また、ヒアリングに重点を置いていますので、ご相談者様の現状を正しく理解したうえで助言を行うことも可能です。ご依頼の際には二人三脚で申請業務を行うことも大切ですから、まずはお気軽にご相談いただけますと幸いです。