外国人の帰化・永住
日本で暮らすようになって何年も経った外国人の多くが、日本での帰化や永住権の取得を考えるようになります。長年日本で暮らしていると、仕事や生活も日本人と変わらなくなってきます。しかし、外国人は労働などの目的のために日本で滞在することを認められていることから、数年おきに在留資格(ビザ)を更新しなければならず、転職にも制限があります。これからも日本で暮らしたいと思っている方は、そうした制限の無い帰化や永住を検討されるようです。
帰化と永住の違いは何か?
帰化と永住の最大の違いは、帰化が日本の国籍を取得して日本人となることなのに対して、永住は外国籍のまま外国人として日本に在留し続けることです。
帰化と永住のメリット・デメリットは何か?
帰化は、日本人となるため、永住などのビザを取得するのとは違い、ビザの更新や転職の制限といった、外国人特有の制限が無くなるといったメリットがあります。ただし、日本は原則として二重国籍を認めていないことから、母国の国籍を離脱しなければいけないデメリットがあります。
永住は、国籍が変わらないため、日本国籍を取得する帰化とは違い、母国の国籍をもち続けることができるメリットがあります。ただし、外国人としての扱いは変わらないことから、ビザの更新や在留カードの携帯が必要といったデメリットがあります。
どれくらいの外国人が帰化や永住権を取っているのか?
2023年(令和5年)の時点で、1年間に帰化を認められた外国人は8800人でした。
※法務省「帰化許可申請者数等の推移」国籍別帰化許可者数
これに対して、2024年(令和6年)の時点で、永住者のビザ(永住権)を取っている外国人は約90万人います。日本のビザをもっている外国人は約360万人となっているため、4人に1人が永住権をもっていることになります。
※出入国在留管理庁「令和6年6月末現在における在留外国人数について」
帰化と永住で手続はどう違うのか?
帰化と永住は、申請先(窓口)が異なっています。帰化は法務局で申請をしますが、永住は他のビザと同じく出入国在留管理局で申請します。永住は、申請書の提出まで行政書士に代行してもらうことができますが、帰化は、申請する本人も出頭しなければいけません。
帰化と永住の手続にはどれくらいの期間がかかるのか?
帰化の場合、法務省は手続にかかる期間(標準処理期間)を特に定めていません。一般的に帰化は、申請をしてから許可が出るまで10か月から1年かかるとされています。
永住の場合、出入国在留管理庁が標準処理期間を4か月としています。ただし、実際には各地の出入国在留管理局の混雑状況によって、それ以上の期間がかかります。比較的余裕のある地方の出入国在留管理局でも6〜7か月くらい、東京の出入国在留管理局では、それより長くて6か月〜1年くらいかかることが多いです。
当社に帰化や永住の相談に来る方の中には、帰化よりも時間のかからない永住を早く取りたいという方がいます。しかし実際には、永住なら短期間で取れるわけではないことに注意が必要です。
先に永住権を取って後から帰化する方がいいのか?
将来、帰化することも考えているが、先に永住権を取ってから帰化を申請する方が良いのでしょうか?永住の方が簡単そうだから、帰化を申請できそうでも先に永住を申請したいという方もいます。
帰化と永住を比べると、必ずしも永住なら簡単とはいえません。帰化は、法務省の要件が変更され、審査が厳しくなったといわれています。近年、帰化の申請全体の内、5〜10%が不許可となっています。ただし、帰化で不許可となった方の多くは、書類の内容に問題があるまま申請したり、面接の態様に問題があったりする方だといわれています。
一方、永住でも出入国在留管理庁のガイドラインが変更され、審査が厳しくなったといわれていて、納税状況の審査などが厳しくなっています。近年、永住の申請全体の内、50〜60%が不許可となっていて、特に東京などで不許可の割合が高くなっています。
このように、永住権も取るのがかなり難しいことが分かります。安易に、帰化より簡単そうだから永住にすると考えない方が良いでしょう。帰化と永住どちらの場合でも、要件を満たしていることや提出する書類に不備が無いことを十分に確認して、法務局や出入国在留管理局からの質問や面接にもしっかり対応することで、不許可となる可能性を大きく減らせます。まずは、帰化や永住の要件を満たしているのか専門家に判断してもらうことが大切です。
帰化と永住の要件はどう違うのか?
帰化と永住それぞれに多くの要件がありますが、ここでは主な要件について説明します。
帰化の要件
帰化が認められるには、5年以上継続して日本に住所があることが必要です(普通帰化)。5年以上継続してというのは、長い期間、日本を離れていないことが必要で、3か月を超える期間、日本を離れていると帰化が不許可となる可能性が高くなるといわれています。旅行や短期留学で3か月以内の期間だけ日本を離れていたのであれば問題はありません。また、要件にはあげられていませんが、帰化が認められた後に日本を離れて長期間、海外で暮らす予定があるとマイナスに評価されるようです。
帰化には、今もっているビザの在留期間についての要件はありません。しかし、日本に住所があるというには、日本に住民票があることが必要とされ、3年以上の在留期間が必要になります。転職が多いなどの理由で在留期間が1年しかないような方は、5年間、日本に住んでいても帰化が不許可となることに注意が必要です。なお、その場合でも10年間、日本に住んでいれば帰化が認められる可能性があります(簡易帰化)。
素行が善良であることという要件(素行要件)は、近年、厳しく見られるようになった要件です。特に交通違反や税金・年金の滞納などは厳しく審査されるので、軽い交通違反だから、納税が数日遅れただけだからと安易に考えず、注意して生活するようにしなければいけません。同居している人についても審査されるので、家族で違反がないようにすることが大切です。
生計を営むがことができるという要件(生計要件)では、安定した生活ができていることに注意が必要です。自営業で毎年の収入に上下がある方、派遣社員などで転職が多い方はマイナスに評価される可能性があります。
夫婦で帰化をする場合の要件
夫婦で帰化をする場合は、帰化の要件が緩くなります。日本人の夫または妻である外国人は、3年以上継続して日本に住所があるか住んでいて、かつ申請時にも住所がある場合、または、結婚してから3年が経っていて、かつ1年以上継続して日本に住所がある場合は、5年より短い期間で帰化が認められます。夫婦の一方で帰化が認められると、他方は帰化した日本人の夫または妻となるので、1人だと要件を満たさない方でも夫婦なら帰化できる可能性があります。
永住の要件
永住が認められるには、日本の国益となることが必要です。この要件については、ガイドラインで日本に10年以上継続して住んでいること、その内、3年以上の在留期間のあるビザを取って、5年以上継続して住んでいること(5年以上、日本に住民票があること) が必要としています。
10年という要件を満たすのが、永住の難しいところですが、高度専門職のビザをもっている方(高度人材)であれば、高度人材ポイント70点以上で3年以上の継続、80点以上で1年以上の継続に要件が緩くなります。これには、永住の申請日から3年前の時点に高度人材ポイントが70点以上あった方、1年前の時点に高度人材ポイントが80点以上あった方も含まれるので、高度専門職のビザをもっていない方でもポイントを計算してみることをお勧めします。
帰化と同じように、日本人の夫または妻である外国人は、結婚してから3年が経っていて、かつ1年以上継続して日本に住んでいる場合に要件が緩くなります。
素行が善良であることという要件(素行要件)は、帰化の要件と同じく近年、厳しく見られるようになった要件です。交通違反、税金の滞納、年金の未加入などがないようにする必要があります。
独立して生計を営むに足りるという要件(生計要件)は、一般的に年収が300万円くらい必要とされています。これも帰化の要件と同じく、安定した生活ができていることが重要です。
まとめ
帰化と永住は、それぞれにメリット・デメリットがあります。どちらも日本で暮らしている状況が審査されることになるため、帰化や永住を考えている方は、将来の申請に向けてしっかりと予定を立てて仕事や生活をすることが大切です。
帰化や永住は簡単に取れる資格ではありません。法務局や出入国管理局で申請書類などを聞いて、自分で申請をされる方もいますが、専門家なら気付ける細かな要件の見落とし、書類の不備などの理由で不許可となる方は多いようです。
もし、帰化や永住を考えているのであれば、ビザの専門家である行政書士に相談することが一番の近道です。当社は、多くの外国人の方の帰化・永住をサポートしてきました。要件を満たすか微妙なケースで許可を取った実績も多数ありますので、まずは無料相談をご利用ください。