農業、林業、漁業といった日本国内の人材を確保することが難しい産業で、外国からその分野の知識や経験のある人材を受け入れるときは、どのようなビザを取得する必要があるのでしょうか。また、ビザを申請するときに、どのようなことに気を付ける必要があるのでしょうか。
どのようなビザが必要ですか?
日本国内で人材の確保が難しくなってきた産業の分野うち、法令で特に指定されたものを「特定産業分野」といいます。外国人は、「特定技能ビザ(在留資格)」を取得することで、特定産業分野で働くことができます。2025年の時点で、次の16種類の産業が特定産業分野に指定されています。
介護、ビルクリーニング、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、自動車運送業、鉄道、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、林業、木材産業 *
* 自動車運送業、鉄道、林業、木材産業の4種類は、2024年から新たに指定されました。
どのような仕事が特定技能ビザで認められていますか?
特定技能ビザには、特定技能1号と2号という2つの資格があります。これらの資格では、外国人ができる仕事の範囲が異なります。
特定技能1号では、外国人は「相当程度の知識または経験を必要とする技能」が求められる仕事をすることができます。この仕事には、外国人が指導者から指示・監督を受けて行う仕事などが当たります。
特定技能2号では、外国人は「熟練した技能」が求められる仕事をすることができます。この仕事には、外国人が他の人を指導して、作業工程を管理する仕事などが当たります。
特定技能1号には、ビザの更新に制限がありますが、2号にはそうした制限がありません。ただし、外国人が初めて特定技能ビザを取得するときは、1号の資格しか取得できず、2号の資格は、1号の資格から変更する必要があります。
ℹ️ 出入国在留管理庁「特定技能1号の各分野の仕事内容」
ℹ️ 出入国在留管理庁「特定技能2号の各分野の仕事内容」
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外国人に従業員の指導を任せたい場合でも、まずは特定技能1号の資格から取ることになります。
特定技能ビザと技能ビザは何が違いますか?
特定技能ビザでは、ビザの対象となる活動が、分野別に幅広く仕事を指定する形で指定されています。その中には単純労働に当たる仕事も含まれています。
技能ビザでは、ビザの対象となる活動が、料理人やパイロットなど高度な技術や知識が求められる職業として指定されています。また、単純労働は認められていません。
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人材確保を目的としている特定技能ビザでは、外国人が単純労働をすることも認められています。
特定技能で外国人を雇用するときの条件はありますか?
特定技能ビザを取るときは、次の4つの条件をすべて満たす必要があります。
1.雇用契約の内容
特定技能で外国人を受け入れる者と外国人との間で結ばれる雇用契約のことを、特定技能雇用契約といいます。この雇用契約では、次の2つの内容を適切に定めていて、かつ法務省令の基準を満たしている必要があります。*
- 活動の内容と活動に対する報酬、その他の雇用関係に関すること
- 契約期間を満了した外国人の出国を確保するための措置、その他外国人の適正な在留に必要なこと
* 外国人であることを理由に、報酬の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、差別的な取扱いをしていないことが必要です。
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外国人と適切な雇用契約を結び、雇用を終えたときには外国人が帰国できるようにしておくことが求められています。
2.雇用契約の履行と支援計画の実施
特定技能で外国人を受け入れる者は、雇用契約に従って外国人を雇用するだけでなく、外国人の仕事や生活を支援するための計画(1号特定技能外国人支援計画)を作成して、実施することが求められます。そこで、次の2つを確かに行い、かつ法務省令の基準を満たしている必要があります。*
- 特定技能雇用契約の適正な履行
- 1号特定技能外国人支援計画の適正な実施
* 外国人を受け入れる者が、契約締結の日より前5年以内に、出入国または労働に関する法令に関する不正または著しく不当な行為をしていないことが必要です。
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雇用契約や支援計画を作るだけでなく、適切に実施できることが求められています。
3.支援計画の作成
はじめて日本で暮らす外国人の多くは、仕事や日常生活で支援を必要としています。特定技能で働く外国人に対するこれらの支援のことを、1号特定技能外国人支援計画といいます。特定技能で外国人を受け入れる者は、支援計画を実施することが求められていて、そのための計画を作成する必要があります。*
* 支援計画には、外国人と日本人との交流を促すための支援や、外国人を受け入れる側の事情で雇用契約を解除するときに新しい就職先を探すための支援が含まれます。
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受け入れた外国人が日本で仕事や生活をする中で困ることのないように、きめ細かくサポートすることが求められています。
4.その他の条件
雇用契約と支援計画の他にも、次の6つの条件をすべて満たす必要があります。
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- 受け入れる外国人が、次の6つの条件をすべて満たすこと
条件1 18歳以上であること
条件2 健康状態が良好であること
条件3 仕事に必要とされる「相当程度の知識または経験を必要とする技能」をもっていることが、試験その他の評価方法で証明されていること *
条件4 日本での「生活や仕事に必要とされる日本語能力」をもっていることが、試験その他の評価方法で証明されていること *
条件5 有効な旅券(パスポート)を所持していること
条件6 すでに特定技能1号で日本に在留したことがある場合は、在留期間が通算して5年に達していないこと
* 外国人が、技能実習2号を良好に修了していて、しかも技能実習で修得した技能が仕事に必要とされる技能と関連性があるときは、条件3、4を満たさなくても良い。 - 外国人やその配偶者、直系または同居の親族、社会生活で密接な関係をもつ者が、特定技能の活動に関して、保証金やそれ以外の名目で、金銭その他の財産を管理されないこと
契約の不履行について違約金を定める契約その他の不当に金銭その他の財産の移転を予定する契約が締結されておらず、かつ、締結されないことが見込まれること - 外国人が、契約の申込みの取次ぎのため、または特定技能の活動に向けた外国での準備のために、外国の機関に費用を支払っている場合は、その金額と費用の内訳を十分に理解した上で、その外国の機関と合意していること
- 外国人の母国や居住国の法律などで、日本で行う活動に関連して遵守すべき手続が定められている場合は、その手続を経ていること
- 食費や居住費それ以外の名目で、外国人が定期に負担する費用について、その費用に対して提供される食事、住居その他の利益の内容を十分に理解した上で合意していること
その費用の金額が実費に相当する金額であるか適正な金額であって、その費用の明細書その他の書面が提示されること - 特定産業分野別の告示の基準を満たすこと
- 受け入れる外国人が、次の6つの条件をすべて満たすこと
特定技能2号に変更する場合は、1.で「熟練した技能」が求められます。また、この場合に、外国人が技能実習で日本に在留していたことがあるときは、日本で修得、習熟、熟達した技能等の外国人の母国に移転しようと努めたと認められることが条件に加わります。
ℹ️ 出入国在留管理庁「特定技能制度 関係法令」
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外国人には日本で仕事や生活ができるだけの能力が求められています。様々な費用について外国人が理解していることも必要です。
特定技能ビザを取るにはどんな条件を満たす必要があるの?
外国人が特定技能ビザを取るには、技能試験と日本語試験に合格することが必要です。*
技能試験は、特定産業分野別に一定の技能をもっていることが求められます。
日本語試験は、日本語能力試験(JLPT)でN4以上、または日本語基礎テスト(JFT-Basic)でA2以上の認定を受けることが求められます。介護の産業分野では、介護日本語評価試験に合格する必要があります。
なお、技能実習2号を良好に修了した外国人については、技能試験と日本語試験が免除されます。
* 特定技能2号に変更する場合は、日本語試験がない代わりに、技能試験と実務試験で一定の技能水準を満たす必要があります。
ℹ️ 出入国在留管理庁「特定技能制度 試験関係」
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特定技能ビザを取得するときは、技能試験と日本語試験という2つの試験に合格する必要があります。
特定技能ビザの申請ではどんな書類が必要なの?
特定技能ビザを申請するときは、雇用契約書、支援計画書、技能試験と日本語試験の合格証明書、健康診断個人票といった書類を用意しなければいけません。
用意する書類は、特定産業分野や外国人の経験によって異なります。また、外国人に対する支援を外部に委託するかどうかでも異なります。
ℹ️ 出入国在留管理庁「在留資格「特定技能」」
特定技能ビザではどれくらいの期間在留できますか?
特定技能ビザでは、活動の内容に応じて、特定技能1号の場合は、1年を超えない範囲内の在留期間が、特定技能2号の場合は、3年、1年、6か月のいずれかの在留期間が指定されます。
また、在留期間は、特定技能1号の場合は、通算5年までとなりますが、特定技能2号の場合は、上限なく更新することができます。
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特定技能の資格で5年を超えて日本で働きたい方は、途中で特定技能2号に変更することが必要となります。
特定技能ビザで外国人を受け入れるときの流れは?
特定技能で外国人を受け入れるときは、次のような流れになります。
- 支援計画書の作成
まず、受け入れる外国人に対する支援の内容をまとめた、1号特定技能外国人支援計画書を作成します。 - 事前ガイダンス
仕事の内容や報酬、費用、入国手続、支援内容などの重要な事項を説明する、事前ガイダンスを行います。事前ガイダンスは、対面、テレビ電話などの方法で、外国人が十分に理解できる言語で行います。 - 健康診断
特定技能ビザの申請をする前3か月以内に、受け入れる外国人に健康診断を受診させます。*
* 技能実習で在留している外国人の場合は、1年以内で良い。 - 在留資格の取得・変更
出入国在留管理局に在留資格の取得や変更を申請します。在留資格認定証明書や在留カードを受け取ったら、受け入れる外国人に渡します。 - 査証の申請
外国にある日本大使館・領事館で査証(ビザ)を申請します。 - 日本に入国
旅券、査証、在留資格認定証明書を提出します。
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受け入れた外国人がスムーズに仕事や生活を始められるよう、日本に入国する段階から支援することが求められます。
受け入れた外国人にはどのような支援を行うの?
特定技能で受け入れた外国人が日本に入国した後、次のような支援を行います。
- 日本に入国する際の送迎
日本に到着した外国人を出迎え、住居などに送ります。 - 住居の確保
外国人が住宅を確保できるように、賃貸物件の情報を提供する、保証人になるなどの手伝いをします。 - 生活に必要な契約
銀行口座の開設やライフライン・通信の契約を手伝います。 - 生活オリエンテーション
日本の生活やルールなどの重要な事項を説明する、生活オリエンテーションを行います。生活オリエンテーションは、対面、テレビ電話などの方法で、外国人が十分に理解できる言語で行います。 - 日本語学習の機会の提供
外国人が日本語を学べるよう、日本語学校への入学、教材の入手、講座の利用手続、講師との契約などを手伝います。 - 相談または苦情への対応
外国人からの仕事や生活についての相談や苦情には適切に対応し、行政機関を案内するなどします。 - 日本人との交流促進
外国人と地域の日本人との交流を促進するための機会を設けます。 - 転職支援
外国人が自分の都合以外の理由で離職した場合は、転職活動を手伝います。 - 定期的な面談の実施・行政機関への通報
外国人や監督担当者と面談して、仕事や生活の状況を定期的に確認し、問題があれば行政機関に通報します。
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外国人に対する支援の全部または一部は、外部の登録支援機関に委託して、代わりに実施してもらうことも可能です。
特定技能ビザの申請を専門家に依頼したときの流れは?
特定技能ビザの申請を専門家に依頼したときは、次のような流れでビザを取得することができます。
- 専門家は、依頼者の方に予定している活動の内容について詳しくお聞きします。
- 専門家は、出入国在留管理局とも調整の上で、申請に必要な書類を検討します。提出する資料によっては、依頼者や外国人の方に用意してもらいます。
- 専門家は、申請書などを作成し、集めた資料と併せてビザを申請します。申請は、出入国在留管理局の窓口に提出して、またはオンラインシステムを利用して行います。
- 出入国在留管理局は、提出された書類をもとにビザを認めるか審査します。確認したい部分があるときは、追加の資料の提出を求めます。このときは、専門家が依頼者や外国人の方に必要な資料を案内し、用意してもらいます。
- 出入国在留管理局は、審査が終わると結果を通知します。ビザが認められたときは、専門家が窓口またはメールで在留資格認定証明書を受け取り、これを依頼者や外国人の方に送付します。外国人の方が海外にいるときは、依頼者から外国人の方に送付します。
- ビザが認められなかったときは、専門家が出入国在留管理局から理由を説明してもらい、依頼者や外国人の方に伝えます。もう一度申請するときは、専門家が説明してもらった理由を調べて対策をとります。
ℹ️ 出入国在留管理庁「在留資格認定証明書交付申請」
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専門家に依頼すれば書類の収集・作成や申請手続のほとんどを任せることができます。
まとめ:特定技能ビザで外国人材を確保しましょう!
日本で人材を確保することが難しい産業では、外国の人材を活用することも検討しましょう。外国の人材を日本に呼ぶときに申請するのが特定技能ビザです。特定技能ビザで外国人を受け入れるときは、ビザの申請手続だけでなく、外国人に対する様々な支援も行う必要があります。手続の負担が大きいという場合は、ビザの申請を専門家に任せた方が良いでしょう。ビザの申請をお考えの方は、当社までご相談ください。








