永住者とはどのような在留資格でしょうか。また、外国人が永住者の在留資格を取得するにはどうすればよいのでしょうか。
目次
永住者とは
永住者とは、外国人が外国籍のまま永続的に日本に在留し続けることができる在留資格です。永住者の在留資格を取得するには、他の在留資格で最低でも1年は日本に在留する必要があるため、初めて来日する外国人は、永住者の在留資格を取得することはできません。外国人は、永住者の在留資格を取得することで、在留期間や在留活動の制限が大きく緩和され、日本における活動が行いやすくなり、また、社会的な信用も高まります。
永住者の在留資格をもつ外国人は、2022年(令和4年)の時点で約86万4千人います。国籍別では、中国が約31万4千人、フィリピンが約13万7千人、ブラジルが約11万4千人などとなっています。
永住者の在留期間
永住者の在留期間は、無制限となります。
永住者と帰化の違い
永住者は、外国人が取得できる在留資格の一つであり、外国人の国籍に変更はありません。永住者には、在留期間や在留活動の制限がなくなる、元の国籍を維持し続けることができるメリットがありますが、長期にわたり在留して日本を生活の本拠としていても在留カードの携帯義務など外国人としての扱いは変わらないというデメリットがあります。
これに対して、帰化は、外国人が国籍を離脱して日本の国籍を取得することであり、日本人としての扱いを受けられます。帰化には、選挙権、被選挙権、公務員就任権など日本人だけに認められた権利をもつことができる、在留資格の更新など外国人に求められる手続が不要になるといったメリットがありますが、日本は二重国籍を認めていないため元の国籍は失われるというデメリットがあります。
永住許可申請の手続
永住許可申請は、申請人、法定代理人、申請等取次者などの資格をもつ者(弁護士または行政書士、親族または同居者等を含む)が、出入国在留管理局に申請書、申請内容に応じて異なる必要書類を提出して行います。申請等取次者が申請を行う場合は、申請人が日本に滞在している必要があります。標準処理期間は4か月とされていますが、状況により1年近い期間がかかる場合もあります。
申請提出者
法定代理人
申請人が18歳未満の場合は、親権者または未成年後見人、申請人が成年被後見人の場合は、成年後見人が法定代理人として申請を提出できます。
申請等取次者
地方出入国在留管理局長から申請等取次者としての承認を受けた雇用機関、教育機関、監理団体、公益法人の職員は、申請人からの依頼を受けた場合に申請等取次者として申請を提出できます。
弁護士または行政書士
地方出入国在留管理局長に届出をした弁護士または行政書士は、申請人からの依頼を受けた場合に申請を提出できます。
同居の親族など
申請人が16歳未満の場合や申請人が疾病その他の事由により自ら出頭することができない場合、申請人の親族または同居者もしくはこれに準ずる者で地方出入国在留管理局長が適当と認める者は、申請を提出できます。適当と認める者には、医療滞在の同行者、刑事施設・児童相談所・婦人相談所の施設の職員、老人ホーム等の職員、教育機関等の職員、児童養護施設等の職員などが当たります。
申請手続の流れ
永住許可申請は次のような流れで行います。
申請人が自ら手続を行う場合
①申請人は、出入国在留管理局(外国人在留総合インフォメーションセンター)に在留申請の相談をします。出入国在留管理局の担当者は、申請人の在留資格や在留状況を確認したうえで、申請の要件を満たす可能性があると判断した場合は、申請に必要な書類について説明します。
②申請人は、申請書とその他の申請に必要な書類を作成・収集します。出入国在留管理局で説明される書類は、申請に最低限必要となる書類なので、審査を有利にするためには、その他にも様々な書類を作成・収集する必要があります。このとき、書類に誤った内容を記載しないこと、すべての書類で内容に整合性があること、審査を不利にする内容を記載していないこと、収集した書類の有効期間に余裕があることなどに注意する必要があります。
③申請人は、作成・収集した書類を出入国在留管理局に提出して申請します。
④出入国在留管理局は、提出された書類をもとに審査を行い、必要に応じて自宅や勤務先の訪問や質問を行い、追加の書類の提出を求める場合があります。
⑤出入国在留管理局は、申請人に審査結果の通知を行います。申請が許可された場合、申請人は出入国在留管理局で在留カードを受け取ることができます。
⑥申請が不許可となった場合、申請人は出入国在留管理局で不許可となった理由の説明を日本語で1回のみ受けられます。不許可となった理由は、再び申請をするときに改める必要があるため、申請に用いた書類の控えを残しておき、どのような理由で不許可となったのか調査できるようにしておく必要があります。不許可の理由の説明は、不許可の判断に対する不服申立の手続ではないため、申請人が不服を主張しても不許可の判断が覆ることはありません。
専門家に手続を依頼する場合
①申請人は、専門家に在留申請の相談をします。専門家は、申請人の在留資格や在留状況を確認したうえで、申請の要件を満たす可能性があると判断した場合は、申請人の依頼を受けます。専門家によっては、在留申請の知識が不十分な場合もあるため、相談・依頼をするときは外国人の在留手続に詳しい専門家を利用することが重要です。
②専門家は、必要な書類を作成・収集します。必要な書類については専門家の判断で作成・収集します。
③専門家は、作成・収集した書類を出入国在留管理局に提出して申請します。
④出入国在留管理局は、提出された書類をもとに審査を行い、必要に応じて自宅や勤務先の訪問や質問を行い、追加の書類の提出を求める場合があります。質問や追加の書類の提出は、専門家が取り次いで行います。
⑤出入国在留管理局は、専門家に審査結果の通知を行います。申請が許可された場合、専門家は出入国在留管理局で在留カードを受け取ることができます。専門家は、申請人に在留カードを送付します。
⑥申請が不許可となった場合、専門家は出入国在留管理局で不許可となった理由の説明を受け、申請人に伝えます。再び申請をするときは、申請人は専門家に不許可となった理由を調査して対策をとってもらうことで、許可される可能性が高くなります。
永住許可の要件
永住許可が認められるためには、次の要件を満たす必要があります(出入国管理及び難民認定法第22条2項)。
①素行が善良であること
②独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること
③その者の永住が日本国の利益に合すると認められること
永住許可に関するガイドラインの要件
永住許可の要件の判断には法務大臣の裁量があり、明確な判断基準があるわけではありませんが、判断の参考として出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン(令和5年4月改定)」が公表されています。
永住許可の要件①について
法律を遵守し日常生活においても住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいること。
日本人・永住者・特別永住者の配偶者または子は、要件①を満たす必要がありません。
素行が善良であるか否かは、社会通念に照らして判断され、犯罪歴、交通違反歴などが評価されます。これらの状況は、申請人だけでなく同居者についても評価される可能性があります。この要件で判断される事実は、個別に判断されるものではなく、総合的に判断されるため、永住許可申請を考えている場合は、消極的に評価される事実を少なくしておくことが大切です。
有罪判決を受けて懲役刑や禁固刑となった前科がある場合は、刑期を終えて10年以上経過しなければ永住が許可されません。また、罰金刑の前科がある場合や執行猶予付きの有罪判決を受けた場合は、5年以上経過しなければ永住が許可されません。
交通違反は過去5年の間に軽微な違反が数回あっても問題ないといわれていますが、交通違反の回数が5回以上になると数年間は永住が許可されない可能性があります。また、重大な交通違反がある場合は1回の違反でも永住が許可されない可能性があります。
在留期間の経過など不法滞在歴がある場合は、新たな在留資格を取得してから10年以上経過しなければ永住が許可されません。また、資格外活動違反がある場合は、在留資格の範囲内で活動を始めてから3年以上経過しなければ永住が許可されません。
永住許可の要件②について
日常生活において公共の負担にならず、有する資産または技能等から見て将来において安定した生活が見込まれること。
日本人・永住者・特別永住者の配偶者または子、難民の認定を受けている者は、要件②を満たす必要がありません。
独立の生計は、申請人の収入だけでなく申請人の配偶者の収入を併せて安定した生活ができる場合も含みます。一般的には年収が300万円未満の場合は、この要件を満たさないと判断される可能性があります。
永住許可の要件③について
原則として10年以上継続して日本に在留していること。ただし、この期間のうち、技能実習および特定技能(1号)以外の就労資格または居住資格で、5年以上継続して在留していること。
罰金刑や懲役刑などを受けていないこと。納税・年金・保険料の納付、届出などの公的義務を適正に履行していること。
現に有している在留資格について、最長の在留期間をもって在留していること。なお、3年以上の在留期間があるときは最長の在留期間があるものとして扱われます。
公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと。
永住許可の要件③についての特例
日本人・永住者・特別永住者の配偶者で、実体を伴った婚姻生活が3年以上継続し、かつ、1年以上継続して日本に在留していること。その実子等で、1年以上継続して日本に在留していること。
定住者の在留資格をもつ者で、5年以上継続して日本に在留していること。
難民の認定を受けた者で、認定後5年以上継続して日本に在留していること。
外交、社会、経済、文化等の分野において日本への貢献があると認められる者で、5年以上継続して日本に在留していること。なお、日本への貢献がある者については、出入国在留管理庁「『我が国への貢献』に関するガイドライン(平成29年4月改定)」が公表されており、外交、経済・産業、文化・芸術、教育、研究、スポーツなどの分野で一定の貢献があった者や成果をあげた者が対象とされています。
地域再生法に基づく地域再生計画において明示された区域内に所在する公私の機関において、特定活動(特定研究等活動)または特定活動(特定情報処理活動)を行い、日本への貢献があると認められる者で、3年以上継続して日本に在留していること。
高度人材外国人に当たる者、または永住許可申請日から3年前の時点で高度人材ポイントを70点以上を有していた者で、3年以上継続して日本に在留していること。
高度人材外国人に当たる者、または永住許可申請日から1年前の時点で高度人材ポイントを80点以上を有していた者で、1年以上継続して日本に在留していること。
特別高度人材に当たる者、または永住許可申請日から1年前の時点で特別高度人材の基準に当たっていた者で、1年以上継続して日本に在留していること。
申請に必要となる書類
申請には、永住許可申請書が必要となります。その他にも申請内容に応じて異なる書類が必要となります。
まとめ
外国人が永住者の在留資格を取得するには、一定の要件を満たしたうえで、永住許可申請を行う必要があります。要件の判断や永住許可申請で提出する書類の作成・収集には、専門的な知識が必要となりますし、申請手続やその準備には多くの時間がかかります。また、不許可となった場合は、その理由を適切に調査できないと、何度申請しても許可されないおそれがあります。そのため、永住許可申請を行うときは、専門家の支援を受けることが大切です。当事務所では、外国人の永住許可申請を代行するお手伝いをしていますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。