外国人が経営・管理の在留資格を取得する方法

経営・管理とはどのような在留資格でしょうか。また、外国人が経営・管理の在留資格を取得するにはどうすればよいのでしょうか。

経営・管理の在留資格とは

経営・管理とは、外国人の経営者や管理者が、日本において事業の経営や管理に従事する活動を行うことを認める在留資格です。

経営者や管理者には、事業の経営や管理に実質的に関わる者である、代表取締役、取締役、監査役、部長、工場長、支店長などが当たります。

事業は、国内資本、外国資本を問わず対象となります。また、会社を設立する場合は、設立登記をする前でも在留資格を取得できます

事業の経営や管理に関係していても、法律・会計に関する法律上の資格に基づいて行う必要がある活動は、法律・会計業務の在留資格の対象となります。

経営・管理の在留資格をもつ外国人は、2022年(令和4年)の時点で約3万2千人います。

カテゴリー

経営・管理の在留資格には、カテゴリー1~4の区別があり、カテゴリー1~3に当たる場合は、在留申請で必要となる書類が簡略化されます。

①外国人が所属する機関が次のものに該当する場合はカテゴリー1に当たります。

・日本の証券取引所に上場している企業

・保険業を営む相互会社

・日本または外国の国・地方公共団体

・独立行政法人

・特殊法人・認可法人

・日本の国・地方公共団体認可の公益法人

・法人税法別表第1に掲げる公共法人

・イノベーション創出企業として認定を受けている、または補助金の交付やその他の支援措置を受けている企業

・一定の条件を満たす企業等(出入国在留管理庁「一定の条件を満たす企業等について」)

②外国人が所属する機関が次のものに該当する場合はカテゴリー2に当たります。

・前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表中、給与所得の源泉徴収合計表の源泉徴収税額が1000万円以上ある団体・個人

・在留申請オンラインシステムの利用申出の承認を受けている機関(カテゴリー1、4の機関を除く)

③外国人が所属する機関が次のものに該当する場合はカテゴリー3に当たります。

・前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表が提出された団体・個人(カテゴリー2を除く)

④外国人が所属する機関が次のものに該当する場合はカテゴリー4に当たります。

・カテゴリー1~3のいずれにも該当しない団体・個人

経営・管理の在留期間

経営・管理の在留期間は、5年、3年、1年、6か月、4か月、3か月のいずれかとなります。

申請の手続

経営・管理の在留資格を取得する場合は、申請人の在留状況に応じて、在留資格認定証明書交付申請、在留資格変更許可申請、在留資格取得許可申請のいずれかの手続が必要となります。

在留資格認定証明書交付申請

在留資格認定証明書交付申請は、申請人、法定代理人、外国人を受け入れようとする機関の職員その他法務省令で定める代理人(代理人)、申請等取次者(弁護士または行政書士を含む)が、出入国在留管理局に申請書、申請内容に応じて異なる必要書類を提出して行います。法定代理人または申請等取次者が申請を行う場合は、申請人または代理人が日本に滞在している必要があります。標準処理期間は、1か月~3か月とされています。

在留資格変更許可申請

在留資格変更許可申請は、申請人、法定代理人、申請等取次者(弁護士または行政書士、親族または同居者等を含む)が、出入国在留管理局に申請書、申請内容に応じて異なる必要書類を提出して行います。申請等取次者が申請を行う場合は、申請人が日本に滞在している必要があります。標準処理期間は、2週間~1か月とされています。

在留資格取得許可申請

在留資格取得許可申請は、申請人、法定代理人、申請等取次者(弁護士または行政書士、親族または同居者等を含む)が、出入国在留管理局に申請書、申請内容に応じて異なる必要書類を提出して行います。申請等取次者が申請を行う場合は、申請人が日本に滞在している必要があります。標準処理期間は、在留資格の取得の事由が生じた日から60日以内とされています。

申請提出者

法定代理人

申請人が18歳未満の場合は、親権者または未成年後見人、申請人が成年被後見人の場合は、成年後見人が法定代理人として申請を提出できます。

代理人

経営・管理の在留資格では、申請人が経営を行いまたは管理に従事する事業の日本の事業所の職員、申請人が事業所を新たに設置する場合は、その委託を受けている者(法人の場合はその職員)が代理人として申請を提出できます。

申請等取次者

地方出入国在留管理局長から申請等取次者としての承認を受けた雇用機関、教育機関、監理団体、公益法人の職員は、申請人からの依頼を受けた場合に申請等取次者として申請を提出できます(在留資格認定証明書交付申請の場合は公益法人の職員のみ)。

弁護士または行政書士

地方出入国在留管理局長に届出をした弁護士または行政書士は、申請人からの依頼を受けた場合に申請を提出できます。

親族または同居者等

申請人が16歳未満の場合や申請人が疾病その他の事由により自ら出頭することができない場合、申請人の親族または同居者もしくはこれに準ずる者で地方出入国在留管理局長が適当と認める者は、申請を提出できます。適当と認める者には、医療滞在の同行者、刑事施設・児童相談所・婦人相談所の施設の職員、老人ホーム等の職員、教育機関等の職員、児童養護施設等の職員などが当たります。

申請手続の流れ

申請は次のような流れで行います。在留資格認定証明書交付申請は、一般的には国外にいる外国人に代わり日本国内にいる代理人が行います。

申請人が自ら手続を行う場合

①申請人は、出入国在留管理局(外国人在留総合インフォメーションセンター)に在留申請の相談をします。出入国在留管理局の担当者は、申請人の在留資格や在留状況を確認したうえで、申請の要件を満たす可能性があると判断した場合は、申請に必要な書類について説明します。

②申請人は、申請書とその他の申請に必要な書類を作成・収集します。出入国在留管理局で説明される書類は、申請に最低限必要となる書類なので、審査を有利にするためには、その他にも様々な書類を作成・収集する必要があります。このとき、書類に誤った内容を記載しないこと、すべての書類で内容に整合性があること、審査を不利にする内容を記載していないこと、収集した書類の有効期間に余裕があることなどに注意する必要があります。

③申請人は、作成・収集した書類を出入国在留管理局に提出するか、在留申請オンラインシステムを利用して申請します。

④出入国在留管理局は、提出された書類をもとに審査を行い、必要に応じて追加の書類の提出を求める場合があります。

⑤出入国在留管理局は、申請人に審査結果の通知を行います。申請が許可された場合、申請人は出入国在留管理局で在留資格認定証明書または在留カードを受け取ることができます。在留申請オンラインシステムを利用して申請した場合は、申請人は電子メールで在留資格認定証明書を受け取る、または郵送で在留カードを受け取ることができます(出入国在留管理庁「在留資格認定証明書の電子化について」)。日本にいる代理人が申請人の代わりに在留資格認定証明書の交付を受けた場合は、申請人に証明書を送付または電子メールを転送します。

⑥申請が不許可となった場合、申請人は出入国在留管理局で不許可となった理由の説明日本語で1回のみ受けられます。不許可となった理由は、再び申請をするときに改める必要があるため、申請に用いた書類の控えを残しておき、どのような理由で不許可となったのか調査できるようにしておく必要があります。不許可の理由の説明は、不許可の判断に対する不服申立の手続ではないため、申請人が不服を主張しても不許可の判断が覆ることはありません。

専門家に手続を依頼する場合

①申請人は、専門家に在留申請の相談をします。専門家は、申請人の在留資格や在留状況を確認したうえで、申請の要件を満たす可能性があると判断した場合は、申請人の依頼を受けます。専門家によっては、在留申請の知識が不十分な場合もあるため、相談・依頼をするときは外国人の在留手続に詳しい専門家を利用することが重要です。

②専門家は、必要な書類を作成・収集します。必要な書類については専門家の判断で作成・収集します。

③専門家は、作成・収集した書類を出入国在留管理局に提出するか、在留申請オンラインシステムを利用して申請します。

④出入国在留管理局は、提出された書類をもとに審査を行い、必要に応じて追加の書類の提出を求める場合があります。追加の書類の提出は、専門家が取り次いで行います。

⑤出入国在留管理局は、専門家に審査結果の通知を行います。申請が許可された場合、専門家は出入国在留管理局で在留資格認定証明書または在留カードを受け取ることができます。在留申請オンラインシステムを利用して申請した場合は、専門家は電子メールで在留資格認定証明書を受け取る、または郵送で在留カードを受け取ることができます(出入国在留管理庁「在留資格認定証明書の電子化について」)。専門家は、申請人に証明書や在留カードを送付または電子メールを転送します。

⑥申請が不許可となった場合、専門家は出入国在留管理局で不許可となった理由の説明を受け、申請人に伝えます。再び申請をするときは、申請人は専門家に不許可となった理由を調査して対策をとってもらうことで、許可される可能性が高くなります。

在留資格認定証明書交付申請

上陸許可基準

経営・管理の在留資格で上陸する場合、次の要件を満たす必要があります。

①事業を営むための事業所が日本に存在すること。ただし、事業が開始されていない場合は、事業を営むための事業所として使用する施設が日本に確保されていること。

経済活動が、単一の経営主体のもとで、一定の場所を占めて行われていること、財貨およびサービスの生産または提供が、人および設備を有して継続的に行われていることが必要です。

場所を短期間または一時的に借りる場合は、要件を満たしませんレンタルオフィスを短期間借りる、容易に撤去・移動可能な屋台キッチンカーなどで営業する場合は、要件を満たしません。レンタルオフィスを長期間借りる場合は、賃貸借契約書に事業用途であることを明記したうえで、事業所としての空間を確保して看板や標識・事業用の設備を設置するなど形式を整えることが必要です。住宅または賃貸住宅の一部を事業所として利用する場合は、要件を満たさないと判断される可能性があります。この場合は、賃貸借契約書に事業用途であることを明記したうえで、生活用途と事業用途の空間を明確に区切り、事業所としての空間を確保して看板や標識・事業用の設備を設置するなど事業所としての形式を整えることが必要です。

一定の独立した場所を確保しない場合は、要件を満たしません。事業所の場所を確保せず住所のみをもつバーチャルオフィス、複数の事業主体が場所を共有するシェアードオフィスコワーキングスペースは、要件を満たしません

②事業の規模が次のいずれかに該当していること。

(1)経営・管理に従事する者以外に日本に居住する2人以上の常勤の職員が従事して事業が営まれること

常勤の職員は、日本人、または永住者日本人の配偶者等永住者の配偶者等定住者の在留資格をもつ外国人が対象となります。資本金の額または出資の総額は、会社として事業を経営・管理する場合を指します。

(2)資本金の額または出資の総額が500万円以上であること

資本金または出資は、資金の出所や流れを合理的に説明できる必要があります。

(3)(1)または(2)に準ずる規模であると認められること

(1)に準ずる規模としては、常勤の職員は1人であるが、常勤の職員を雇用するのと同等の額の出資をする場合が当たります。(2)に準ずる規模としては、個人事業主が事業所の確保や職員の雇用などの費用として500万円以上をかける場合が当たります。

③申請人が事業の管理に従事しようとする場合は、事業の経営・管理について3年以上の実務経験を有し、かつ、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。

実務経験は、申請人が大学院において経営・管理に関する科目を専攻した期間を含みます。

ガイドラインの要件

上陸許可基準の判断の参考として出入国在留管理庁「外国人経営者の在留資格基準の明確化について(令和5年4月改訂)」が公表されています。このガイドラインでは、次の要件を満たす必要があるとされています。

①事業の経営・管理の活動を継続して行うことができること

事業活動が安定して継続できると見込まれることが必要となります。事業の継続性は、事業の性質や決算の状況などから総合的に判断されます。事業の継続性の判断において赤字決算や債務超過が問題となります。1期赤字決算になったとしても直ちに事業の継続性が否定されるわけではなく、赤字決算の原因・性質や今後の見通しを説明し、事業を改善するための対策をとることで事業の継続性が認められる可能性があります。1期債務超過となった場合は、専門家の評価を受け、債務超過を解消できる見込みがある場合は、事業の継続性が認められる可能性があります。2期連続して債務超過となった場合は、事業の継続性がないと判断される可能性が高くなります。ただし、増資他の企業からの救済を受けられる場合は、事業の継続性が認められる可能性があります。

②関係法令に従って、事業者としての義務を適切に履行すること

経営・管理に従事する者は、租税・労働・社会保険関係の法令を遵守することが求められます。

申請に必要となる書類

申請には、手続きに応じて、在留資格認定証明書交付申請書、在留資格変更許可申請書、在留資格取得許可申請書が必要となります。その他にも申請内容に応じて異なる書類が必要となります。申請人が所属する機関がカテゴリー1~3に当たる場合は、必要となる書類が簡略化されます。

結核スクリーニング

3か月を超える滞在予定期間で在留資格認定証明書交付申請をする場合、フィリピン、ベトナム、中国、インドネシア、ネパール、ミャンマー国籍の外国人は、日本政府が指定した医療機関が発行する結核非発病証明書を提出する必要があります(厚生労働省「入国前結核スクリーニングの実施について」)。

まとめ

外国人が経営・管理の在留資格を取得するには、一定の要件を満たしたうえで、在留資格認定証明書交付申請、在留資格変更許可申請、在留資格取得許可申請のいずれかを行う必要があります。在留申請で提出する書類の作成・収集には、専門的な知識が必要となりますし、申請手続やその準備には多くの時間がかかります。また、不許可となった場合は、その理由を適切に調査できないと、何度申請しても許可されないおそれがあります。そのため、在留申請を行うときは、専門家の支援を受けることが大切です。当事務所では、外国人の在留申請を代行するお手伝いをしていますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。