興行とはどのような在留資格でしょうか。また、外国人が興行の在留資格を取得するにはどうすればよいのでしょうか。

興行とは

興行とは、外国人が演劇、演芸、演奏、スポーツ等の興行に係る活動その他の芸能活動を行うことを認める在留資格です。

興行の在留資格で認められる活動は、①演劇、演芸、歌謡、舞踊、演奏など(演劇等)の興行(基準1号)、②スポーツなどの演劇等以外の興行(基準2号)、③その他の芸能活動(基準3号)の3つに分けることができます。

演劇等以外の興行には、各種スポーツの競技会、ダンスなどのコンテスト、ファッションショー、サーカスといった活動が当たります。その他の芸能活動には、商品や事業の宣伝、テレビ番組や映画の撮影、商業用の写真の撮影・映像の録画・音声の録音といった活動が当たります。

興行に係る活動その他の芸能活動を行う者には、出演する者だけでなく、活動を行うために必要不可欠な補助者である監督、演出家、振付師、美術・技術・照明・音響・衣装・撮影スタッフ、ヘアメイク、スタイリスト、マネージャー、トレーナーなどが広く当たります。

アマチュアのスポーツ選手が競技会などに出場する活動は、特定活動(アマチュアスポーツ選手)の在留資格の対象となります。

参加者に対して作品の製作体験や指導を行うワークショップ、講演会、講習会などに出演する活動は、芸術の在留資格の対象となります。

興行の在留資格をもつ外国人は、2022年(令和4年)の時点で約2千200人います。

興行の在留期間

興行の在留期間は、3年、1年、6か月、3か月、30日のいずれかとなります。

申請の手続

興行の在留資格を取得する場合は、在留資格認定証明書交付申請の手続が必要となります。

在留資格認定証明書交付申請

在留資格認定証明書交付申請は、申請人、法定代理人、外国人を受け入れようとする機関の職員その他法務省令で定める代理人(代理人)、申請等取次者(弁護士または行政書士を含む)が、出入国在留管理局に申請書、申請内容に応じて異なる必要書類を提出して行います。法定代理人または申請等取次者が申請を行う場合は、申請人または代理人が日本に滞在している必要があります。標準処理期間は、1か月~3か月とされています。

申請提出者

法定代理人

申請人が18歳未満の場合は、親権者または未成年後見人、申請人が成年被後見人の場合は、成年後見人が法定代理人として申請を提出できます。

代理人

興行の在留資格では、興行契約機関(興行契約機関がないときは、申請人を招へいする日本の機関)または申請人が所属して芸能活動を行うこととなる日本の機関の職員が代理人として申請を提出できます。

申請等取次者

地方出入国在留管理局長から申請等取次者としての承認を受けた公益法人の職員は、申請人からの依頼を受けた場合に申請等取次者として申請を提出できます。

弁護士または行政書士

地方出入国在留管理局長に届出をした弁護士または行政書士は、申請人からの依頼を受けた場合に申請を提出できます。

申請手続の流れ

申請は次のような流れで行います。在留資格認定証明書交付申請は、一般的には国外にいる外国人に代わり日本国内にいる代理人が行います。

申請人が自ら手続を行う場合

1 申請人は、出入国在留管理局(外国人在留総合インフォメーションセンター)に在留申請の相談をします。出入国在留管理局の担当者は、申請人の在留資格や在留状況を確認したうえで、申請の要件を満たす可能性があると判断した場合は、申請に必要な書類について説明します。

2 申請人は、申請書とその他の申請に必要な書類を作成・収集します。出入国在留管理局で説明される書類は、申請に最低限必要となる書類なので、審査を有利にするためには、その他にも様々な書類を作成・収集する必要があります。このとき、書類に誤った内容を記載しないこと、すべての書類で内容に整合性があること、審査を不利にする内容を記載していないこと、収集した書類の有効期間に余裕があることなどに注意する必要があります。

3 申請人は、作成・収集した書類を出入国在留管理局に提出するか、在留申請オンラインシステムを利用して申請します。

4 出入国在留管理局は、提出された書類をもとに審査を行い、必要に応じて追加の書類の提出を求める場合があります。

5 出入国在留管理局は、申請人に審査結果の通知を行います。申請が許可された場合、申請人は出入国在留管理局で在留資格認定証明書を受け取ることができます。在留申請オンラインシステムを利用して申請した場合は、申請人は電子メールで在留資格認定証明書を受け取ることができます(出入国在留管理庁「在留資格認定証明書の電子化について」)。日本にいる代理人が申請人の代わりに在留資格認定証明書の交付を受けた場合は、申請人に証明書を送付または電子メールを転送します。

6 申請が不許可となった場合、申請人は出入国在留管理局で不許可となった理由の説明日本語で1回のみ受けられます。不許可となった理由は、再び申請をするときに改める必要があるため、申請に用いた書類の控えを残しておき、どのような理由で不許可となったのか調査できるようにしておく必要があります。不許可の理由の説明は、不許可の判断に対する不服申立の手続ではないため、申請人が不服を主張しても不許可の判断が覆ることはありません。

専門家に手続を依頼する場合

1 申請人は、専門家に在留申請の相談をします。専門家は、申請人の在留資格や在留状況を確認したうえで、申請の要件を満たす可能性があると判断した場合は、申請人の依頼を受けます。専門家によっては、在留申請の知識が不十分な場合もあるため、相談・依頼をするときは外国人の在留手続に詳しい専門家を利用することが重要です。

2 専門家は、必要な書類を作成・収集します。必要な書類については専門家の判断で作成・収集します。

3 専門家は、作成・収集した書類を出入国在留管理局に提出するか、在留申請オンラインシステムを利用して申請します。

4 出入国在留管理局は、提出された書類をもとに審査を行い、必要に応じて追加の書類の提出を求める場合があります。追加の書類の提出は、専門家が取り次いで行います。

5 出入国在留管理局は、専門家に審査結果の通知を行います。申請が許可された場合、専門家は出入国在留管理局で在留資格認定証明書を受け取ることができます。在留申請オンラインシステムを利用して申請した場合は、専門家は電子メールで在留資格認定証明書を受け取ることができます(出入国在留管理庁「在留資格認定証明書の電子化について」)。専門家は、申請人に証明書を送付または電子メールを転送します。

6 申請が不許可となった場合、専門家は出入国在留管理局で不許可となった理由の説明を受け、申請人に伝えます。再び申請をするときは、申請人は専門家に不許可となった理由を調査して対策をとってもらうことで、許可される可能性が高くなります。

在留資格認定証明書交付申請

上陸許可基準

興行の在留資格認定証明書を取得して上陸する場合、次の要件を満たす必要があります。

興行(基準1号)の要件

演劇等の場合は、次のいずれかに当たること

1 次のいずれにも当たる日本の公私の機関と締結する契約に基づいて、風俗営業を営む施設以外の施設において行われること

⑴ 外国人の興行に係る業務について、通算して3年以上の経験を有する経営者または管理者がいること

⑵ その機関の経営者または常勤の職員が次のいずれにも当たらないこと

① 人身取引等を行い、そそのかし、またはこれを助けた者

② 過去5年間に不法就労活動(出入国管理及び難民認定法第24条第3号の4イ~ハ)に関わる行為を行い、そそのかし、またはこれを助けた者

③ 過去5年間に機関の事業活動に関し、外国人を不法入国させる目的で、文書・図画の偽造・変造、虚偽の文書・図画の作成、偽造・変造された文書・図画や虚偽の文書・図画を行使・所持・提供し、そそのかし、またはこれを助けた者

④ 外国人の不法入国に関わる罪(出入国管理及び難民認定法第74~74条の8)または売春に関わる罪(売春防止法第6~13条)により刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者

⑤ 暴力団員(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号)または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者

⑶ 過去3年間に締結した契約に基づいて興行の在留資格をもって在留する外国人に対して支払義務を負う報酬の全額を支払っていること

⑷ ⑴~⑶の他、外国人の興行に係る業務を適正に遂行する能力を有すること


2 従事しようとする活動が、次のいずれかに当たること

⑴ 国、地方公共団体、独立行政法人、特殊法人、認可法人、会社などの法人が主催する演劇等の興行、または学校、専修学校、各種学校において行われる活動

⑵ 日本と外国との文化交流に資する目的で国、地方公共団体、独立行政法人の資金援助を受けて設立された日本の公私の機関が主催する活動

⑶ 外国の情景または文化を主題として観光客を招致するために、外国人による演劇等の興行を常時行っている敷地面積10万平方メートル以上の施設において行われる活動

⑷ 客席において飲食物を有償で提供せず、かつ、客の接待をしない施設において行われる活動

施設は、営利を目的としない日本の公私の機関が運営するもの、または客席部分の収容人員が100人以上であるものに限ります。

⑸ 興行により得られる報酬の額が、1日につき50万円以上であり、かつ、30日を超えない期間日本に在留して行われる活動

報酬の額は、団体で行う興行の場合は団体が受ける総額を指します。


3 従事しようとする活動が、次のいずれにも当たること

⑴ 従事しようとする活動について、次のいずれかに当たること

① 外国の教育機関において活動に係る科目を2年以上の期間専攻したこと

② 2年以上の外国における経験を有すること

当該興行を行うことにより得られる報酬の額が、1日につき500万円以上である場合は、⑴の要件を満たす必要はありません。

報酬の額は、団体で行う興行の場合は団体が受ける総額を指します。

⑵ 次のいずれにも当たる日本の機関との興行契約に基づいて演劇等の興行に係る活動に従事しようとすること

興行契約は、機関が申請人に対して月額20万円以上の報酬を支払う義務を負うことが明示されているものに限ります。

① 外国人の興行に係る業務について通算して3年以上の経験を有する経営者または管理者がいること

② 5名以上の職員を常勤で雇用していること

③ 機関の経営者または常勤の職員が次のいずれにも当たらないこと

ア 人身取引等を行い、そそのかし、またはこれを助けた者

イ 過去5年間に不法就労活動に関わる行為を行い、そそのかし、またはこれを助けた者

ウ 過去5年間に機関の事業活動に関し、外国人を不法入国させる目的で、文書・図画の偽造・変造、虚偽の文書・図画の作成、偽造・変造された文書・図画や虚偽の文書・図画を行使・所持・提供し、そそのかし、またはこれを助けた者

エ 外国人の不法入国に関わる罪または売春に関わる罪により刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者

オ 暴力団員または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者

④ 過去3年間に締結した興行契約に基づいて興行の在留資格をもって在留する外国人に対して支払義務を負う報酬の全額を支払っていること

主として外国の民族料理を提供する飲食店を運営する機関との契約に基づいて、月額20万円以上の報酬を受けて飲食店において外国の民族音楽に関する歌謡、舞踊、演奏に係る活動に従事しようとするときは、⑵の要件を満たす必要はありません。

飲食店は、風俗営業を営む施設を除きます。

⑶ 演劇等が行われる施設が次のいずれにも当たること

ただし、興行に係る活動に従事する興行の在留資格をもって在留する者が施設において申請人以外にいない場合は、⑥に当たることが必要です。

① 不特定かつ多数の客を対象として外国人の興行を行う施設であること

② 設備を設けて客の接待をして客に遊興または飲食をさせる営業(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条第1項第1号)を営む施設である場合は、次のいずれにも当たること

ア 専ら客の接待に従事する従業員が5名以上いること

イ 興行に係る活動に従事する興行の在留資格をもって在留する者が客の接待に従事するおそれがないと認められること

③ 13平方メートル以上の舞台があること

④ 9平方メートル以上の出演者用の控室があること

出演者が5名を超える場合は、9平方メートルに5名を超える人数の1名につき1.6平方メートルを加えた面積となります。

⑤ 施設の従業員の数が5名以上であること

⑥ 施設を運営する機関の経営者または施設に係る業務に従事する常勤の職員が次のいずれにも当たらないこと

ア 人身取引等を行い、そそのかし、またはこれを助けた者

イ 過去5年間に不法就労活動に関わる行為を行い、そそのかし、またはこれを助けた者

ウ 過去5年間に機関の事業活動に関し、外国人を不法入国させる目的で、文書・図画の偽造・変造、虚偽の文書・図画の作成、偽造・変造された文書・図画や虚偽の文書・図画を行使・所持・提供し、そそのかし、またはこれを助けた者

エ 外国人の不法入国に関わる罪または売春に関わる罪により刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者

オ 暴力団員または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者


興行(基準2号)の要件

演劇等以外の興行の場合は、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること


興行(基準3号)の要件

その他の芸能活動の場合は、次のいずれかに当たり、かつ、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること

1 商品または事業の宣伝に係る活動

2 放送番組(有線放送番組を含む)または映画の製作に係る活動

3 商業用写真の撮影に係る活動

4 商業用のレコード、ビデオテープその他の記録媒体に録音または録画を行う活動

申請に必要となる書類

申請には、在留資格認定証明書交付申請書が必要となります。その他にも申請内容に応じて異なる書類が必要となります。

結核スクリーニング

3か月を超える滞在予定期間で在留資格認定証明書交付申請をする場合、フィリピン、ベトナム、中国、インドネシア、ネパール、ミャンマー国籍の外国人は、日本政府が指定した医療機関が発行する結核非発病証明書を提出する必要があります(厚生労働省「入国前結核スクリーニングの実施について」)。

まとめ

外国人が興行の在留資格を取得するには、一定の要件を満たしたうえで、在留資格認定証明書交付申請を行う必要があります。在留申請で提出する書類の作成・収集には、専門的な知識が必要となりますし、申請手続やその準備には多くの時間がかかります。また、不許可となった場合は、その理由を適切に調査できないと、何度申請しても許可されないおそれがあります。そのため、在留申請を行うときは、専門家の支援を受けることが大切です。当事務所では、外国人の在留申請を代行するお手伝いをしていますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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