国際結婚したものの、時間とともに夫婦の間にずれが生じてくることがあります。日本人同士でもさまざまな離婚理由がありますが、文化や価値観の異なる外国人が相手の場合も、やむなく離婚にいたるケースは少なくありません。ここでは、国際結婚後の離婚について考慮すべき事柄や手続きについて説明していきます。
国際結婚後の離婚で考慮すべき事柄
国際離婚にいたった場合、その後の手続きに向けて次のことに留意しておきましょう。
夫婦双方の母国における手続きが原則必要
国際結婚では、夫婦それぞれの母国に対しても婚姻の手続きを行いますが、離婚の際も同様にそれぞれの母国に対する手続きが必要です。夫婦が日本で暮らしている場合、日本国内で離婚届を提出すれば離婚成立となります。しかし、相手の国に対しても離婚の手続きをとらなければ、日本では離婚状態でも相手の国ではいまだ夫婦のままというずれが生じてしまうのです。
子の親権に関する準拠法
夫婦に子供がいる場合は、その親権をどちらがもつか決めなければなりません。このときの準拠法は通則法第32条になり、以下のように決められています。
- 子どもの本国法が父または母の本国法と同一である場合には子どもの本国法
- その他の場合には子の常居所地法
例えば、子の国籍がアメリカ人の父と同じであればアメリカの法律が適用され、日本人の母と国籍が同じであれば日本の法律が適用される、ということになるのです。子がいる場合の離婚は、夫婦の離婚手続きに留まらず、子の将来にも関わってくるものになるため、できるだけ国際結婚に詳しい法律の専門家に相談し、慎重に手続きを進めることが大切です。
国際結婚した夫婦の離婚の手続き
夫婦の離婚手続きは、具体的にどのような流れで進んでいくのでしょうか。ここでは、日本で離婚した場合の手続きと相手の国で離婚した場合の手続きについて整理します。
日本で離婚の手続きをする場合
日本国内で離婚の手続きをする場合、通常の離婚と同様の流れを辿ります。
協議離婚
夫婦が話し合って離婚を決める、非常に一般的な方法が協議離婚です。穏やかに話し合いが進めば揉め事も少なく済みますので、できるだけ協議離婚による成立を目指したいところです。
調停離婚
夫婦の話し合いでは決着がつかない場合、裁判所で調停委員を介した離婚の話し合いをすることもできます。調停委員が夫婦を片方ずつ呼んで話を聞き、相手方にその意向を伝え、夫婦が合意にいたることを目指して仲介協議を続けます。調停離婚でも、話し合いによって養育費や慰謝料などについて取り決めることが可能です。
裁判離婚
調停離婚でも夫婦の主張が交わらなかった場合、裁判離婚へと移行することが多々あります。離婚したい側が離婚事由を提示し、夫婦は互いに主張し合い、最終的に裁判官の判決を仰ぐことになります。
相手の国で離婚の手続きをする場合
夫婦が相手の国で生活しているのであれば、現地の法律にしたがって離婚手続きを進めることになります。国によって、離婚できる前提条件や手続きの流れは異なりますので、あらかじめよく調べてから離婚の話し合いに臨むことが大事です。
例えば、配偶者がアメリカ人で夫婦がアメリカに住んでいる場合、適用されるのはアメリカの法律になります。ただし、アメリカは自治体の権限が非常に強く、州ごとに法律が定められていることから、居住する州の弁護士を雇って間違いのない手続きを行う必要があるでしょう。
まとめ
国際結婚するときも離婚するときも、相手の国の法律に基づく手続きなしに完全な離婚は成立しません。アメリカのように州により手続き内容や流れが変わってくる国もあれば、フィリピンのように宗教的理由から離婚制度自体が存在しない国もあります。国の法律や制度もさまざまですから、できるだけ法律の専門家に相談しサポートを受け、正しい離婚手続きを進められるようにすることをおすすめします。