特定活動(外国人起業家)とはどのような在留資格でしょうか。また、外国人が特定活動(外国人起業家)の在留資格を取得するにはどうすればよいのでしょうか。

特定活動(外国人起業家)とは

特定活動(外国人起業家)とは、日本で起業しようとしている外国人が起業準備活動やその他の起業に関わる活動を行うことを認める在留資格(いわゆるスタートアップビザ)です。特定活動(外国人起業家)は、法務省告示44号で認められています(法務省告示(令和5年3月改正))。

起業準備活動には、事業所の確保その他の準備行為が当たります。また、起業に関わる活動には、起業準備活動に付随して行う報酬を受ける活動や事業の経営を開始した後引き続き事業の経営を行う活動が当たります。

特定活動(外国人起業家)の在留資格は、外国人起業活動促進事業制度に基づいて外国人起業家に与えられます(経済産業省「外国人起業活動促進事業に関する告示」)。外国人起業家が起業できる産業分野は、外国人起業活動促進事業を実施する地方自治体(外国人起業促進実施団体)によって異なります。また、風俗営業等の起業は認められません。

特定活動(外国人起業家)の在留資格では、資格外活動許可を取得することはできません

配偶者または子の帯同

特定活動(外国人起業家)の在留資格をもつ外国人の配偶者または子は、特定活動(外国人起業家の配偶者等)の在留資格を取得できます(法務省告示45号)。

在留期間

特定活動(外国人起業家)の在留期間

特定活動(外国人起業家)の在留期間は6か月となります。また、在留期間は1度更新することができ、通算1年の在留が認められます。

特定活動(外国人起業家の配偶者等)の在留期間

特定活動(外国人起業家の配偶者等)の在留期間は、扶養者の在留期間の満了日から1か月を超えない範囲内で月単位で指定されます。

在留資格変更許可、在留期間更新許可、在留資格取得許可では、4か月以上の在留期間が指定されます。

在留資格認定証明書交付では、通常は扶養者と同じ在留期間が指定されます。

申請の手続

特定活動(外国人起業家)の在留資格を取得する場合は、在留資格認定証明書交付申請の手続が必要となります。

在留資格認定証明書交付申請

在留資格認定証明書交付申請は、申請人、法定代理人、外国人を受け入れようとする機関の職員その他法務省令で定める代理人(代理人)、申請等取次者(弁護士または行政書士を含む)が、出入国在留管理局に申請書、申請内容に応じて異なる必要書類を提出して行います。法定代理人または申請等取次者が申請を行う場合は、申請人または代理人が日本に滞在している必要があります。標準処理期間は、1か月~3か月とされています。

申請提出者

法定代理人

申請人が成年被後見人の場合は、成年後見人が法定代理人として申請を提出できます。

代理人

特定活動(外国人起業家)の在留資格では、次の者が代理人として申請を提出できます。

1 申請人が所属して活動を行うこととなる機関の職員

2 申請人を雇用する者または法務大臣が告示をもって定める者

申請等取次者

地方出入国在留管理局長から申請等取次者としての承認を受けた雇用機関、教育機関、監理団体、公益法人の職員は、申請人からの依頼を受けた場合に申請等取次者として申請を提出できます(在留資格認定証明書交付申請の場合は公益法人の職員のみ)。

弁護士または行政書士

地方出入国在留管理局長に届出をした弁護士または行政書士は、申請人からの依頼を受けた場合に申請を提出できます。

申請手続の流れ

外国人起業家の起業活動は次のような流れで行います。

1 起業準備活動計画確認申請

2 在留資格認定証明書交付申請

3 査証申請

4 上陸手続

5 起業準備活動計画確認申請(更新用)

6 在留期間更新許可申請

起業準備活動計画確認申請

特定活動(外国人起業家)の在留資格を取得して起業しようとしている外国人は、まず起業準備活動計画を作成し、外国人起業促進実施団体に提出して、起業準備活動計画確認申請をする必要があります。外国人起業促進実施団体は、起業準備活動計画を審査して起業準備活動計画確認証明書を交付します。起業準備活動計画の審査では、1年以内に経営・管理の在留資格の要件を満たす見込みがあるか判断します。

在留資格認定証明書交付申請

起業準備活動計画確認証明書などの書類を提出して、在留資格認定証明書交付申請を行います。

査証申請

査証申請は、外国人が居住地または旅券発給国・地域を管轄する日本の大使館、総領事館などに、申請書、在留資格認定証明書などの書類を提出して行います。

上陸手続

外国人は、入国審査官に旅券、査証、在留資格認定証明書を提出して上陸申請を行います。入国審査官は、条件を充たすと判断した場合は、上陸を許可します。

起業準備活動計画確認申請(更新用)

起業準備活動を開始した外国人は、6か月の在留期間の間に起業準備活動計画(更新用)を作成し、外国人起業促進実施団体に提出して、起業準備活動計画確認申請(更新用)をする必要があります。外国人起業促進実施団体は、起業準備活動計画を審査して起業準備活動計画確認証明書(更新用)を交付します。起業準備活動計画(更新用)の審査では、6か月以内に経営・管理の在留資格の要件を満たす見込みがあるか判断します。

外国人起業促進実施団体は、起業準備計画を管理・支援するため、起業準備活動期間に定期的に計画の進捗状況を確認します。

在留期間更新許可申請

起業準備活動計画確認証明書(更新用)などの書類を提出して、在留期間更新許可申請を行います。

申請人が自ら手続を行う場合

1 申請人は、出入国在留管理局(外国人在留総合インフォメーションセンター)に在留申請の相談をします。出入国在留管理局の担当者は、申請人の在留資格や在留状況を確認したうえで、申請の要件を満たす可能性があると判断した場合は、申請に必要な書類について説明します。

2 申請人は、申請書とその他の申請に必要な書類を作成・収集します。出入国在留管理局で説明される書類は、申請に最低限必要となる書類なので、審査を有利にするためには、その他にも様々な書類を作成・収集する必要があります。このとき、書類に誤った内容を記載しないこと、すべての書類で内容に整合性があること、審査を不利にする内容を記載していないこと、収集した書類の有効期間に余裕があることなどに注意する必要があります。

3 申請人は、作成・収集した書類を出入国在留管理局に提出するか、在留申請オンラインシステムを利用して申請します。

4 出入国在留管理局は、提出された書類をもとに審査を行い、必要に応じて追加の書類の提出を求める場合があります。

5 出入国在留管理局は、申請人に審査結果の通知を行います。申請が許可された場合、申請人は出入国在留管理局で在留資格認定証明書を受け取ることができます。在留申請オンラインシステムを利用して申請した場合は、申請人は電子メールで在留資格認定証明書を受け取ることができます(出入国在留管理庁「在留資格認定証明書の電子化について」)。日本にいる代理人が申請人の代わりに在留資格認定証明書の交付を受けた場合は、申請人に証明書を送付または電子メールを転送します。

6 申請が不許可となった場合、申請人は出入国在留管理局で不許可となった理由の説明日本語で1回のみ受けられます。不許可となった理由は、再び申請をするときに改める必要があるため、申請に用いた書類の控えを残しておき、どのような理由で不許可となったのか調査できるようにしておく必要があります。不許可の理由の説明は、不許可の判断に対する不服申立の手続ではないため、申請人が不服を主張しても不許可の判断が覆ることはありません。

専門家に手続を依頼する場合

1 申請人は、専門家に在留申請の相談をします。専門家は、申請人の在留資格や在留状況を確認したうえで、申請の要件を満たす可能性があると判断した場合は、申請人の依頼を受けます。専門家によっては、在留申請の知識が不十分な場合もあるため、相談・依頼をするときは外国人の在留手続に詳しい専門家を利用することが重要です。

2 専門家は、必要な書類を作成・収集します。必要な書類については専門家の判断で作成・収集します。

3 専門家は、作成・収集した書類を出入国在留管理局に提出するか、在留申請オンラインシステムを利用して申請します。

4 出入国在留管理局は、提出された書類をもとに審査を行い、必要に応じて追加の書類の提出を求める場合があります。追加の書類の提出は、専門家が取り次いで行います。

5 出入国在留管理局は、専門家に審査結果の通知を行います。申請が許可された場合、専門家は出入国在留管理局で在留資格認定証明書を受け取ることができます。在留申請オンラインシステムを利用して申請した場合は、専門家は電子メールで在留資格認定証明書を受け取ることができます(出入国在留管理庁「在留資格認定証明書の電子化について」)。専門家は、申請人に証明書を送付または電子メールを転送します。

6 申請が不許可となった場合、専門家は出入国在留管理局で不許可となった理由の説明を受け、申請人に伝えます。再び申請をするときは、申請人は専門家に不許可となった理由を調査して対策をとってもらうことで、許可される可能性が高くなります。

申請に必要となる書類

申請には、在留資格認定証明書交付申請書が必要となります。その他にも申請内容に応じて異なる書類が必要となります。

結核スクリーニング

在留資格認定証明書交付申請をする場合、フィリピン、ベトナム、中国、インドネシア、ネパール、ミャンマー国籍の外国人は、日本政府が指定した医療機関が発行する結核非発病証明書を提出する必要があります(厚生労働省「入国前結核スクリーニングの実施について」)。

まとめ

外国人が特定活動(外国人起業家)の在留資格を取得して起業するには、外国人起業活動促進事業制度に基づいて、一定の要件を満たしたうえで、起業準備活動計画確認を受けて、在留資格認定証明書交付申請を行う必要があります。また、在留期間を更新するには、起業準備活動計画確認(更新用)を受けて、在留期間更新許可申請を行う必要があります。在留申請を行うときは、専門家の支援を受けることが大切です。当事務所では、外国人の在留申請を代行するお手伝いをしていますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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