イギリス人との離婚手続きは、たとえ双方に合意があったとしても決して容易ではありません。ここでは、国際離婚でイギリス人と離婚裁判した場合の現地での手続きについて説明していきます。
イギリスでの離婚手続きは裁判離婚しかない
イギリス人と離婚する場合、以下の条件を満たす必要があります。
- 結婚してから1年以上経過していること
- 夫婦関係が修復不可能である証明を提出すること
- 一定期間以上の別居が必要であること
- 夫婦双方が離婚に合意している場合:2年以上の別居
- 夫婦の片方が離婚したい場合:5年以上の別居
なお、イギリスでは裁判離婚が唯一の手段となり、条件付き判決を受け、最終判決にいたり、ようやく離婚が成立するのです。離婚証明書は、判決が出た後に、地方裁判所か離婚登記所で発行してもらうことができます。
在英日本大使館に離婚届を提出する流れと必要書類
在英日本大使館のホームページによると、裁判を経て日本の大使館に離婚届を提出する場合、以下の流れにしたがって手続きを行う必要があります。
- 離婚届の用意:A3サイズの離婚届用紙が必要ですので、大使館窓口に取りに行くかホームページからダウンロードし印刷しなければなりません。
- 離婚届への記入:届出書は必ず直筆で署名しますが押印は任意となります。
- 証明書コピーについて:在英日本大使館では証明書等のコピーを作成することはできません。
- 裁判離婚の場合:日本人が原告である場合は、判決確定後10日以内に届出をする必要があります。日本人が被告である場合は、判決確定後10日経過後に届出を行います。
- 子の親権について:イギリスの離婚裁判では一般的に共同親権となる点に注意しましょう。日本の法律に基づいて親権者を決める場合は、在英日本大使館への相談が必要です。
- 結婚に際し戸籍上の氏を外国人配偶者の氏に変更していたが、離婚により元の氏に戻したい場合は、離婚成立日から3ヶ月以内に以下の書類を提出します。
- 外国人との離婚による氏の変更届
- 離婚の事実が記載された戸籍謄本の原本とコピー
在英日本大使館に提出する書類
- 離婚届:在英日本大使館ホームページでダウンロード可
- 戸籍謄本:日本国籍を持つ者のみ
- 離婚判決確定証明書と日本語訳(訳文は大使館作成の雛形に基づく)
- 被告が裁判離婚に応じたことを確認できる離婚裁判承認書と日本語訳
- 届出人のパスポートのコピー
日本国内で離婚手続きを行う場合
日本国内で離婚手続きを行いたい場合は、協議離婚・調停離婚・裁判離婚のいずれかの手段をとることになります。夫婦の片方が日本人であり、夫婦が常に居住していた国が日本である場合、日本の法律を準拠法として手続きを進めることができます。
まとめ
イギリスでは裁判離婚が主となり、かつ離婚時に親権や財産分与についても決めてしまいます。日本に比べると時間がかかりやすく、また複数の問題にまたがって争うため、なかなか決着がつかず弁護士費用に多大なお金を投じてしまうケースも稀ではないといわれています。
また、日本国内で離婚が成立したとしても、相手方の国では婚姻関係が維持されたままであるため、イギリスでの裁判離婚の準備をして訴訟に臨み、両国で離婚の結果をつかみ取らなければいけません。
このように、イギリス人との離婚手続きは非常に複雑かつ時間を要することから、日本での手続きとイギリスでの手続きについてその流れをきちんと理解し、国際離婚に通じた弁護士の力を借りて争うことが不可避となってきます。
当事務所では、国際離婚に関するご相談をお受けしていますので、まずはお気軽にお問い合わせください。必要に応じて、連携する弁護士を紹介することも可能です。