帰化や国際結婚をするときに必要となるアポスティーユ、公印確認、領事認証とはどのような手続でしょうか。

外国における文書の真正の確認

帰化や国際結婚のように複数の国に関わる手続を行う場合、ある国で作成された文書を外国の機関に提出することがあります。このような場合、文書を提出された外国の機関は、その文書が権限のある者によって正しく作成されていること(文書の真正)を容易に確認することができません。そのため、外国の機関が文書の真正を容易に確認できる仕組みが必要になります。この仕組みに当たるのが、アポスティーユ、公印確認、領事認証といった認証(リーガライゼーション、リーガリゼーション)の手続です。

領事認証とは

文書の真正を確認する仕組みの一つとして考えられるのが、外国で文書を提出する前に、文書が作成された国にある外国の大使館または領事館が文書の真正を判断して証明する方法です。外国の大使館または領事館が特に公文書の真正について証明する手続を領事認証といいます。領事認証を受けた公文書は、外国においても文書の真正が推定されます。

ただし、領事認証の手続は外国の大使館または領事館が行うため、公文書上に押印された公印の真正まで確認することはできません。そこで、公印の真正を確認する手続が必要になります。この手続に当たるのが公印確認です。

公印確認とは

公文書について領事認証を受ける前に、文書が作成された国が、公文書上に押印された公印の真正を確認する手続を公印確認といいます。日本では、外務省が公文書の公印確認を行っています(外務省「証明(公印確認・アポスティーユ)・在外公館における証明」)。

公文書を提出する国によっては、公印確認ではなく、文書が作成された国の大使館または領事館の証明を必要とする場合があります。この場合は、公印確認を受けた文書について、大使館または領事館で重ねて証明を受けることはできないため、公印確認を受けないようにする必要があります。

アポスティーユとは

領事認証を受ける手続は、文書が作成された国と外国の双方の手続が必要となり時間と手間がかかります。そこで、手続を簡略化するためにできたのが、外国公文書の認証を不要とする条約(ハーグ条約)です。この条約の加盟国間では、領事認証に代えて、文書が作成された国が文書の真正を証明します。この際に公文書に付与される証明書をアポスティーユといいます。日本では、外務省が公文書にアポスティーユを付与しています。2023年の時点で条約には120を超える国と地域が加盟しています(外務省「外国公文書の認証を不要とする条約(ハーグ条約)の締約国(地域)」)。

アポスティーユは、条約に基づく仕組みのため、条約に加盟していない国との間では利用できません。そのような国で公文書を提出する場合は、領事認証を受ける必要があります。また、条約の加盟国間であっても、公文書の種類や用途によっては、アポスティーユではなく領事認証を受けなければいけない場合があります。

公印確認・アポスティーユを受けられる文書

外務省で公印確認・アポスティーユを受けるには、次の要件を満たす必要があります。

1 発行日より3か月以内で、発行日付が記載されていること

2 発行機関(発行者名)が記載されていること

3 個人印や署名ではなく、公印が押されていること

私文書の真正の確認

アポスティーユ、公印確認、領事認証といった手続は、公文書の申請を確認する手続です。私文書の場合、そのままではこれらの手続を受けることができません。そこで必要になるのが、公証人認証(ノータライゼーション、ノータリゼーション)の手続です。

私文書のうち、文書の作成者の署名または記名押印があるものを私署証書といいます。私署証書については、公証人認証を受けることで、公文書として領事認証またはアポスティーユの手続を受けることができるようになります。日本では、公証役場が私署証書に公証人認証を行っています。また、公証人認証を受けた私署証書を提出する前に、認証を行った公証人が所属する法務局公証人押印証明を受ける必要があります。

ワンストップサービス

公証役場によっては、公証人認証、公証人押印証明、公印確認、アポスティーユといった手続を一括で行うワンストップサービスを行っています(外務省「申請手続きガイド 2申請の流れ」)。北海道(札幌法務局管区内)、宮城県、東京都、神奈川県、静岡県、愛知県、大阪府、福岡県の公証役場では、公印確認またはアポスティーユまで、埼玉県、茨城県、栃木県、群馬県、千葉県、長野県、新潟県の公証役場では、公証人押印証明までの手続を一括で行えます。なお、領事認証を受ける場合、公印確認までは一括で受けられますが、領事認証は外国の大使館または領事館で別に受ける必要があります。

日本の機関への外国の文書の提出

日本は領事認証の制度を採用していません。そのため、外国で作成された文書を日本の機関へ提出する場合、外国にある日本大使館または領事館で領事認証を受ける必要はなく、領事認証を簡略化するアポスティーユを受ける必要もありません。

 まとめ

日本で作成された公文書を外国の機関に提出する場合は、外務省で公印確認を受けたうえで外国の大使館または領事館で領事認証を受ける、または外務省でアポスティーユを受ける必要があります。私文書を提出する場合は、これらの手続の前に公証役場で公証人認証、法務局で公証人押印証明を受ける必要があります。当事務所では、これらの手続をお手伝いしていますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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