アメリカ人と国際離婚するには、どのような手続きを行えばいいのでしょうか。ここでは、アメリカ人との国際離婚における、準拠法の考え方や離婚の手順について説明していきます。
アメリカ人との離婚の準拠法
アメリカおよび日本を母国とする者同士が離婚する場合、どちらの国の法律に基づいて離婚手続きを進める必要があるのでしょうか。まず、日本の法律が適用になるための条件を挙げてみます。
- 夫婦のどちらか一方が日本人かつ日本に住んでいる
- 夫婦のいずれも日本人である
- 夫婦が日本に住んでいる
- 夫婦に密接な関係がある国が日本である
条件を満たす場合は、日本国の法律が国際離婚の準拠法となります。
したがって、夫婦の片方がアメリカ人であっても、常に夫婦が日本に住んでいる場合や日本人配偶者が日本に住んでいる場合は、日本の法律を準拠法とすることができます。一方、アメリカでは調停離婚や裁判離婚による離婚決定が必要になるため、どちらの国の法律のもとに離婚できるのか、大使館などに確認しておきましょう。
日本におけるアメリカ人との離婚手続き
在日アメリカ大使館によると、以下のような記載がみられます。
- アメリカ人は日本で離婚することができます。
- あなたの離婚を大使館または米国領事館へ報告する必要はありません。
※在日アメリカ大使館ホームページより抜粋
また、日本における4つの離婚方法により離婚できることが述べられています。
- 協議離婚:夫婦双方の同意による離婚
- 調停離婚:家庭裁判所における調停による離婚
- 審判離婚:家庭裁判所の審判による離婚(調停が不調に終わったとき)
- 裁判離婚:審判でも離婚が成立しなかった場合の裁判による離婚
これら裁判所を通した手続きで離婚が成立すると、裁判所は判決書謄本と判決確定証明書を発行します。これら書類は離婚届の添付書類として使用しますので、大切に保管しましょう。協議離婚により夫婦が離婚に合意した場合は、日本国内の役所に離婚届を提出すれば婚姻関係は解消されます。
アメリカにおけるアメリカ人との離婚手続き
もし、夫婦がアメリカに在住している場合は、現地の法律に基づいて離婚のためのプロセスを進めていきましょう。
アメリカにおける離婚手続きの手順
アメリカにおける離婚手続きは、裁判所を通すため少々手続きが細かくなります。あらかじめ流れを把握し、必要書類を用意して滞りなく手続きを勧めましょう。
請願書、申請書、召喚状などの提出
請願書、申請書、召喚状などの必要書類を揃えて地元の裁判所に提出します。
相手方からの返答
召喚状を受け取った相手方は、裁判所に対し返答書を提出する必要があります。返答書の提出期限は、相手方が申請者と同じ州に居住している場合は20日以内、異なる州に居住している場合は60日以内とされています。
情報の開示
夫婦の共有財産や負債、個人名義の財産や負債などについて双方が情報開示します。
夫婦間の話し合い
裁判を行っている最中の子どもの親権や養育費などについて話し合います。また財産分与などについても話し合いが行われ、夫婦双方が合意した場合は離婚合意書を作成して裁判所に提出します。合意にいたらなかった場合は、裁判で争うことになります。
離婚成立
話し合いまたは裁判により離婚にいたり、婚姻関係が解消されます。
アメリカ側に提出する書類
アメリカにおける離婚手続きでは、以下の書類を揃えて提出しなければなりません。不足なく用意しておきましょう。
- 離婚届
- 戸籍謄本または全部事項証明
- 離婚判決謄本(裁判所の認証印があるもの)(判決謄本に親権について記載されていない場合は、親権にについて記載されている書類原本が必要になります。)
- 離婚判決謄本の抄訳文
- 判決謄本様式
- 裁判離婚の場合:民事訴訟法第118条に関する申述書
- 有効な日本のパスポート原本
- アメリカでの滞在を証する書類(グリーンカードや他の米国ビザなど)
- 現住所を証明するアメリカの運転免許証や公共料金請求書 など
まとめ
日本における協議離婚はアメリカで即有効とはみなされません。日本において離婚が有効であっても、アメリカでは婚姻関係は解消されないままです。この状態を解消するためには、アメリカで裁判手続きを行う必要があります。
アメリカ国内におけるアメリカ人との離婚手続きを行うためには、複雑な手続きを行わなければなりません。国際離婚について、まずは当事務所までご相談いただき、手順を確認し、滞りなく手続きを進めることができるよう準備しましょう。