高度専門職とはどのような在留資格でしょうか。また、外国人が高度専門職の在留資格を取得するにはどうすればよいのでしょうか。
高度専門職の在留資格とは
高度専門職とは、高度な知識や技術をもち、日本の学術研究や経済の発展に貢献する外国人に長期間の在留や複数の在留資格にまたがる活動などを認める在留資格です。
高度専門職の在留資格には1号と2号があり、高度専門職1号の在留資格をもつ外国人は、活動の制限が緩和され、高度専門職2号の在留資格をもつ外国人は、在留期間が無期限となり、活動の制限が大幅に緩和されます。また、永住者の在留資格に変更する場合に、永住許可の要件が緩和されます。
入国・在留手続において、高度専門職の在留資格をもつ外国人の手続は優先的に処理され、原則として、在留資格認定証明書交付申請では10日以内、在留資格変更許可申請や在留期間更新許可申請では5日以内を目途に手続が処理されます。
高度専門職の在留資格をもつ外国人は、2022年(令和4年)の時点で約1万8千人います。
配偶者の帯同
特定活動(高度専門職)の在留資格をもつ外国人の配偶者は、特定活動(高度専門職外国人の就労する配偶者)の在留資格を取得できます(法務省告示33号)。配偶者は、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、興行の在留資格に当たる活動を行うことができます。ただし、外国人と配偶者は同居している必要があり、完全に独立して生活することは認められません。
親の帯同
特定活動(高度専門職)の在留資格をもつ外国人または配偶者の親は、特定活動(高度専門職外国人またはその配偶者の親)の在留資格を取得できます(法務省告示34号)。親は、7歳未満の子を養育しようとする者、または妊娠中の外国人または配偶者に対して介助、家事、その他必要な支援を行おうとする者である必要があります。親は実の親に限られず、子は連れ子や養子を含みます。
親の帯同が認められるためには、外国人の世帯年収が800万円以上であること、かつ外国人または配偶者の他方の親が特定活動(高度専門職外国人またはその配偶者の親)の資格で在留していないことが必要です。外国人または配偶者の片方の親であれば両親の帯同が認められます。
外国人または配偶者の親の滞在期間が90日未満の時は、短期滞在の在留資格の対象となります。
家事使用人の帯同
家事使用人は、特定活動(家事使用人)の在留資格を取得することで帯同することができます。家事使用人には、家庭の事情で日本に在留しているまたは外国にいる外国人の家事使用人を雇用する場合(家庭事情型)と、外国で既に雇用している家事使用人と共に入国する場合(入国帯同型)があります。家庭事情型では、家事使用人は外国人と共に出入国する必要はなく、雇用主を変えることができるのに対して、入国帯同型では、家事使用人は外国人と共に出入国する必要があり、雇用主を変えることができません。
高度専門職の活動制限
高度専門職1号
高度専門職1号では、次のいずれかに当たる、日本の学術研究または経済の発展に寄与することが見込まれる活動を行うことが認められます。
1号イ 日本の公私の機関との契約に基づいて研究、研究の指導または教育をする活動(高度学術研究活動)、関連する事業を自ら経営する活動
1号ロ 日本の公私の機関との契約に基づいて自然科学または人文科学の分野に属する知識または技術を要する業務に従事する活動(高度専門・技術活動)、関連する事業を自ら経営する活動
1号ハ 日本の公私の機関において貿易その他の事業の経営を行いまたは当該事業の管理に従事する活動(高度経営・管理活動)、関連する事業を自ら経営する活動
高度専門職2号
高度専門職2号では、高度専門職1号のいずれかの活動と併せて、次の在留資格で認められる活動を行うことが認められます。
教授、芸術、宗教、報道、法律・会計業務、医療、教育、技術・人文知識・国際業務、介護、興行、技能、特定技能2号
在留期間
高度専門職の在留期間
高度専門職の在留期間は、高度専門職1号の場合は5年、高度専門職2号の場合は無期限となります。
特定活動(高度専門職外国人の就労する配偶者)の在留期間
高度専門職外国人の就労する配偶者の在留期間は、5年、3年、1年のいずれかとなります。
在留期間は、滞在予定期間、日本の公私の機関との契約期間のいずれか短い期間に合わせて指定されます。
特定活動(高度専門職外国人またはその配偶者の親)の在留期間
高度専門職外国人またはその配偶者の親の在留期間は、1年を超えない範囲内で4か月以上の期間となります。
7歳未満の子を養育しようとする者の場合は、養育する子の年齢が満7歳を迎える日または在留期間の満了日のいずれか早い日以降で満了日から1か月を超えない範囲内で月単位で指定されます。
また、妊娠中の外国人または配偶者に対して介助、家事、その他必要な支援を行おうとする者の場合は、扶養者の在留期間の満了日から1か月を超えない範囲内で月単位で指定されます。通常は扶養者と同じ在留期間が指定されます。
高度専門職2号と永住者の違い
高度専門職2号と永住者の在留資格は、いずれも在留期間が無制限に認められます。ただし、活動資格である高度専門職2号の場合は、6か月以上活動を行わないか、他の活動を行っている、または行おうとしていると在留資格取消の対象となります。これに対して、居住資格である永住者の場合は、就労していなくても在留資格取消の対象とはなりません。また、高度専門職2号の場合は、幅広く活動が認められるものの、一定の活動制限はあります。これに対して、永住者の場合は、原則として活動に制限がありません。
申請の手続
高度専門職の在留資格を取得する場合は、申請人の在留状況に応じて、在留資格認定証明書交付申請、在留資格変更許可申請、在留資格取得許可申請のいずれかの手続が必要となります。
在留資格認定証明書交付申請
在留資格認定証明書交付申請は、申請人、法定代理人、外国人を受け入れようとする機関の職員その他法務省令で定める代理人(代理人)、申請等取次者(弁護士または行政書士を含む)が、出入国在留管理局に申請書、申請内容に応じて異なる必要書類を提出して行います。法定代理人または申請等取次者が申請を行う場合は、申請人または代理人が日本に滞在している必要があります。標準処理期間は、1か月~3か月とされています。
在留資格変更許可申請
在留資格変更許可申請は、申請人、法定代理人、申請等取次者(弁護士または行政書士、親族または同居者等を含む)が、出入国在留管理局に申請書、申請内容に応じて異なる必要書類を提出して行います。申請等取次者が申請を行う場合は、申請人が日本に滞在している必要があります。標準処理期間は、2週間~1か月とされています。
在留資格取得許可申請
在留資格取得許可申請は、申請人、法定代理人、申請等取次者(弁護士または行政書士、親族または同居者等を含む)が、出入国在留管理局に申請書、申請内容に応じて異なる必要書類を提出して行います。申請等取次者が申請を行う場合は、申請人が日本に滞在している必要があります。標準処理期間は、在留資格の取得の事由が生じた日から60日以内とされています。
申請提出者
法定代理人
申請人が18歳未満の場合は、親権者または未成年後見人、申請人が成年被後見人の場合は、成年後見人が法定代理人として申請を提出できます。
代理人
高度専門職の在留資格では、高度学術研究活動、高度専門・技術活動を行おうとする場合は、申請人と契約を結んだ日本の機関の職員が、高度経営・管理活動を行おうとする場合は、申請人が経営を行いまたは管理に従事する事業の日本の事業所の職員が代理人として申請を提出できます。
申請等取次者
地方出入国在留管理局長から申請等取次者としての承認を受けた雇用機関、教育機関、監理団体、公益法人の職員は、申請人からの依頼を受けた場合に申請等取次者として申請を提出できます(在留資格認定証明書交付申請の場合は公益法人の職員のみ)。
弁護士または行政書士
地方出入国在留管理局長に届出をした弁護士または行政書士は、申請人からの依頼を受けた場合に申請を提出できます。
親族または同居者等
申請人が16歳未満の場合や申請人が疾病その他の事由により自ら出頭することができない場合、申請人の親族または同居者もしくはこれに準ずる者で地方出入国在留管理局長が適当と認める者は、申請を提出できます。適当と認める者には、医療滞在の同行者、刑事施設・児童相談所・婦人相談所の施設の職員、老人ホーム等の職員、教育機関等の職員、児童養護施設等の職員などが当たります。
申請手続の流れ
申請は次のような流れで行います。在留資格認定証明書交付申請は、一般的には国外にいる外国人に代わり日本国内にいる代理人が行います。
申請人が自ら手続を行う場合
1 申請人は、出入国在留管理局(外国人在留総合インフォメーションセンター)に在留申請の相談をします。出入国在留管理局の担当者は、申請人の在留資格や在留状況を確認したうえで、申請の要件を満たす可能性があると判断した場合は、申請に必要な書類について説明します。
2 申請人は、申請書とその他の申請に必要な書類を作成・収集します。出入国在留管理局で説明される書類は、申請に最低限必要となる書類なので、審査を有利にするためには、その他にも様々な書類を作成・収集する必要があります。このとき、書類に誤った内容を記載しないこと、すべての書類で内容に整合性があること、審査を不利にする内容を記載していないこと、収集した書類の有効期間に余裕があることなどに注意する必要があります。
3 申請人は、作成・収集した書類を出入国在留管理局に提出するか、在留申請オンラインシステムを利用して申請します。
4 出入国在留管理局は、提出された書類をもとに審査を行い、必要に応じて追加の書類の提出を求める場合があります。
5 出入国在留管理局は、申請人に審査結果の通知を行います。申請が許可された場合、申請人は出入国在留管理局で在留資格認定証明書または在留カードを受け取ることができます。また、特別高度人材制度の申請が認められた場合、申請人は特別高度人材証明書を受け取ることができます。在留申請オンラインシステムを利用して申請した場合は、申請人は電子メールで在留資格認定証明書を受け取る、または郵送で在留カードを受け取ることができます(出入国在留管理庁「在留資格認定証明書の電子化について」)。日本にいる代理人が申請人の代わりに在留資格認定証明書の交付を受けた場合は、申請人に証明書を送付または電子メールを転送します。
6 申請が不許可となった場合、申請人は出入国在留管理局で不許可となった理由の説明を日本語で1回のみ受けられます。不許可となった理由は、再び申請をするときに改める必要があるため、申請に用いた書類の控えを残しておき、どのような理由で不許可となったのか調査できるようにしておく必要があります。不許可の理由の説明は、不許可の判断に対する不服申立の手続ではないため、申請人が不服を主張しても不許可の判断が覆ることはありません。
専門家に手続を依頼する場合
1 申請人は、専門家に在留申請の相談をします。専門家は、申請人の在留資格や在留状況を確認したうえで、申請の要件を満たす可能性があると判断した場合は、申請人の依頼を受けます。専門家によっては、在留申請の知識が不十分な場合もあるため、相談・依頼をするときは外国人の在留手続に詳しい専門家を利用することが重要です。
2 専門家は、必要な書類を作成・収集します。必要な書類については専門家の判断で作成・収集します。
3 専門家は、作成・収集した書類を出入国在留管理局に提出するか、在留申請オンラインシステムを利用して申請します。
4 出入国在留管理局は、提出された書類をもとに審査を行い、必要に応じて追加の書類の提出を求める場合があります。追加の書類の提出は、専門家が取り次いで行います。
5 出入国在留管理局は、専門家に審査結果の通知を行います。申請が許可された場合、専門家は出入国在留管理局で在留資格認定証明書または在留カードを受け取ることができます。また、特別高度人材制度の申請が認められた場合、専門家は特別高度人材証明書を受け取ることができます。在留申請オンラインシステムを利用して申請した場合は、専門家は電子メールで在留資格認定証明書を受け取る、または郵送で在留カードを受け取ることができます(出入国在留管理庁「在留資格認定証明書の電子化について」)。専門家は、申請人に証明書や在留カードを送付または電子メールを転送します。
6 申請が不許可となった場合、専門家は出入国在留管理局で不許可となった理由の説明を受け、申請人に伝えます。再び申請をするときは、申請人は専門家に不許可となった理由を調査して対策をとってもらうことで、許可される可能性が高くなります。
高度人材ポイント制度
高度人材ポイント制度とは、学歴、職歴、年収、年齢、その他の項目でポイントを計算し、70ポイント以上であること、高度専門職1号ロ、ハの場合は見込み年収が300万円以上であることを高度専門職の在留資格の取得要件とする仕組みです。高度人材ポイント制度は、高度専門職1号イ~ハに対応して、高度学術研究分野、高度専門・技術分野、高度経営・管理分野の3つの区分に分かれており、それぞれポイントの配分が異なります。高度人材ポイント制度は、2012年5月の開始以来、数回の改正があり、ポイントの配分の見直しが行われています(出入国在留管理庁「ポイント評価の仕組みは?」)。※見込み年収には、基本給や固定残業代の他、支給額の確定している賞与(ボーナス)を含めることができますが、通勤手当や住宅手当、支給額が確定しておらず、業績に応じて支給される残業代や賞与を含めることはできません。
特別高度人材制度
特別高度人材制度(JーSkip)とは、一定の条件を満たす外国人が高度専門職の在留資格を取得でき、さらに拡充された優遇措置を受けられる仕組みです。特別高度人材制度の優遇措置を受ける場合は、高度専門職の在留申請のときに必要書類を提出して申請します。特別高度人材として認められると、特別高度人材証明書が交付され、在留カードには特別高度人材の記載がされます。
特別高度人材の要件
高度専門職1号イ、ロの場合は、修士号以上を取得し、かつ年収が2000万円以上である者、または従事しようとする業務に係る実務経験が10年以上あり、かつ年収が2000万円以上である者
高度専門職1号ハの場合は、事業の経営または管理に係る実務経験が5年以上あり、かつ年収が4000万円以上である者
なお、年収は外国における年収ではなく、日本で従事しようとする業務の見込み年収を指します。
特別高度人材制度の優遇措置
世帯年収が3000万円以上ある場合、外国人の家事使用人を2人まで雇用でき、家庭事情型の要件を満たす必要もありません。
配偶者は、経歴等の要件を満たさなくても、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、興行に加えて、教授、芸術、宗教、報道、技能の在留資格に当たる活動を行うことができます。
出入国時に大規模空港等に設置されているプライオリティーレーンを使用できます。
在留資格認定証明書交付申請
上陸許可基準
高度専門職の在留資格認定証明書を取得して上陸する場合、次の要件を満たす必要があります。
1 高度人材ポイント制度の要件を満たすこと
2 次のいずれかに当たること
⑴ 日本において行おうとする活動が次のいずれかの在留資格に当たること
教授、芸術、宗教、報道
⑵ 日本において行おうとする活動が次のいずれかの在留資格に当たり、上陸許可基準を満たすこと
経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、介護、興行、技能
3 日本において行おうとする活動が日本の産業および国民生活に与える影響等の観点から相当でないと認める場合でないこと
在留資格変更許可申請
高度専門職1号から2号への変更
高度専門職1号から2号に変更する場合、次の要件を満たす必要があります。
1 行おうとする活動が高度専門職2号の活動に当たること
2 高度人材ポイントが70ポイント以上であること
3 高度専門職1号の在留資格で3年以上(特別高度人材の場合は1年以上)活動を行っていたこと
4 素行が善良であること
5 在留が日本の国益に合すると認められること
6 行おうとする活動が日本の産業および国民生活に与える影響等の観点から相当でないと認める場合でないこと
申請に必要となる書類
申請には、手続きに応じて、在留資格認定証明書交付申請書、在留資格変更許可申請書、在留資格取得許可申請書が必要となります。その他にも申請内容に応じて異なる書類が必要となります。
結核スクリーニング
在留資格認定証明書交付申請をする場合、フィリピン、ベトナム、中国、インドネシア、ネパール、ミャンマー国籍の外国人は、日本政府が指定した医療機関が発行する結核非発病証明書を提出する必要があります(厚生労働省「入国前結核スクリーニングの実施について」)。
まとめ
外国人が高度専門職の在留資格を取得するには、一定の要件を満たしたうえで、在留資格認定証明書交付申請、在留資格変更許可申請、在留資格取得許可申請のいずれかを行う必要があります。在留申請で提出する書類の作成・収集には、専門的な知識が必要となりますし、申請手続やその準備には多くの時間がかかります。また、不許可となった場合は、その理由を適切に調査できないと、何度申請しても許可されないおそれがあります。そのため、在留申請を行うときは、専門家の支援を受けることが大切です。当事務所では、外国人の在留申請を代行するお手伝いをしていますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。