技術・人文知識・国際業務とはどのような在留資格でしょうか。また、外国人が技術・人文知識・国際業務の在留資格を取得するにはどうすればよいのでしょうか。

技術・人文知識・国際業務とは

技術・人文知識・国際業務とは、日本の公私の機関との契約に基づいて自然科学や人文科学の技術や知識を要する業務(技術・人文知識)、または外国の文化に関わる業務(国際業務)に従事する活動を行うことを認める在留資格です。

自然科学には、理学、工学、農学、医学、歯学、薬学などの学問分野が、人文科学には、法律学、経済学、社会学、文学、哲学、教育学、心理学、史学、政治学、商学、経営学などの学問分野が当たります。

国際業務には、外国の文化についての一定水準以上の専門的能力が必要とされる業務が当たります。

国際業務のうち、教授、芸術、報道、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、企業内転勤、介護、興行の在留資格で認められる活動は、技術・人文知識・国際業務の在留資格の対象となりません

技術・人文知識・国際業務に関する技術や知識が必要とされない業務に従事する場合や、専門分野とは関連のない業務に従事する場合、業務全体に占める技術や知識が必要とされる業務の割合が小さい場合は、技術・人文知識・国際業務の在留資格の対象となりません

業務に必要となる研修を行うことはできるが、在留期間全体に占める研修期間の割合が大きい場合は、合理的な理由が認められない限り、技術・人文知識・国際業務の在留資格の対象となりません

契約には、継続的な雇用契約、委任契約、請負契約などが当たります。

技術・人文知識・国際業務の在留資格をもつ外国人は、2022年(令和4年)の時点で約31万2千人います。国籍別では、中国が約8万3千人、ベトナムが約7万8千人、ネパールが約2万6千人などとなっています。

カテゴリー

技術・人文知識・国際業務の在留資格には、カテゴリー1~4の区別があり、カテゴリー1~3に当たる場合は、在留申請で必要となる書類が簡略化されます。

1 外国人が所属する機関が次のものに該当する場合はカテゴリー1に当たります。

⑴ 日本の証券取引所に上場している企業

⑵ 保険業を営む相互会社

⑶ 日本または外国の国・地方公共団体

⑷ 独立行政法人

⑸ 特殊法人・認可法人

⑹ 日本の国・地方公共団体認可の公益法人

⑺ 法人税法別表第1に掲げる公共法人

⑻ イノベーション創出企業として認定を受けている、または補助金の交付やその他の支援措置を受けている企業

⑼ 一定の条件を満たす企業等(出入国在留管理庁「一定の条件を満たす企業等について」)

2 外国人が所属する機関が次のものに該当する場合はカテゴリー2に当たります。

⑴ 前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表中、給与所得の源泉徴収合計表の源泉徴収税額が1000万円以上ある団体・個人

⑵ 在留申請オンラインシステムの利用申出の承認を受けている機関(カテゴリー1、4の機関を除く)

3 外国人が所属する機関が次のものに該当する場合はカテゴリー3に当たります。

⑴ 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表が提出された団体・個人(カテゴリー2を除く)

4 外国人が所属する機関が次のものに該当する場合はカテゴリー4に当たります。

⑴ カテゴリー1~3のいずれにも該当しない団体・個人

技術・人文知識・国際業務の在留期間

技術・人文知識・国際業務の在留期間は、5年、3年、1年、3か月のいずれかとなります。

技術・人文知識・国際業務と高度専門職の違い

高度専門職の在留資格は、技術・人文知識・国際業務で認められる活動を行うことができます。高度専門職の在留資格では、長期間の在留複数の在留資格にまたがる活動を行うことが認められますが、在留資格の取得には、技術・人文知識・国際業務よりも厳しい条件を満たす必要があります。

技術・人文知識・国際業務と特定活動(本邦大学卒業者)の違い

特定活動(本邦大学卒業者)の在留資格は、一定の日本語能力を有する大学、大学院などの卒業者について、日本語を用いた円滑な意思疎通を必要とする業務に従事することを認めます。特定活動(本邦大学卒業者)の在留資格では、技術・人文知識・国際業務の在留資格ほどには専門分野と業務内容との関連性は求められず、大学、大学院などで修得した広い知識・応用能力等を活用する、または活用が見込まれる業務に従事することができます。

申請の手続

技術・人文知識・国際業務の在留資格を取得する場合は、申請人の在留状況に応じて、在留資格認定証明書交付申請、在留資格変更許可申請、在留資格取得許可申請のいずれかの手続が必要となります。

在留資格認定証明書交付申請

在留資格認定証明書交付申請は、申請人、法定代理人、外国人を受け入れようとする機関の職員その他法務省令で定める代理人(代理人)、申請等取次者(弁護士または行政書士を含む)が、出入国在留管理局に申請書、申請内容に応じて異なる必要書類を提出して行います。法定代理人または申請等取次者が申請を行う場合は、申請人または代理人が日本に滞在している必要があります。標準処理期間は、1か月~3か月とされています。

在留資格変更許可申請

在留資格変更許可申請は、申請人、法定代理人、申請等取次者(弁護士または行政書士、親族または同居者等を含む)が、出入国在留管理局に申請書、申請内容に応じて異なる必要書類を提出して行います。申請等取次者が申請を行う場合は、申請人が日本に滞在している必要があります。標準処理期間は、2週間~1か月とされています。

在留資格取得許可申請

在留資格取得許可申請は、申請人、法定代理人、申請等取次者(弁護士または行政書士、親族または同居者等を含む)が、出入国在留管理局に申請書、申請内容に応じて異なる必要書類を提出して行います。申請等取次者が申請を行う場合は、申請人が日本に滞在している必要があります。標準処理期間は、在留資格の取得の事由が生じた日から60日以内とされています。

申請提出者

法定代理人

申請人が18歳未満の場合は、親権者または未成年後見人、申請人が成年被後見人の場合は、成年後見人が法定代理人として申請を提出できます。

代理人

技術・人文知識・国際業務の在留資格では、申請人と契約を結んだ日本の機関の職員が代理人として申請を提出できます。

申請等取次者

地方出入国在留管理局長から申請等取次者としての承認を受けた雇用機関、教育機関、監理団体、公益法人の職員は、申請人からの依頼を受けた場合に申請等取次者として申請を提出できます(在留資格認定証明書交付申請の場合は公益法人の職員のみ)。

弁護士または行政書士

地方出入国在留管理局長に届出をした弁護士または行政書士は、申請人からの依頼を受けた場合に申請を提出できます。

親族または同居者等

申請人が16歳未満の場合や申請人が疾病その他の事由により自ら出頭することができない場合、申請人の親族または同居者もしくはこれに準ずる者で地方出入国在留管理局長が適当と認める者は、申請を提出できます。適当と認める者には、医療滞在の同行者、刑事施設・児童相談所・婦人相談所の施設の職員、老人ホーム等の職員、教育機関等の職員、児童養護施設等の職員などが当たります。

申請手続の流れ

申請は次のような流れで行います。在留資格認定証明書交付申請は、一般的には国外にいる外国人に代わり日本国内にいる代理人が行います。

申請人が自ら手続を行う場合

1 申請人は、出入国在留管理局(外国人在留総合インフォメーションセンター)に在留申請の相談をします。出入国在留管理局の担当者は、申請人の在留資格や在留状況を確認したうえで、申請の要件を満たす可能性があると判断した場合は、申請に必要な書類について説明します。

2 申請人は、申請書とその他の申請に必要な書類を作成・収集します。出入国在留管理局で説明される書類は、申請に最低限必要となる書類なので、審査を有利にするためには、その他にも様々な書類を作成・収集する必要があります。このとき、書類に誤った内容を記載しないこと、すべての書類で内容に整合性があること、審査を不利にする内容を記載していないこと、収集した書類の有効期間に余裕があることなどに注意する必要があります。

3 申請人は、作成・収集した書類を出入国在留管理局に提出するか、在留申請オンラインシステムを利用して申請します。

4 出入国在留管理局は、提出された書類をもとに審査を行い、必要に応じて追加の書類の提出を求める場合があります。

5 出入国在留管理局は、申請人に審査結果の通知を行います。申請が許可された場合、申請人は出入国在留管理局で在留資格認定証明書または在留カードを受け取ることができます。在留申請オンラインシステムを利用して申請した場合は、申請人は電子メールで在留資格認定証明書を受け取る、または郵送で在留カードを受け取ることができます(出入国在留管理庁「在留資格認定証明書の電子化について」)。日本にいる代理人が申請人の代わりに在留資格認定証明書の交付を受けた場合は、申請人に証明書を送付または電子メールを転送します。

6 申請が不許可となった場合、申請人は出入国在留管理局で不許可となった理由の説明日本語で1回のみ受けられます。不許可となった理由は、再び申請をするときに改める必要があるため、申請に用いた書類の控えを残しておき、どのような理由で不許可となったのか調査できるようにしておく必要があります。不許可の理由の説明は、不許可の判断に対する不服申立の手続ではないため、申請人が不服を主張しても不許可の判断が覆ることはありません。

専門家に手続を依頼する場合

1 申請人は、専門家に在留申請の相談をします。専門家は、申請人の在留資格や在留状況を確認したうえで、申請の要件を満たす可能性があると判断した場合は、申請人の依頼を受けます。専門家によっては、在留申請の知識が不十分な場合もあるため、相談・依頼をするときは外国人の在留手続に詳しい専門家を利用することが重要です。

2 専門家は、必要な書類を作成・収集します。必要な書類については専門家の判断で作成・収集します。

3 専門家は、作成・収集した書類を出入国在留管理局に提出するか、在留申請オンラインシステムを利用して申請します。

4 出入国在留管理局は、提出された書類をもとに審査を行い、必要に応じて追加の書類の提出を求める場合があります。追加の書類の提出は、専門家が取り次いで行います。

5 出入国在留管理局は、専門家に審査結果の通知を行います。申請が許可された場合、専門家は出入国在留管理局で在留資格認定証明書または在留カードを受け取ることができます。在留申請オンラインシステムを利用して申請した場合は、専門家は電子メールで在留資格認定証明書を受け取る、または郵送で在留カードを受け取ることができます(出入国在留管理庁「在留資格認定証明書の電子化について」)。専門家は、申請人に証明書や在留カードを送付または電子メールを転送します。

6 申請が不許可となった場合、専門家は出入国在留管理局で不許可となった理由の説明を受け、申請人に伝えます。再び申請をするときは、申請人は専門家に不許可となった理由を調査して対策をとってもらうことで、許可される可能性が高くなります。

在留資格認定証明書交付申請

上陸許可基準

技術・人文知識・国際業務の在留資格認定証明書を取得して上陸する場合、次の要件を満たす必要があります。上陸許可基準の判断の参考として出入国在留管理庁「『技術・人文知識・国際業務』の在留資格の明確化等について(令和6年2月改訂)」が公表されています。

1 技術・人文知識の業務に従事しようとする場合は、次のいずれかに当たること

⑴ 従事しようとする業務に必要な技術または知識に関連する科目を専攻して卒業していること

⑵ 10年以上実務経験を有すること

業務は、大学・専修学校において専攻した科目に関連している必要があります。専攻した科目と業務との関連性は、大学を卒業した場合は柔軟に判断され、高等専門学校を卒業した場合も大学に準じて判断されます。また、専修学校を卒業した場合は相当程度の関連性が必要とされますが、文部科学大臣による専修学校の専門課程における外国人留学生キャリア形成促進プログラムの認定を受けた専修学校の専門課程の学科を修了した者(認定専修学校専門課程修了者)の場合は柔軟に判断されます。

認定専修学校専門課程修了者は、専修学校の専門課程の学科を修了していることのほか、専門士または高度専門士と称することができる必要があります。

10年以上の実務経験には、大学等において、関連する科目を専攻した期間を含みます。また、技術・人文知識・国際業務に当たる業務だけでなく、関連する業務に従事した期間も含みます。

ただし、情報処理に関する技術または知識を要する業務に従事しようとする場合で、法務省告示(IT告示)(令和2年7月改正)の情報処理技術に関する試験に合格または資格を有しているときは、1の要件を満たす必要はありません。

2 国際業務に従事しようとする場合は、次のいずれにも当たること

⑴ 翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝または海外取引業務、服飾・室内装飾に係るデザイン、商品開発その他これらに類似する業務に従事すること

⑵ 関連する業務について3年以上実務経験を有すること

ただし、大学を卒業した者が翻訳、通訳、語学の指導に係る業務に従事する場合は、⑵の要件を満たす必要はありません。

3 日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること

外国弁護士が国際仲裁事件の手続等および国際調停事件の手続についての代理に係る業務に従事しようとする場合は、1~3の要件を満たす必要はありません。

申請に必要となる書類

申請には、手続きに応じて、在留資格認定証明書交付申請書、在留資格変更許可申請書、在留資格取得許可申請書が必要となります。その他にも申請内容に応じて異なる書類が必要となります。申請人が所属する機関がカテゴリー1~3に当たる場合は、必要となる書類が簡略化されます。

結核スクリーニング

3か月を超える滞在予定期間で在留資格認定証明書交付申請をする場合、フィリピン、ベトナム、中国、インドネシア、ネパール、ミャンマー国籍の外国人は、日本政府が指定した医療機関が発行する結核非発病証明書を提出する必要があります(厚生労働省「入国前結核スクリーニングの実施について」)。

まとめ

外国人が技術・人文知識・国際業務の在留資格を取得するには、一定の要件を満たしたうえで、在留資格認定証明書交付申請、在留資格変更許可申請、在留資格取得許可申請のいずれかを行う必要があります。在留申請で提出する書類の作成・収集には、専門的な知識が必要となりますし、申請手続やその準備には多くの時間がかかります。また、不許可となった場合は、その理由を適切に調査できないと、何度申請しても許可されないおそれがあります。そのため、在留申請を行うときは、専門家の支援を受けることが大切です。当事務所では、外国人の在留申請を代行するお手伝いをしていますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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