外国人を単純労働で雇用するにはどうすればよいのでしょうか。単純労働が認められる在留資格について解説します。

単純労働とは

単純労働とは、専門的な知識、技術、経験を必要とせず、誰でも特別の訓練を受けることなく、短時間の訓練のみで覚えることができる労働です。ただし、単純労働とそれ以外の複雑労働の区別は明確なものではなく、一定の技能が必要とされるものの単純労働に分類されるものも多くあります。単純労働には、次のようなものがあります。

1 飲食店や小売店の店員(接客、販売、調理など)

2 建設作業員

3 工場作業員

4 ドライバー

5 清掃作業員

6 警備員

7 理容師、美容師

8 マッサージ師

これら以外にも一般的にアルバイトとして行われるものが単純労働に当たります。

外国人を単純労働で雇用できるか

就労可能な活動資格で在留する外国人を雇用して、単純労働に当たる業務を行わせることは原則として認められません。これは、外国人に単純労働を認めた場合、日本人の仕事が奪われるおそれがあることが理由とされます。外国人が認められていない単純労働を行うと不法就労として刑事処罰および退去強制の対象となります。また、外国人を単純労働で雇用した雇用主も不法就労助長として刑事処罰の対象となります。

単純労働が問題となる事例

単純労働ではない業務を行わせる目的で、就労可能な活動資格で在留する外国人を雇用する場合でも、次のような場合には単純労働が問題となる可能性があります。

従業員の現場研修などで業務を行わせる場合

技術・人文知識・国際業務などの在留資格で認められた業務を行わせる目的で雇用した従業員に対して、現場研修として単純労働に当たる業務を行わせることは認められない可能性があります。現場研修が本来の業務に当たる前に現場の仕事を学ぶ目的で行われるとしても、単に研修として行わせているという程度の説明しかできない場合は認められない可能性が高くなります。

従業員に現場研修を行わせる場合は、①本来の業務を行うにあたり現場研修を受けることが必要かつ合理的といえること、②同種の業務に当たる日本人が受ける現場研修と同様のものであること、③従業員の入社直後の研修の一環として行われることが必要となります。

キャリアパスの一部として現場の業務を行わせる場合

技術・人文知識・国際業務などの在留資格で認められた業務を行わせる目的で雇用した従業員に対して、将来的に昇進させて、本来の業務を任せることを前提として、現場での単純労働に当たる業務を行わせることは認められない可能性があります。昇進が外国人本人の能力次第とされるなど将来の昇進が未確定の場合や、将来の昇進は確定しているが現場での業務に数年間従事する、または従事する期間が未確定の場合は認められない可能性が高くなります。

従業員にキャリアパスの一部として現場での業務を行わせる場合は、①業務に従事する期間を短期間に限定すること、②一定期間が経過した後、確実に昇進させて本来の業務を任せるような仕組みを設けることが必要となります。

単純労働が認められる在留資格

外国人が単純労働を行うことは原則として認められませんが、次のような場合は単純労働を行うことが認められます。

居住資格の在留資格をもつ場合

永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者といった居住資格の在留資格をもつ外国人は、原則として活動に制限がありません。そのため、これらの外国人を雇用する場合は、単純労働に従事させることが認められます。従来から、定住者に占める割合の大きい日系人の雇用が行われ、単純労働の制限の抜け穴として用いられていることが指摘されています。

特定技能の在留資格をもつ場合

特定技能は、労働力が不足している分野における人材確保を目的とした在留資格です。特定技能の在留資格をもつ外国人を雇用する場合は、単純労働を含む業務に従事させることが認められます。ただし、特定技能では一定の高度な技術・知識が必要とされるため、単純労働のみを目的として雇用できるわけではありません。

資格外活動許可の包括許可を受けた場合

資格外活動許可の包括許可を受けた外国人を雇用する場合は、1週間あたり28時間まで単純労働を含む業務に従事させることが認められます。これにより、留学や家族滞在で在留している外国人をアルバイトとして雇用して単純労働に従事させることができます。なお、個別許可を受けた外国人については、単純労働を行うことが認められません。

技能実習の在留資格について

技能実習は、日本で技能、技術、知識を修得して本国に移転することを目的とした在留資格です。技能実習生を実習の範囲を外れて単純労働に従事させることは認められません。しかし、技能実習が単純労働の制限の抜け穴として用いられていることが問題となっていました。今後は、技能実習制度の廃止や新たな制度への移行が検討されています。

外国人の単純労働をめぐる状況

近年、日本の人口減少や少子高齢化の影響により生産年齢人口が減少していることから、労働力の不足が問題となっています。業界、業種によっては、日本人の労働者だけでは必要な人材を十分に確保できず、人手不足からサービスの提供などに影響が出ています。その一方で日本で働くことを希望する外国人は増加しており、外国人労働者の数も増加傾向にあります(厚生労働省「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ(令和4年10月)」)。しかし、外国人が単純労働を目的に入国することについては、制限の緩和は進んでおらず、2019年に部分的に単純労働を認める特定技能の在留資格が設けられるに留まっています。

まとめ

原則として外国人を単純労働で雇用することは認められません。外国人が違法な単純労働を行うと不法就労として刑事処罰および退去強制の対象となり、雇用主は不法就労助長として刑事処罰の対象となります。ただし、外国人が永住者などの居住資格の在留資格をもつ場合、特定技能の在留資格をもつ場合、資格外活動許可の個別許可を受けた場合は、単純労働で雇用することが認められます。当事務所では、外国人を雇用しようと考えている事業者をお手伝いしていますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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