特定技能の在留資格で入国、在留する外国人を支援するための登録支援機関になるにはどうすればよいでしょうか。登録支援機関の要件について解説します。

特定技能とは

特定技能とは、日本において人材確保が困難となっている特定の産業分野において、日本の公私の機関との雇用契約に基づいて知識や技能を有する外国人が業務に従事することを認める在留資格です。

特定技能の在留資格は、介護、ビルクリーニング、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、自動車運送業、鉄道、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、林業、木材産業の16種類の産業分野(特定産業分野)で認められています。

特定技能の在留資格で就労する外国人は、就労先の受入機関(特定技能所属機関)と雇用契約を結んだ上で、日本に入国、在留します。特定技能所属機関は、外国人の入国から出国に至るまでの、在留申請、就労、生活に必要な支援を行います。ただし、特定技能所属機関が外国人に対する支援のすべてを実施する必要があるわけではなく、支援の一部またはすべてを外部の支援機関に委託することができます。

登録支援機関とは

登録支援機関は、出入国在留管理庁の登録を受けて外国人に対して支援を実施することを認められた機関です。登録支援機関は、特定技能所属機関と委託契約を結び、外国人に対する在留申請、就労、生活に必要な支援の一部またはすべてを代わりに行います。

登録支援機関は、4半期に1回、支援の実施状況を出入国在留管理庁に届出する必要があります(出入国在留管理庁「登録支援機関による支援実施状況に係る届出」)。

登録支援機関は、登録申請時に外国人からの相談に対応できる言語を指定します。対応可能言語以外の言語の場合は、支援を実施できないため、特定技能所属機関が委託契約を結ぶ際は、受け入れようとしている外国人の理解できる言語が、登録支援機関の対応可能言語に含まれることを確認する必要があります。

登録支援機関が実施する支援

登録支援機関は、特定技能所属機関が作成する1号特定技能外国人支援計画書の内容に従って、次のような支援を実施します(出入国在留管理庁「在留資格『特定技能』に関する参考様式(新様式)」)。

1 事前ガイダンスの提供

2 入国する際の送迎

3 住居の確保の支援

4 生活に必要な契約の支援

5 生活オリエンテーションの実施

6 日本語学習の機会の提供

7 相談または苦情への対応

8 日本人との交流促進に係る支援

9 非自発的離職時の転職支援

10 定期的な面談の実施・行政機関への通報

外国人の紹介・派遣事業

外国人は、特定技能所属機関と雇用契約関係にあり、登録支援機関とは直接の雇用関係はありません。そのため、登録支援機関が労働者派遣事業の許可を受けて外国人を特定技能所属機関に派遣することは認められません。ただし、登録支援機関が職業紹介事業の許可を受けて外国人を特定技能所属機関に紹介することは認められます。登録支援機関が特定技能所属機関から委託された外国人の支援を実施するだけであれば、職業紹介事業の許可は必要ありませんが、本国にいる外国人を仲介して特定技能所属機関に対して紹介する場合は、職業紹介事業の許可が必要です。

登録支援機関の登録手続

登録支援機関の登録申請

登録支援機関として、外国人に対する支援を行うためには、登録支援機関の登録申請をする必要があります(出入国在留管理庁「登録支援機関の登録申請」)。登録支援機関の登録申請は、特定技能所属機関と委託契約を結ぶ前に行う必要があります。登録を受けるには、特定技能所属機関との委託契約に基づいて1号特定技能外国人支援計画の全部を実施できる必要があり、一部しか実施できない者は登録を受けられません

登録支援機関は、複数の特定技能所属機関と委託契約を結ぶことができます。ただし、すべての委託契約に基づく支援を確実に履行できる必要があります。登録支援機関は、委託を受けた業務を他の機関に再委託することは認められません。ただし、業務を行うにあたり履行補助者を使うことは認められます

登録申請は、登録支援機関登録申請書とその他の申請に必要な書類を出入国在留管理局に提出して行います。初回の登録申請は、支援業務の開始予定日から2か月前までに行う必要があります。

登録支援機関の登録更新申請

登録の有効期間は5年となり、支援を継続する場合は登録支援機関の登録更新申請をする必要があります(出入国在留管理庁「登録支援機関の登録更新申請」)。登録更新申請は、登録支援機関登録の更新申請書その他の必要な書類を出入国在留管理局に提出して行います。登録更新申請は、有効期間満了日の6か月前の初日から4か月前の月末までに行う必要があります。

登録支援機関の要件

受入れ・管理の実績または相談業務の経験がある

登録支援機関には、外国人に対する一定の受入れ・管理の実績または相談業務の経験があることが必要です。実績または経験があるというには、次のいずれかの要件を満たす必要があります。


1 過去2年間に、原則として就労可能な活動資格で在留する中長期在留者の受入れまたは管理を適正に行った実績があること

実績には、登録支援機関として支援業務を行った実績も当たります。

受入れまたは管理には、外国人が自ら法人を設立した場合または個人事業主の場合で他の外国人を雇用していない場合は当たりません

受入れまたは管理を適正に行ったというには、受入れまたは管理に関連する法令の規定を遵守していることが必要です。登録支援機関になろうとする者が、技能実習制度の監理団体である場合は、改善命令や改善指導を受けていないことが必要です。


2 過去2年間に、報酬を得る目的で業として日本に在留する外国人に関する各種の相談業務に従事した経験があること

相談業務には、外国人に対する法律、労働、社会保険、申請書類の作成や手続に関する相談が当たります。士業者やその法人等が業として行った相談業務も当たります。


3 選任された支援責任者および支援担当者が、過去5年間に2年以上、原則として就労可能な活動資格で在留する中長期在留者の生活相談業務に従事した一定の経験があること

生活相談業務には、1号特定技能外国人支援計画書の支援のうち、生活に必要な契約の支援、生活オリエンテーション、定期的な面談に関するものが当たります。

職業紹介事業者が求人情報を紹介する行為は当たりません。また、個人的な人間関係に基づいて行う相談ボランティア活動として行う相談は当たりません


4 1~3と同程度に支援業務を適正に実施することができること

在留する外国人に対する雇用管理・生活相談の実績、支援を適正に実施できるといえる事業の実績および公益性、支援業務の経験および保有する資格などの事情、支援を実施する方法や見込みについて具体的に説明することが求められます。

支援責任者または支援担当者が選任されている

役員または職員の中から、支援責任者または支援業務を行う事務所ごとに1名以上の支援担当者選任されていることが必要です。

支援責任者および支援担当者は登録支援機関の役員または職員であることが必要です。支援担当者は常勤の職員であることが望ましいとされます。なお、支援責任者が支援担当者を兼ねることもできますが、双方の基準を満たす必要があります。

情報提供および相談対応体制が整備されている

登録支援機関には、情報提供および相談対応できる体制が整備されている必要があります。体制が整備されているというには、次の要件を満たす必要があります。


1 1号特定技能外国人支援計画に基づいて情報提供すべき事項について、外国人が十分に理解できる言語により適切に情報提供できる体制があること

十分に理解できる言語には、外国人の母国語のほか、内容を十分に理解できる言語が当たります。


2 特定技能外国人からの相談に係る対応について、担当の職員を確保し、外国人が十分に理解できる言語により適切に対応できる体制があること

担当の職員には、登録支援機関に在籍している職員のほか、通訳を委託した相談業務の履行補助者としての通訳人が当たります。


3 支援責任者または支援担当者が、外国人およびその監督をする立場にある者と定期的な面談を実施できる体制があること

定期的というには、原則として3か月に1回以上面談を実施できることが必要です。

外国人の行方不明者を発生させていない

過去1年間に、機関の責めに帰すべき事由により外国人の行方不明者を発生させていないことが必要です。

登録支援機関として特定技能外国人の行方不明者を発生させていないこと、および技能実習制度の監理団体または実習実施者として技能実習生の行方不明者を発生させていないことが必要です。

実施状況に係る文書が作成・備置されている

支援業務の実施状況に係る文書作成し、支援業務を行う事務所に、特定技能雇用契約の終了の日から1年以上備えて置くことが必要です。

支援に要する費用を外国人に負担させていない

1号特定技能外国人支援に要する費用について、直接または間接に外国人に負担させていないことが必要です。

支援業務に要する費用の額および内訳を示している

委託契約を締結するに当たり、特定技能所属機関に対し、支援業務に要する費用の額およびその内訳を示す必要があります。

登録申請の拒否事由

登録支援機関の拒否事由

次のいずれかに当たる者は、登録支援機関になることができません。

1 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない

2 出入国または労働に関する法令に違反して罰金刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない

3 暴力団に関する法令または刑法等に違反して罰金刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない

4 社会保険または労働保険に関する法令に違反して罰金刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない

5 心身の故障により支援業務を適正に行うことができない者

6 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない

7 登録を取り消され、取消の日から起算して5年を経過しない

登録支援機関が、登録支援機関の要件を満たさなくなった場合、支援実施状況に係る届出を行わなかった場合、委託を受けた支援業務を行わなかった場合、不正の手段により登録を受けた場合、虚偽の報告等を行った場合は、登録の取消の対象となります。

8 法人が登録を取り消された場合、取消処分を受ける原因となった事項が発生した当時現に法人の役員であった者で、取消の日から起算して5年を経過しない

法人の役員には、形式上の役員だけでなく、業務を執行する社員、取締役またはこれらに準ずる者と同等以上の支配力を有するものと認められる者が当たります。

9 出入国または労働に関する法令に関して不正または著しく不当な行為をして5年を経過しない

10 暴力団員または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない

11 法定代理人が1~10または12のいずれかに当たる未成年者(営業に関し成年者と同一の行為能力を有する者は除く)

12 役員のうちに1~11のいずれかに当たる者がいる法人

13 暴力団員等がその事業活動を支配する者

支援責任者の拒否事由

次のいずれかに当たる者は、支援責任者になることができません。

1 登録支援機関の拒否事由の1~11のいずれかに当たる者

2 特定技能所属機関の役員の配偶者、2親等内の親族その他特定技能所属機関の役員と社会生活において密接な関係を有する者であるにもかかわらず、特定技能所属機関から委託を受けた支援業務に係る支援責任者となろうとする者

3 過去5年間特定技能所属機関の役員または職員であった者であるにもかかわらず、当該特定技能所属機関から委託を受けた支援業務に係る支援責任者となろうとする者

支援担当者の拒否事由

登録支援機関の拒否事由の1~11のいずれかに当たる者は、支援担当者になることができません。

まとめ

登録支援機関になるには、一定の要件を満たした上で登録支援機関の登録申請を行う必要があります。また、登録支援機関は、4半期ごとに支援実施状況に係る届出を行い、5年ごとに登録更新申請を行う必要があります。これらの申請や届出で提出する書類の作成・収集には、専門的な知識が必要となりますし、手続やその準備には多くの時間がかかります。そのため、登録支援機関として支援業務を行う場合は、専門家の支援を受けることが大切です。当事務所では、登録支援機関の申請や届出を代行するお手伝いをしていますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

カレンダー
電話