外国人留学生を正社員として雇用する場合、どのようなことに注意する必要があるのでしょうか。

外国人留学生の在留状況

日本に在留している外国人のうち留学の在留資格をもつ外国人(外国人留学生)は、2022年(令和4年)の時点で約30万1千人います。新型コロナウイルスに対応する入国制限措置の影響もあり2020年以降、外国人留学生の数は減少しているものの、2010年代半ば以降、大きく増加傾向にありました。日本に在留している外国人全体の中でも外国人留学生の割合は大きくなっており、技能実習や技術・人文知識・国際業務と同程度の割合を占めています。外国人留学生の採用は増加傾向にあり、国内の人材不足を補う目的、海外から優秀な人材を確保する目的、グローバル化に対応する目的などで外国人留学生の採用数が増加しています。

外国人留学生が正社員として雇用される場合に、変更する在留資格としては技術・人文知識・国際業務が一般的となっています。その他、特定活動(本邦大学卒業者)、特定技能などが考えられます。

外国人留学生を正社員として雇用するには

外国人が日本で行うことができる活動は、在留資格ごとに決められています。外国人が在留資格で認められない活動を行うことは、原則として許されません。留学の在留資格は、原則として就労が認められないため、外国人を留学の在留資格のまま正社員として雇用することはできません。そのため、外国人留学生を正社員として雇用する場合は、在留資格の変更が必要となります。外国人が留学の在留資格のまま正社員としての業務を行うと、不法就労として刑事処罰および退去強制の対象となります。また、外国人を正社員として雇用して不法就労させた雇用主も不法就労助長として刑事処罰の対象となります。

外国人留学生を正社員として雇用する流れ

外国人留学生を正社員として雇用する場合は、次のような流れで行います。

①外国人の在留状況や専攻分野を確認する。

②業務内容が専攻分野と関連性があることを確認する。

③雇用条件が確定した場合は、外国人に内定を出す。

④外国人が内定を受諾した場合は、在留資格変更許可申請を行わせる。

⑤外国人が学校を卒業する。

⑥外国人が在留カードの交付を受ける。

⑦就労を開始する。

在留資格の変更

外国人留学生を正社員として雇用する場合は、一般的には、学校の卒業に合わせて、原則として就労可能な活動資格へと在留資格を変更して就労させることになります。在留資格を変更する場合、在留資格によっては外国人の専攻分野との関連性が必要とされます。そのため、外国人の専攻分野を確認するとともに、外国人に行わせようとしている業務の内容が専攻分野と関連性があることを確認する必要があります。業務の内容がいずれの在留資格の範囲にも含まれていない場合は、外国人にその業務を行わせることができません。

外国人留学生が変更後の在留資格で就労できるのは、新しい在留カードの交付を受けた日以降となります。外国人が内定を受諾しても、新しい在留カードの交付を受けるまでの期間は、就労させることができないことに注意する必要があります。

なお、就労可能な活動資格では、専門的な知識や技能を必要としない単純労働を行うことは原則として認められていません。単純労働を行わせる目的で外国人留学生を正社員として雇用することはできません

雇用条件の注意点

外国人留学生を雇用する場合は、日本人がその業務を行う場合と同等額以上の報酬を支払う必要があります。外国人であることを理由に差別的な待遇をすることは許されません。

在留資格変更許可申請

外国人留学生が在留資格許可申請を行う場合、申請時には卒業見込み証明書を提出し、許可時には卒業証明書を提出する必要があります。

外国人留学生を雇用した場合の手続

外国人を正社員として雇用した場合は、ハローワークへ外国人雇用状況届出書を提出する必要があります(厚生労働省「外国人雇用状況の届出について」)。

まとめ

外国人留学生を正社員として雇用する場合、行わせる業務の内容に応じて外国人に在留資格を取得させる必要があります。在留資格を取得させる場合は、外国人の専攻分野との関連性が必要です。また、単純労働を行わせることはできません。在留資格についての判断が難しい場合は、専門家の支援を受けることが大切です。当事務所では、外国人の雇用や在留資格を変更するお手伝いをしていますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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