在留特別許可とはどのような制度なのでしょうか。外国人が在留特別許可を受けるには、どのような要件を満たす必要があるのでしょうか。

在留特別許可

外国人が在留資格がない状態で滞在していることを不法滞在といいます。不法滞在には、在留資格を取得しないまま入国した不法入国・不法上陸と、在留資格を取得して入国したものの在留期間を経過した不法滞在があります。不法滞在者は退去強制手続を受け、異議の申出に理由がないと判断されると原則として退去強制の対象となります。ただし、退去強制の対象となる場合でも、不法滞在となった事情を考慮して、法務大臣が例外的に在留を許可することができ、これを在留特別許可といいます。不法滞在者の出頭から在留特別許可が出るまでには数か月からそれ以上の期間がかかります。

在留特別許可の要件

在留特別許可は、次の要件のいずれかに該当する必要があります。

1 永住許可を受けているとき

2 かつて日本国民として日本に本籍を有したことがあるとき

3 人身取引等により他人の支配下に置かれて日本に在留しているとき

4 その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき

ガイドライン

在留特別許可は、法務大臣の裁量で与えるものであるため、不法滞在者が請求できるものではありません。ただし、近年は異議の申出をした者の50~60%程度に在留特別許可が与えられており、裁量判断で考慮される要素などについて在留特別許可に係るガイドライン(平成21年7月改訂)が公表されています。ガイドラインは、考慮される要素をあげたものであり、要素を満たす、または満たさない場合に必ずしも許可が与えられる、または与えられないわけではありません。

積極要素

次のような事情があると許可を与える方向に働きます。

特に考慮する積極要素

1 外国人が、日本人の子または特別永住者の子であること

2 外国人が、日本人または特別永住者との間に出生した実子を扶養している場合で、次のいずれにも該当すること

⑴ 実子が未成年かつ未婚であること

⑵ 外国人が実子の親権を現に有していること

⑶ 外国人が実子を現に日本において相当期間同居の上、監護及び養育をしていること

3 外国人が、日本人または特別永住者と婚姻が法的に成立している場合で、次のいずれにも該当すること

⑴ 夫婦として相当期間共同生活をし、相互に協力して扶助していること

⑵ 夫婦の間に子がいるなど、婚姻が安定かつ成熟していること

4 外国人が、日本の初等・中等教育機関に在学し相当期間日本に在住している実子と同居し、実子を監護及び養育していること

5 外国人が、難病等により日本での治療を必要としていること、または治療を要する親族を看護することが必要と認められる者であること

その他の積極要素

1 外国人が、不法滞在者であることを申告するため、自ら地方入国管理官署に出頭したこと

2 外国人が、居住資格(永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者)で在留している者と婚姻が法的に成立している場合であって、特に考慮する積極要素の3⑴⑵のいずれにも該当すること

3 外国人が、居住資格で在留している実子を扶養している場合であって、特に考慮する積極要素の2⑴~⑶のいずれにも該当すること

4 外国人が、居住資格で在留している者の扶養を受けている未成年・未婚の実子であること

5 外国人が、日本での滞在期間が長期間に及び、日本への定着性が認められること

6 その他人道的配慮を必要とするなど特別な事情があること

消極要素

次のような事情があると許可を与えない方向に働きます。

特に考慮する消極要素

1 重大犯罪等により刑に処せられたことがあること

2 出入国管理行政の根幹にかかわる違反または反社会性の高い違反をしていること

その他の消極要素

1 船舶による密航、もしくは偽造旅券等または在留資格を偽装して不正に入国したこと

2 過去に退去強制手続を受けたことがあること

3 その他の刑罰法令違反またはこれに準ずる素行不良が認められること

4 その他在留状況に問題があること

まとめ

日本に不法滞在している外国人は退去強制の対象となります。ただし、外国人が不法滞在となった事情によっては、在留特別許可が出されて在留を許される場合があります。ただし、在留特別許可は法務大臣の裁量で与えられるものであり、許可を求める外国人としては、ガイドラインを参考にして要件を満たすことを異議申出で主張する必要があります。在留特別許可を求める外国人は専門家の支援を受けることが大切です。当事務所では、外国人が在留特別許可を受けるお手伝いを行っていますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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