不法滞在として退去強制の対象となった外国人であっても、事情によっては日本に在留することを許されることがあり、これを在留特別許可といいます。外国人が在留特別許可を申請するにはどのような要件を満たす必要があるのでしょうか。
在留特別許可
外国人が在留資格がない状態で滞在していることを不法滞在といいます。不法滞在には、在留資格を取得しないまま入国した不法入国・不法上陸と、在留資格を取得して入国したものの在留期間を経過した不法滞在があります。
不法滞在者は退去強制手続を受け、異議の申出に理由がないと判断されると原則として退去強制の対象となります。ただし、退去強制の対象となる場合でも、不法滞在となった事情を考慮して、法務大臣が例外的に在留を許可することができ、これを在留特別許可といいます。
従来、在留特別許可は、法務大臣の裁量で与えるものとされ、退去強制の対象者からは請求できませんでした。しかし、2023年(令和5年)の法改正により、在留特別許可申請の手続が設けられました。
在留特別許可申請の手続
在留特別許可申請は、申請人が出入国在留管理局に申請書、申請内容に応じて異なる必要書類を提出して行います。審査にかかる期間は、早い方では3~6か月、長い方では2〜3年かかる場合もあります。
申請期間
在留特別許可申請は、①外国人が収容令書により収容されたとき、または、②監理措置に付されたときから、退去強制令書が発付されるまでの期間に行うことができます。
申請手続の流れ
申請手続きの流れについてみていきましょう。
外国人の置かれている状況別の申請の仕方
1 申請人が収容令書により収容されている場合は、入国管理センターや出入国在留管理局の収容場の職員に対して申請を希望することを伝え、入国審査官などの面接を受けた上で申請を行います。
2 申請人が仮放免許可を受けて一時的に収容を解除されている場合、または、外国人が監理措置に基づいて監理人を付けられて生活している場合は、出入国在留管理局に出頭して、面接を受けた上で申請を行います。なお、申請人が16歳未満の場合や疾病その他の事由により自ら申請することができない場合は、申請人の父、母、配偶者、子または親族が申請できます。
3 申請人が刑事施設等(刑務所、少年刑務所、拘置所など)に拘留等されている場合は、施設の職員に対して申請を希望することを伝え、入国審査官などの面接を受けた上で申請を行います。
専門家に手続を依頼する場合
1 申請人は、専門家に不法滞在となっていることを相談します。専門家は、事情を確認したうえで、在留特別許可が認められる可能性があると判断した場合は、申請人の依頼を受けます。専門家によっては、在留申請の知識が不十分な場合もあるため、相談・依頼をするときは外国人の在留手続に詳しい専門家を利用することが重要です。
2 専門家は、必要な書類を作成・収集します。必要な書類については専門家の判断で作成・収集します。
3 専門家の付き添いの下で、申請人は出入国在留管理局に出頭し、書類を提出して申請します。また、申請人が収容の対象となる場合は、仮放免の申請を行います。
4 出入国在留管理局は、退去強制の対象となる違反や申請人の状況について調査・審査します。必要に応じて追加の書類の提出を求められる場合があります。
5 申請人には、口頭審理で事情を説明する機会が与えられます。口頭審理には家族なども立ち会うことができます。
6 法務大臣による裁決が行われ、事情が認められた場合は在留特別許可が与えられます。認められなかった場合は、退去強制令書が発付されて退去強制となります。
ガイドライン
改正法の下でも在留特別許可は、法務大臣の裁量とされていて、許可を与えるかどうかは、事案ごとの様々な事情を考慮して判断するものとされています。なお、在留特別許可申請の手続にあわせて、在留特別許可に係るガイドライン(令和6年3月改定)が改定されています。ガイドラインでは、在留特別許可の判断において、様々な事情をどのように考慮するかの基本的な考え方が示されています。
在留特別許可の要件
在留特別許可は、次の要件のいずれかに該当する必要があります。
1 永住許可を受けているとき
2 かつて日本国民として日本に本籍を有したことがあるとき
3 人身取引等により他人の支配下に置かれて日本に在留しているとき
4 難民の認定または補完的保護対象者の認定※を受けているとき
5 その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき
※補完的保護対象者の認定制度は、難民ではないが保護が必要な外国人を保護する仕組みとして、2023年12月1日から開始されました。認定を受けた者は、①定住者の在留資格が与えられる、②永住許可の要件が緩和される、③定住支援プログラムに参加できるなどの保護が与えられることになっています。認定を受けるには、出入国在留管理局への申請が必要とされ、申請者が一定の条件を満たすと、一定期間、退去強制手続が停止される仮滞在の許可を受けられます。
考慮される事情
在留特別許可の判断では、以下のような事情が考慮されます。許可を与える方向で評価される事情(積極要素)が許可を与えない方向で評価される事情(消極要素)を明らかに上回る場合に、許可が認められやすくなりますが、裁量が働くため、必ず許可が与えられるわけではありません。
在留を希望する理由
外国人が在留を希望する理由は、以下の事情とどのように関連するかという観点から考慮されます。
家族関係
外国人である子が日本で家族とともに生活していて、これを保護する必要があると考えられる場合は、許可を与える方向で評価されます。特に、次のような、日本人や特別永住者、永住者・定住者・日本人の配偶者など居住資格をもつ外国人との家族関係があることは、許可を与える方向で評価されます。
(1)日本人または特別永住者との家族関係
ア 日本人または特別永住者との間に生まれた実子であること
イ 日本人または特別永住者との間に生まれた実子を扶養していて、次のいずれかに当たること
(ア)実子が未成年かつ未婚であること、または、実子が成年だが、身体・精神の障害のために監護が必要なこと
(イ)実子と現に相当期間にわたり同居していて、実子の監護と養育をしていること
ウ 日本人または特別永住者と法的に結婚していて(偽装結婚を除く)、夫婦として相当期間にわたり共同生活して、お互いに協力・扶助していて、かつ、夫婦の間に子がいるなど結婚関係が安定・成熟していること
(2)居住資格で在留している外国人(居住資格者)との家族関係
ア 居住資格者の扶養を受けている未成年かつ未婚の実子であること
イ 居住資格で在留している実子を扶養していて、(1)イの(ア)と(イ)のどちらにも当たること
ウ 居住資格者と法的に結婚していて(偽装結婚を除く)、夫婦として相当期間にわたり共同生活して、お互いに協力・扶助していて、かつ、夫婦の間に子がいるなど結婚関係が安定・成熟していること
(3)それ以外の家族関係
ア 日本の初等中等教育機関(母国語で教育している教育機関を除く)で相当期間にわたり教育を受けていて、かつ、本国で初等中等教育を受けることが困難な事情などがあって、地域社会で一定の役割を果たすなど相当程度に地域社会に溶け込んでいる者と同居していて、かつ、その者の監護・養育を受けている実子であること
イ 日本の初等中等教育機関で相当期間教育を受けていて、かつ、本国で初等中等教育を受けることが困難な事情などがある実子と同居していて、かつ、その実子を監護・養育していて、地域社会で一定の役割を果たすなど相当程度に地域社会に溶け込んでいること
素行
外国人が、①地域社会における活動に相当な程度に関わっていたり、日本の小学校〜高校で相当期間にわたり教育を受けていて、相当な程度の地域社会との関係が構築されている、②第三者(将来の雇用主など)からの十分な支援を受けている、といた事情があって地域社会に溶け込み、貢献しているといえる場合は、その程度に応じて許可を与える方向で評価されます。
外国人が、社会、経済、文化などの各分野で日本に貢献していて、不可欠な役割を担っているといえることは、特に許可を与える方向で評価されます。
外国人が次のように素行に問題がある場合は、その程度に応じて許可を与えない方向で評価されます。
(1)過去に退去強制手続や出国命令手続を受けた
(2)日本の法令に違反する行為(犯罪や交通違反)を行った
(3)仮放免または監理措置中に逃亡または条件に違反した
(4)日本で就労しているのに、適正に納税義務を果たしていない
(5)現に生活している地域のルールを守らない、迷惑行為を繰り返す、など地域社会との関係に問題がある
また、次のような事情があると、特に許可を与えない方向で評価されます。
(1)次のような出入国管理に関わる重大な違反、または、反社会性の高い違反をしたことがあること
ア 集団密航に関与や、他の外国人の不法入国を容易にする行為などを行った
イ 他の外国人の不法就労や、在留資格の偽装に関わる行為などを行った
ウ 在留カードなどの公的書類の偽造・変造・不正受交付、偽造・変造された在留カードなどの行使・所持などを行った
エ 自ら売春を行った、他人に売春を行わせたなどの、日本の社会秩序を著しく乱す行為または人権を著しく侵害する行為を行った
(2)反社会勢力であること
日本に入国することとなった経緯
外国人に人道上の配慮の必要性などがある場合は、その程度に応じて許可を与える方向で評価されます。インドシナ難民、第三国定住難民、中国残留邦人の場合は、特に許可を与える方向で評価されます。
外国人が、船舶で密航した、偽造旅券(パスポート)を使用する、在留資格を偽装するなどによって不正に入国した、日本からの退去を命じられたにもかかわらず遅滞なく日本から退去しなかった、などの事情がある場合は、外国人が負う責任の程度に応じて許可を与えない方向で評価されます。
日本に在留している期間とその間の法的地位
外国人が、適正な在留資格をもって滞在していた期間が長いことは、許可を与える方向で評価されます。
外国人が、不法滞在している期間が長いことは、許可を与えない方向で評価されます。
退去強制の理由となった事実
退去強制の理由となった事実は、反社会性の程度に応じて許可を与えない方向で評価されます。
人道上の配慮の必要性
次のような人道上の配慮の必要性があることは、特に許可を与える方向で評価されます。
(1)難病などのため日本で治療する必要があること、または、このような治療を必要とする親族を看護する必要があること
(2)難民の認定や補完的保護対象者の認定は受けていないものの、本国が情勢不安であり、帰国困難な状況にあることが客観的に明らかであること
(3)国籍や市民権を有する国がなく、それ以外の送還先となる国(出入国管理及び難民認定法第53条第2項)のいずれにも送還できないこと
内外の諸情勢、日本における不法滞在者に与える影響
日本の政治や社会の情勢、外国人の本国の情勢、日本における不法滞在者に与える影響などが考慮されます。
その他の事情
不法滞在している外国人が自ら出入国在留管理局に出頭※したことや、もし在留特別許可が認められれば在留資格に当たる活動を行うといえることは、許可を与える方向で評価されます。
外国人が、退去強制手続や様々な申請手続において虚偽の内容の申告を行ったことや、外国人と本国との結び付きが強いことは、許可を与えない方向で評価されます。
※出入国在留管理庁「出頭申告のご案内~不法滞在で悩んでいる外国人の方へ~」
まとめ
日本に不法滞在している外国人は退去強制の対象となります。ただし、外国人が不法滞在となった事情によっては、在留特別許可が出されて在留を許される場合があります。
不法滞在している外国人は、在留特別許可を申請することができますが、許可は法務大臣の裁量で与えられるものであり、必ず許可が認められるわけではありません。在留特別許可が認められるかの判断では、様々な事情が考慮されますが、それらをどのように評価するかは、ガイドラインが参考になります。
在留特別許可を申請する外国人は専門家の支援を受けることが大切です。当事務所では、外国人が在留特別許可申請を行うお手伝いを行っていますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。








