外国人が在留資格で許されている活動以外に、事業を運営して利益を得たり、働いて報酬を得たりするにはどのような手続が必要となるのでしょうか。
資格外活動とは
日本に在留する外国人は、原則として在留資格で許されている範囲内の活動を行うことができます。在留資格の範囲に含まれていない、収入をともなう事業を運営する活動または報酬を受ける活動のことを資格外活動といいます。(出入国在留管理庁「資格外活動許可申請」)
外国人が資格外活動を行うことは原則として許されず、許可がないまま資格外活動を行ったり、許可で許された範囲を超えて資格外活動を行ったりすると、不法就労として刑事処罰および退去強制の対象となります。また、外国人に不法就労をさせた雇用主も不法就労助長として刑事処罰の対象となります。
外国人は、例外として資格外活動許可を得ることにより、許可された範囲内で資格外活動を行うことができます。資格外活動許可の対象となるのは、就労を認められた在留資格(就労可能な活動資格)や留学などの就労が認められない在留資格(就労不可能な活動資格)をもつ外国人です。特定技能、技能実習、短期滞在※、研修の在留資格をもつ場合は原則として資格外活動が認められません。外国人が、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者の在留資格(居住資格)をもつ場合は、日本における就労活動に制限がないため、資格外活動許可の対象とはなりません。
外国人が資格外活動許可を与えられると、在留カードの資格外活動許可欄に許される活動とその範囲が記載されます。外国人を就労させる雇用主は、外国人に行わせようとしている活動が在留カードに記載された資格活動許可の範囲内であることを確認する必要があります。
※ 新型コロナウイルスの影響による帰国困難への対応として、在留期間が令和4年11月1日までの外国人について、帰国が困難であり、就労ができず日本での生計維持が困難である場合には、特例として短期滞在の在留資格で資格外活動が認められています。
資格外活動許可の種類
資格外活動には、包括許可と個別許可の2つの種類があります。包括許可と個別許可の両方の許可を受けることができますが、すでに資格外活動許可を与えられている外国人が別の許可を取得する場合は、現在の在留資格で許された活動を阻害しない範囲で資格外活動を行える場合に限り許可を受けることができます。
包括許可
包括許可を受けた外国人は、1週間あたり28時間まで収入をともなう事業を運営する、または報酬を受ける活動を行うことができます。包括許可では、1週間の活動時間に制限がある代わりに、アルバイトなどの単純労働にあたる活動を行うことが許されています。
外国人が留学の在留資格をもつ場合は、教育機関の長期休業期間中は1日あたり8時間まで活動することができます。
個別許可
個別許可を受けた外国人は、包括許可の範囲外の活動や他の在留資格の範囲内の活動を行うことができます。個別許可では、活動時間の制限はありませんが、包括許可のような単純労働に当たる活動を行うことは許されていません。
出入国在留管理庁は、次のような場合を個別許可の例としてあげています。
1 留学の在留資格をもつ外国人が、インターンシップで1週間あたり28時間を超えて就業体験をする場合
2 教授の在留資格をもって大学で働く外国人が、民間企業の語学講師として、技術・人文知識・国際業務の在留資格の範囲に含まれる仕事をする場合
3 個人事業主として活動する場合
4 客観的に活動時間を確認することが困難な活動をする場合
資格外活動許可が不要な活動
外国人が在留資格の範囲内の活動を行いながら、同じく在留資格の範囲内の活動を副業として行う場合は、在留資格の範囲内であるため資格外活動には当たらず、資格外活動許可を取得する必要はありません。
外国人が在留資格の範囲外の活動を行う場合でも、謝礼金をもらって単発の講演や通訳をするなど、継続的に利益や報酬を得ることを目的としない活動を行う場合は、資格外活動許可を取得する必要はありません。
外国人がボランティア活動をする、学校に通学するなど、無報酬の活動を行う場合は、資格外活動許可を取得する必要はありません。
資格外活動許可があっても行えない活動
外国人は、資格外活動許可を受けたとしても、法令に違反する活動や風俗営業などの活動を行うことは許されません。
資格外活動許可申請の手続
資格外活動許可申請は、申請人、法定代理人、申請等取次者(弁護士または行政書士を含む)が、出入国在留管理局に申請書、申請内容に応じて異なる必要書類を提出して行います。標準処理期間は、2週間~2か月とされています。
申請提出者
法定代理人
申請人が18歳未満の場合は、親権者または未成年後見人、申請人が成年被後見人の場合は、成年後見人が法定代理人として申請を提出できます。
申請等取次者
地方出入国在留管理局長から申請等取次者としての承認を受けた雇用機関、教育機関、公益法人の職員は、申請人からの依頼を受けた場合に申請等取次者として申請を提出できます。
弁護士または行政書士
地方出入国在留管理局長に届出をした弁護士または行政書士は、申請人からの依頼を受けた場合に申請を提出できます。
申請手続の流れ
資格外活動許可申請は次のような流れで行います。
申請人が自ら手続を行う場合
1 申請人は、出入国在留管理局(外国人在留総合インフォメーションセンター)に在留申請の相談をします。出入国在留管理局の担当者は、申請人の在留資格や在留状況を確認したうえで、申請の要件を満たす可能性があると判断した場合は、申請に必要な書類について説明します。
2 申請人は、申請書とその他の申請に必要な書類を作成・収集します。出入国在留管理局で説明される書類は、申請に最低限必要となる書類なので、審査を有利にするためには、その他にも様々な書類を作成・収集する必要があります。このとき、書類に誤った内容を記載しないこと、すべての書類で内容に整合性があること、審査を不利にする内容を記載していないこと、収集した書類の有効期間に余裕があることなどに注意する必要があります。
3 申請人は、作成・収集した書類を出入国在留管理局に提出するか、在留申請オンラインシステムを利用して申請します。
4 出入国在留管理局は、提出された書類をもとに審査を行い、必要に応じて追加の書類の提出を求める場合があります。
5 出入国在留管理局は、申請人に審査結果の通知を行います。申請が許可された場合、申請人は出入国在留管理局で資格外活動許可書を受け取り、在留カードに資格外活動の記載を受けることができます。
6 申請が不許可となった場合、申請人は出入国在留管理局で不許可となった理由の説明を日本語で1回のみ受けられます。不許可となった理由は、再び申請をするときに改める必要があるため、申請に用いた書類の控えを残しておき、どのような理由で不許可となったのか調査できるようにしておく必要があります。不許可の理由の説明は、不許可の判断に対する不服申立の手続ではないため、申請人が不服を主張しても不許可の判断が覆ることはありません。
※ 在留申請オンラインシステムを利用した資格外活動許可申請は、在留資格変更許可申請、在留期間更新許可申請、在留資格取得許可申請と同時に行う場合に限り可能です。
専門家に手続を依頼する場合
1 申請人は、専門家に在留申請の相談をします。専門家は、申請人の在留資格や在留状況を確認したうえで、申請の要件を満たす可能性があると判断した場合は、申請人の依頼を受けます。専門家によっては、在留申請の知識が不十分な場合もあるため、相談・依頼をするときは外国人の在留手続に詳しい専門家を利用することが重要です。
2 専門家は、必要な書類を作成・収集します。必要な書類については専門家の判断で作成・収集します。
3 専門家は、作成・収集した書類を出入国在留管理局に提出するか、在留申請オンラインシステムを利用して申請します。
4 出入国在留管理局は、提出された書類をもとに審査を行い、必要に応じて追加の書類の提出を求める場合があります。追加の書類の提出は、専門家が取り次いで行います。
5 出入国在留管理局は、専門家に審査結果の通知を行います。申請が許可された場合、専門家は出入国在留管理局で資格外活動許可書を受け取り、在留カードに資格外活動の記載を受けることができます。専門家は、申請人に許可書と在留カードを渡します。
6 申請が不許可となった場合、専門家は出入国在留管理局で不許可となった理由の説明を受け、申請人に伝えます。再び申請をするときは、申請人は専門家に不許可となった理由を調査して対策をとってもらうことで、許可される可能性が高くなります。
資格外活動許可の要件
外国人が資格外活動許可を受けるには、資格外活動が①在留資格の活動の遂行を阻害しない範囲内であること、②相当性があることが必要です(出入国管理及び難民認定法19条2項)。一般的には次の要件を満たす必要があります(入国・在留審査要領)。
1 資格外活動を行うことで在留資格の活動の遂行が妨げられないこと
2 在留資格の活動を行っていること
3 個別許可の場合は、資格外活動が技能実習、特定活動、特定技能以外の就労可能な活動資格に当たること
4 資格外活動が法令に違反する活動や風俗営業などの活動に当たらないこと
5 収容令書の発付または意見聴取通知書の送達もしくは通知を受けていないこと
6 素行が不良ではないこと
7 日本の公私の機関との契約に基づいて在留資格の活動を行っている場合は、その機関が資格外活動に同意していること
申請に必要となる書類
申請には、資格外活動許可申請書、資格外活動の内容を明らかにする書類が必要となります。その他にも申請内容に応じて異なる書類が必要となります。
まとめ
外国人が資格外活動許可を取得するには、一定の要件を満たしたうえで、資格外活動許可申請を行う必要があります。要件の判断や資格外活動許可申請で提出する書類の作成・収集には、専門的な知識が必要となります。また、不許可となった場合は、その理由を適切に調査できないと、何度申請しても許可されないおそれがあります。そのため、資格外活動許可申請を行うときは、専門家の支援を受けることが大切です。当事務所では、外国人の資格外活動許可申請を代行するお手伝いをしていますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。