外国人が日本の国籍を取得するにはどのような手続が必要となるのでしょうか。

帰化とは

外国人が日本の国籍を取得して、日本人となることを帰化といいます。帰化の審査は、出入国管理及び難民認定法が改正された2012年、および在留期間に関する法務省の内部要件が変更された2022年以降、厳しくなったとされ、近年は帰化申請者全体のうち約5%が不許可となっています。ただし、申請が要件を満たさないのではなく、書類の内容や面接の態様に問題がある場合が多いといわれています。

国籍の取得

国籍法は、日本の国籍を取得する方法として、出生による場合(2条)、届出による場合(3条、17条)、帰化による場合(4~9条)を定めています。日本は二重国籍を認めていないため、外国人が日本の国籍を取得する場合は、外国の国籍を離脱して日本の国籍を取得する必要があります。

帰化の種類

普通帰化

通常の要件を満たす場合に許可される帰化を普通帰化といいます。

簡易帰化

簡易帰化は、普通帰化から一部の要件が緩和された帰化です。

大帰化

大帰化は、日本に特別の功労のある外国人について、国会の承認を得て許可される帰化です。大帰化が許可された例は一度もありません。

家族がいる場合の帰化の方法

帰化を申請する外国人に家族がいる場合、外国人本人のみで申請することも家族と同時に申請することも可能です。夫婦の一方のみ申請する、親のみ申請して子は申請しない、親は申請せず子のみ申請するといった方法をとることができます。家族のうち1人について帰化が許可される場合は、その配偶者および子については日本人の配偶者等に当たり、要件が緩和された簡易帰化の扱いとなります。そのため、配偶者または子が普通帰化の要件を満たさない場合でも、家族全員について帰化が許可される可能性があります。

帰化許可申請の手続

帰化許可申請は、申請者、法定代理人が、法務局に申請書、申請内容に応じて異なる必要書類を提出して行います。帰化許可申請は、原則として申請者本人が出頭することとされており、申請者、法定代理人以外の者が申請することは認められていません。標準処理期間は定められておらず、一般的には10か月から1年程度かかるとされています。

申請提出者

法定代理人

申請者が15歳未満の場合は、親権者または未成年後見人が法定代理人として申請を提出できます。ただし、法務局によっては法定代理人が申請を提出するときでも、申請者の出頭が必要とされる場合があるため確認しておく必要があります。

申請手続の流れ

帰化許可申請は次のような流れで行います。

1 申請者は、法務局に帰化の相談をします。法務局の担当者は、申請者の在留資格や在留状況を確認したうえで、申請の要件を満たす可能性があると判断した場合は、申請に必要な書類について説明します。

2 申請者は、申請書とその他の申請に必要な書類を作成・収集します。法務局で説明される書類は、申請に最低限必要となる書類なので、審査を有利にするためには、その他にも様々な書類を作成・収集する必要があります。このとき、書類に誤った内容を記載しないこと、すべての書類で内容に整合性があること、審査を不利にする内容を記載していないこと、収集した書類の有効期間に余裕があることなどに注意する必要があります。

3 申請者は、作成・収集した書類を法務局に提出して申請します。この際に申請者は、宣誓書の読み上げを求められます。

4 法務局は、申請から通常2~3か月後に申請者の面接を行います。面接は通常1~2時間かけて行われ、申請書類の内容、帰化の動機、生活や就労の状況、日本語能力などを確認します。法務局は、提出された書類をもとに審査を行い、必要に応じて自宅や勤務先の訪問質問を行い、追加の書類の提出を求める場合があります。法務局は資料を法務省に送付し、法務省がさらに審査を行います。

5 法務局は、申請者に審査結果の通知を行います。申請が許可された場合、申請者は法務局で帰化者の身分証明書を受け取ることができます。また、官報に帰化者の情報が掲載されます。

6 帰化が不許可となった場合、法務局は不許可となった理由を説明しません。そのため、不許可となった申請者は、申請に用いた書類の控えや面接の回答内容を残しておき、どのような理由で不許可となったのか調査できるようにしておく必要があります。

専門家に書類の作成を依頼する場合

専門家は、必要な書類を作成・収集します。必要な書類については専門家の判断で作成・収集します。専門家はその後、申請書類を申請者に渡し、申請者がそれを法務局に提出して申請します。

帰化した後の手続

申請者は、帰化が許可されると、2週間以内に在留カードを出入国在留管理局に返納する必要があります。また、法務局の指示に従って1か月以内に帰化届を市区町村長に提出する必要があります。これらの手続の他にも新しい旅券の発給申請、免許証の再交付申請、登記名義の変更などを行う必要があります。

帰化許可の要件

普通帰化の要件

次にあげる要件の他に日常生活に支障がない程度の日本語能力が必要とされます。

1 5年以上継続して日本に住所を有すること

外国人は、適法な在留資格をもって、日本に住所を有することが必要です。5年以上継続の要件は、旅行や短期留学などで3か月以内の期間、日本を離れていても問題ありませんが、3か月を超える期間、日本を離れて暮らしていた場合は満たさないとされる可能性が高くなります。また、帰化が許可された後に日本を離れて暮らす予定がある場合も消極的に評価される可能性が高くなります。

2 18歳以上で本国法によって行為能力を有すること

18歳未満の子の場合は、外国人の親とともに帰化申請して、親の申請が許可されると子も帰化することができます。

3 素行が善良であること

素行が善良であるか否かは、社会通念に照らして判断され、犯罪歴、交通違反歴、納税状況、在留状況などが評価されます。これらの状況は、申請者だけでなく同居者についても評価される可能性があります。この要件で判断される事実は、個別に判断されるものではなく、総合的に判断されるため、帰化許可申請を考えている場合は、消極的に評価される事実を少なくしておくことが大切です。

有罪判決を受けて懲役刑禁固刑となった前科がある場合は、刑期を終えて10年程度は経過しなければ帰化が許可されません。また、罰金刑の前科がある場合や執行猶予付きの有罪判決を受けた場合は、5年程度は経過しなければ帰化が許可されません。

交通違反は過去5年の間に軽微な違反が数回あっても問題ないといわれていますが、交通違反の回数が5回以上になると数年程度は帰化が許可されない可能性があります。また、重大な交通違反がある場合は1回の違反でも相当の年数は帰化が許可されない可能性があります。交通事故により損害が発生している場合は、損害賠償についても適切に解決していることが必要です。近年は交通違反について特に厳しく評価されるようになっているため、軽微な違反であれば大丈夫などと安易に考えないようにする必要があります。

税金や年金は、直近2年程度は滞納せずに支払いをしていなければ帰化が許可されません。なお、適切な手続に従って税金や年金の減免・猶予を受けている場合は、支払いが無くても問題ありません。

在留期間の経過など不法滞在歴がある場合は、新たな在留資格を取得してから10年程度は経過しなければ帰化が許可されません。また、資格外活動違反がある場合は、在留資格の範囲内で活動を始めてから3年程度は経過しなければ帰化が許可されません。

4 自己または生計を一にする配偶者その他の親族の資産または技能によって生計を営むことができること

生活保護に頼らずに生活できる程度の収入があることが必要です。この要件では、安定して収入を得られる就労状況にあることが求められます。アルバイトで生活している場合や頻繁に転職している場合は、不安定であると評価される可能性があります。外国人本人は収入が無い、または収入が少ないとしても、同居している家族の収入で生活できる場合や親からの仕送りで子が生活できる場合は要件を満たします。借金がある場合は、計画的に返済できていることが必要です。

5 国籍を有しないこと、または日本国籍の取得によって本国の国籍を喪失できて二重国籍とならないこと

6 日本政府を暴力で破壊することを企てた、または主張したことがないこと、そのような活動を行う政党その他の団体を結成した、または加入したことがないこと

反社会的勢力に当たる団体に所属していない、または関わっていないこと、親族、同居者、友人などにそのような団体の関係者がいないことが必要です。

在留期間の要件

帰化許可の要件には、永住許可の要件と異なり在留期間の定めがありません。しかし、帰化が許可されるには、外国人の在留状況に問題がないことが必要であり、3年以上の在留期間で在留していることが必要といわれています。従来は、1年の在留期間であっても帰化が許可される場合がありましたが、2022年に法務省の内部要件が変更され、3年以上の在留期間となりました。これは、永住許可の要件が3年以上の在留期間を必要としていることとの整合性をとるため、同等の基準で判断するようにしたものと考えられます。なお、家族滞在の在留資格をもつ外国人の配偶者または子が帰化申請する場合は、1年の在留期間であっても永住を許可される可能性があります。

簡易帰化の要件

国籍法6条の要件

次のいずれかに当たり、現に日本に住所を有する外国人は、普通帰化の要件1を満たす必要がありません。

1 日本国民であった者の子(養子は除く)で3年以上継続して日本に住所または居所を有する外国人

2 日本で生まれて3年以上継続して日本に住所もしくは居所を有する外国人、または、父もしくは母(養父母は除く)が日本で生まれた外国人

3 10年以上継続して日本に居所を有する外国人

国籍法7条の要件

日本国民の配偶者で3年以上継続して日本に住所または居所を有し、かつ、現に日本の住所を有する外国人、または、日本国民の配偶者で婚姻の日から3年を経過し、かつ、1年以上継続して日本に住所を有する外国人は、普通帰化の要件1、2を満たす必要がありません。

国籍法8条の要件

次のいずれかに当たる外国人は、普通帰化の要件1、2、4を満たす必要がありません。

1 日本国民の子(養子は除く)で日本に住所を有する外国人

2 日本国民の養子で1年以上継続して日本に住所を有し、かつ、縁組のとき本国法によって未成年であった外国人

3 帰化以外で日本の国籍を失った日本に住所を有する外国人

4 日本で生まれ、かつ、出生の時から国籍を有しないで3年以上継続して日本に住所を有する外国人

申請に必要となる書類

申請には、帰化許可申請書、帰化の動機書、宣誓書などが必要となります。その他にも申請内容に応じて異なる書類が必要となります。

まとめ

外国人が帰化するには、一定の要件を満たしたうえで、帰化許可申請を行う必要があります。要件の判断や帰化許可申請で提出する書類の作成・収集には、専門的な知識が必要となりますし、申請手続やその準備には多くの時間がかかります。また、不許可となった場合は、その理由を適切に調査できないと、何度申請しても許可されないおそれがあります。そのため、帰化許可申請を行うときは、専門家の支援を受けることが大切です。当事務所では、外国人の帰化許可申請のお手伝いをしていますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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