外国人に与えられた在留資格は取り消される場合があります。どのような場合に在留資格が取り消され、その場合に外国人はどのような扱いを受けるのでしょうか。

在留資格の取消とは

在留資格の取消とは、何らかの理由でいったん外国人に与えられた在留資格を取り消すことができる制度です。在留資格の取消は、在留期間が制限されている在留資格だけでなく、永住者など在留期間が無期限の在留資格も対象となります。(出入国在留管理庁「在留資格の取消し」)

在留資格の取消手続

在留資格の取消手続の流れ

在留資格の取消は次のような流れで行われます。

1 在留資格の取消事由に当たると思われる事実が判明すると、入国審査官または入国警備官は、事実の調査を開始します。

2 出入国在留管理局から対象となる外国人に対して意見聴取通知書が送付されます。通知書が届いた外国人は、通知書に記載されている期日に出入国在留管理局に出頭して、意見を陳述し、証拠を提出する必要があります。正当な理由がないにもかかわらず、外国人が意見聴取に応じなかった場合は、直ちに在留資格が取り消される可能性があります。

3 在留資格を取り消さない決定がされた場合は、外国人に通知され、在留が継続します。

4 在留資格を取り消す決定がされた場合は、外国人に対して在留資格取消通知書が送付され、在留資格の取消事由(出入国管理及び難民認定法第22条の4第1項各号)に応じて次の対応が行われます。

⑴ 1号、2号に当たるときは、外国人は退去強制となります。

⑵ 5号に当たるときは、外国人が逃亡すると疑うに足りる相当の理由がある場合は退去強制、その他の場合は出国準備期間が指定されます。

⑶ 3号、4号、6~10号に当たるときは、出国準備期間が指定されます。

⑷ 出国準備期間が指定された場合は、外国人はその期間内に出国する必要があります。外国人が出国しない場合は退去強制となります。

在留資格の取消事由

次のいずれかに当たる場合に、法務大臣は外国人の在留資格を取り消すことができます(1~10は出入国管理及び難民認定法第22条の4第1項各号に対応しています)。

偽りその他の不正の手段を用いた場合の取消事由

1 偽りその他不正の手段により、上陸拒否事由に該当しないものとして、上陸許可の証印または許可を受けたこと

2 1のほか、偽りその他不正の手段により、上陸許可の証印等または許可を受けたこと

3 1、2のほか、不実の記載のある文書または図画の提出または提示により、上陸許可の証印等を受けたこと

4 偽りその他不正の手段により、在留特別許可を受けたこと

在留資格で定められた活動を行わない場合の取消事由

5 ※の在留資格で在留する者が、在留資格で定められた活動を行わず、他の活動を行い、または、行おうとして在留していること

6 ※の在留資格で在留する者が、在留資格で定められた活動を3か月(高度専門職2号の場合は6か月)以上行わず、他の活動を行い、または、行おうとして在留していること

7 日本人の配偶者等、永住者の配偶者等の在留資格で在留する者が、配偶者としての活動を6か月以上行なわず在留していること

※ 外交、公用、教授、芸術、宗教、報道、高度専門職、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、介護、興行、技能、特定技能、技能実習、文化活動、短期滞在、留学、研修、家族滞在、特定活動

中長期在留者の住居地の届出に関する取消事由

8 上陸許可の証印もしくは許可、または在留資格の変更などによる許可を受けて、新たに中長期在留者となった者が、許可を受けた日から90日以内に、出入国在留管理庁長官に住居地の届出をしないこと

9 中長期在留者が、出入国在留管理庁長官に届け出た住居地から退去した場合に、退去の日から90日以内に、新住居地の届出をしないこと

10 中長期在留者が、出入国在留管理庁長官に虚偽の住居地を届け出たこと

在留資格が取消となった場合はどうなるか

退去強制

退去強制とは、在留している外国人を強制的に国外へ退去させるものです。退去強制が決定されると、退去強制令書に基づいて、対象となる外国人は入国者収容所、地方出入国在留管理局の収容場などに収容されます。その後、原則として次の国の中から外国人の希望したいずれかの国に強制送還されます。

1 日本に入国する直前に居住していた国

2 日本に入国する前に居住していたことのある国

3 日本に向けて船舶等に乗った港の属する国

4 出生地の属する国

5 出生時にその出生地の属していた国

6 その他の国

自費出国

退去強制令書が発布された外国人は、出入国在留管理局に申請することにより、自費で出国することを許可される場合があります。自費出国が許可されるためには、外国人が有効な旅券、送還先まで搭乗が可能な航空券または航空券を購入できる金額の所持金を所持しており、自らの費用負担による確実な出国が具体的に可能であることが必要です。退去強制となった外国人は、自費出国することで強制送還よりも短い期間で出国できます。

上陸拒否期間

上陸拒否期間とは、在留資格の取消などにより退去強制となった、または不法滞在などで出国命令を受けて出国した外国人が一定の期間、入国できなくなるものです。

1 過去に退去強制された、または出国命令を受けて出国したことが複数回ある者(リピーター) 10年間

2 退去強制された者 5年間

3 出国命令を受けて出国した者 1年間

出国準備期間

出国準備期間とは、最大30日の出国に必要な期間を指定して、在留している外国人に自主的に出国すること(自主出国)を求めるものです。自主出国は、適法な出国であり、外国人が自主出国した後に再び在留資格を取得して入国することが可能です。外国人が出国準備期間中に自主出国しない場合は、刑事処罰退去強制の対象となります。なお、出国準備期間が指定された場合は、在留期間更新許可申請または在留資格変更許可申請をしたときに設定される2か月の特例期間があっても、出国準備期間内に出国する必要があります。

まとめ

在留資格が取り消されると、外国人は適法に在留することができなくなります。意見聴取通知書が届いた場合は、意見聴取で資料や証拠を提出して在留状況に問題がないことを説明する必要があります。そのため、通知書が届いた時点で専門家と相談して、専門家に代理人として手続に対応してもらう、専門家に意見聴取に同行してもらう、提出する資料や証拠を準備してもらうことが大切です。当事務所では、在留資格の取消手続で提出する書類の作成・収集を代行するお手伝いをしていますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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