定住者とはどのような在留資格でしょうか。また、外国人が定住者の在留資格を取得するにはどうすればよいのでしょうか。
定住者の在留資格とは
定住者とは、外国人が日系人や特定の国からの難民であるなど人道上の特別な理由がある場合に日本に在留し続けることができる在留資格です。
定住者の在留資格では、原則として活動の制限がありません。また、永住者の在留資格に変更する場合に、永住許可の要件が緩和されます。
定住者の在留資格をもつ外国人は、2022年(令和4年)の時点で約20万7千人います。国籍別では、ブラジルが約7万1千人、フィリピンが約5万7千人、中国が約2万7千人などとなっています。
定住者の在留資格が認められる者
法務省告示で在留資格が認められる者
次のような外国人については、一定の条件を満たす場合は、法務省告示(定住者告示)(令和3年10月改正)により法務大臣の指定がなくても定住者の在留資格が認められます(告示定住者)。
1 難民(国際連合難民高等弁務官事務所が推薦したもの)
2 日本人の子として出生した者の実子(日系2世、3世)
3 日本人の子として出生した日本国籍を離脱した者の実子の実子(日系3世)
4 日本人の配偶者等の在留資格をもつ日系2世、3世の配偶者
5 定住者(1年以上の在留期間)の配偶者
6 日本人、永住者、特別永住者、定住者(1年以上の在留期間)の扶養を受ける未成年で未婚の実子
7 日本人、永住者、特別永住者、定住者(1年以上の在留期間)の配偶者の扶養を受ける未成年で未婚の実子(連れ子)
8 日本人、永住者、特別永住者、定住者(1年以上の在留期間)の扶養を受ける6歳未満の養子
9 中国残留邦人とその親族
これらの一部では、素行が善良であることが要件となっています。この要件を満たすには、①交通違反以外で日本または外国の法令に違反して懲役・禁固・罰金に相当する刑を受けたりや執行猶予となったりしていないこと、刑を受けた場合は10年、執行猶予となった場合は5年を経過していること、②少年法の保護処分が継続中ではないこと、③日常生活や社会生活において違反行為や風紀を乱す行為を繰り返し行うなどしていないこと、④在留資格に関して不正な行為を行っていないことなどが必要となります。
通達で在留資格が認められる者
次のような外国人については、法務省告示にはありませんが、一定の条件を満たす場合は、通達により定住者の在留資格を認めるものとされています(告示外定住者)。
1 法務大臣により難民として認定された者(認定難民)
2 難民として認定しない処分の後、特定活動の在留資格を認められた者で、定住者の在留資格への在留資格変更許可申請を行った者(難民不認定定住)
3 日本人、永住者、特別永住者である配偶者と離婚した後、引き続き日本に在留することを希望する者(離婚定住)
4 日本人、永住者、特別永住者である配偶者が死亡した後、引き続き日本に在留することを希望する者(死別定住)
5 日本人、永住者、特別永住者との婚姻が事実上破綻した後、引き続き日本に在留することを希望する者(婚姻破綻定住)
6 日本人の実子を監護・養育する者
7 特別養子の離縁により、日本人の配偶者等の在留資格の対象とならなくなった者(特別養子離縁定住)
8 両親が帰国した、行方不明になった、児童虐待被害を受けた未成年の子
9 家族滞在の在留資格またはその要件を満たして在留していた者で、日本の義務教育を修了して高校などを卒業または卒業する見込みである未成年の子
10 出国中に再入国許可の有効期間を経過した、または上陸拒否事由に当たることが発覚した永住者
11 かつて告示定住者として定住者の在留資格をもっていた者
定住者の在留期間
定住者の在留期間は、法務省告示で在留資格が認められる者(告示定住者)の場合は、5年、3年、1年、6か月のいずれか、それ以外の者の場合は、5年を超えない範囲内の期間となります。
定住者と永住者の違い
定住者と永住者はいずれも外国人の身分や地位に応じて認められる在留資格(居住資格)です。いずれの在留資格も原則として日本における活動に制限がありません。定住者の在留期間は最長5年まで認められるのに対して、永住者の在留期間は無期限となります。ただし、いずれの場合も在留カードの更新は必要となります。
申請の手続
定住者の在留資格を取得する場合は、申請人の在留状況に応じて、在留資格認定証明書交付申請、在留資格変更許可申請、在留資格取得許可申請のいずれかの手続が必要となります。
在留資格認定証明書交付申請
在留資格認定証明書交付申請は、申請人、法定代理人、外国人を受け入れようとする機関の職員その他法務省令で定める代理人(代理人)、申請等取次者(弁護士または行政書士を含む)が、出入国在留管理局に申請書、申請内容に応じて異なる必要書類を提出して行います。申請人は、法務省告示で在留資格が認められる者(告示定住者)である必要があります。法定代理人または申請等取次者が申請を行う場合は、申請人または代理人が日本に滞在している必要があります。標準処理期間は、1か月~3か月とされています。
在留資格変更許可申請
在留資格変更許可申請は、申請人、法定代理人、申請等取次者(弁護士または行政書士、親族または同居者等を含む)が、出入国在留管理局に申請書、申請内容に応じて異なる必要書類を提出して行います。申請等取次者が申請を行う場合は、申請人が日本に滞在している必要があります。標準処理期間は、2週間~1か月とされています。
在留資格取得許可申請
在留資格取得許可申請は、申請人、法定代理人、申請等取次者(弁護士または行政書士、親族または同居者等を含む)が、出入国在留管理局に申請書、申請内容に応じて異なる必要書類を提出して行います。申請等取次者が申請を行う場合は、申請人が日本に滞在している必要があります。標準処理期間は、在留資格の取得の事由が生じた日から60日以内とされています。
申請提出者
法定代理人
申請人が18歳未満の場合は、親権者または未成年後見人、申請人が成年被後見人の場合は、成年後見人が法定代理人として申請を提出できます。
代理人
定住者の在留資格では、日本に居住する申請人の親族が代理人として申請を提出できます。
申請等取次者
地方出入国在留管理局長から申請等取次者としての承認を受けた雇用機関、教育機関、監理団体、公益法人の職員は、申請人からの依頼を受けた場合に申請等取次者として申請を提出できます(在留資格認定証明書交付申請の場合は公益法人の職員のみ)。
弁護士または行政書士
地方出入国在留管理局長に届出をした弁護士または行政書士は、申請人からの依頼を受けた場合に申請を提出できます。
親族または同居者等
申請人が16歳未満の場合や申請人が疾病その他の事由により自ら出頭することができない場合、申請人の親族または同居者もしくはこれに準ずる者で地方出入国在留管理局長が適当と認める者は、申請を提出できます。適当と認める者には、医療滞在の同行者、刑事施設・児童相談所・婦人相談所の施設の職員、老人ホーム等の職員、教育機関等の職員、児童養護施設等の職員などが当たります。
申請手続の流れ
申請は次のような流れで行います。在留資格認定証明書交付申請は、一般的には国外にいる外国人に代わり日本国内にいる代理人が行います。
申請人が自ら手続を行う場合
1 申請人は、出入国在留管理局(外国人在留総合インフォメーションセンター)に在留申請の相談をします。出入国在留管理局の担当者は、申請人の在留資格や在留状況を確認したうえで、申請の要件を満たす可能性があると判断した場合は、申請に必要な書類について説明します。
2 申請人は、申請書とその他の申請に必要な書類を作成・収集します。出入国在留管理局で説明される書類は、申請に最低限必要となる書類なので、審査を有利にするためには、その他にも様々な書類を作成・収集する必要があります。このとき、書類に誤った内容を記載しないこと、すべての書類で内容に整合性があること、審査を不利にする内容を記載していないこと、収集した書類の有効期間に余裕があることなどに注意する必要があります。
3 申請人は、作成・収集した書類を出入国在留管理局に提出するか、在留申請オンラインシステムを利用して申請します。
4 出入国在留管理局は、提出された書類をもとに審査を行い、必要に応じて追加の書類の提出を求める場合があります。
5 出入国在留管理局は、申請人に審査結果の通知を行います。申請が許可された場合、申請人は出入国在留管理局で在留資格認定証明書または在留カードを受け取ることができます。在留申請オンラインシステムを利用して申請した場合は、申請人は電子メールで在留資格認定証明書を受け取る、または郵送で在留カードを受け取ることができます(出入国在留管理庁「在留資格認定証明書の電子化について」)。日本にいる代理人が申請人の代わりに在留資格認定証明書の交付を受けた場合は、申請人に証明書を送付または電子メールを転送します。
6 申請が不許可となった場合、申請人は出入国在留管理局で不許可となった理由の説明を日本語で1回のみ受けられます。不許可となった理由は、再び申請をするときに改める必要があるため、申請に用いた書類の控えを残しておき、どのような理由で不許可となったのか調査できるようにしておく必要があります。不許可の理由の説明は、不許可の判断に対する不服申立の手続ではないため、申請人が不服を主張しても不許可の判断が覆ることはありません。
専門家に手続を依頼する場合
1 申請人は、専門家に在留申請の相談をします。専門家は、申請人の在留資格や在留状況を確認したうえで、申請の要件を満たす可能性があると判断した場合は、申請人の依頼を受けます。専門家によっては、在留申請の知識が不十分な場合もあるため、相談・依頼をするときは外国人の在留手続に詳しい専門家を利用することが重要です。
2 専門家は、必要な書類を作成・収集します。必要な書類については専門家の判断で作成・収集します。
3 専門家は、作成・収集した書類を出入国在留管理局に提出するか、在留申請オンラインシステムを利用して申請します。
4 出入国在留管理局は、提出された書類をもとに審査を行い、必要に応じて追加の書類の提出を求める場合があります。追加の書類の提出は、専門家が取り次いで行います。
5 出入国在留管理局は、専門家に審査結果の通知を行います。申請が許可された場合、専門家は出入国在留管理局で在留資格認定証明書または在留カードを受け取ることができます。在留申請オンラインシステムを利用して申請した場合は、専門家は電子メールで在留資格認定証明書を受け取る、または郵送で在留カードを受け取ることができます(出入国在留管理庁「在留資格認定証明書の電子化について」)。専門家は、申請人に証明書や在留カードを送付または電子メールを転送します。
6 申請が不許可となった場合、専門家は出入国在留管理局で不許可となった理由の説明を受け、申請人に伝えます。再び申請をするときは、申請人は専門家に不許可となった理由を調査して対策をとってもらうことで、許可される可能性が高くなります。
申請に必要となる書類
申請には、手続きに応じて、在留資格認定証明書交付申請書、在留資格変更許可申請書、在留資格取得許可申請書が必要となります。その他にも申請内容に応じて異なる書類が必要となります。
結核スクリーニング
3か月を超える滞在予定期間で在留資格認定証明書交付申請をする場合、フィリピン、ベトナム、中国、インドネシア、ネパール、ミャンマー国籍の外国人は、日本政府が指定した医療機関が発行する結核非発病証明書を提出する必要があります(厚生労働省「入国前結核スクリーニングの実施について」)。
まとめ
外国人が定住者の在留資格を取得するには、一定の要件を満たしたうえで、在留資格認定証明書交付申請、在留資格変更許可申請、在留資格取得許可申請のいずれかを行う必要があります。在留申請で提出する書類の作成・収集には、専門的な知識が必要となりますし、申請手続やその準備には多くの時間がかかります。また、不許可となった場合は、その理由を適切に調査できないと、何度申請しても許可されないおそれがあります。そのため、在留申請を行うときは、専門家の支援を受けることが大切です。当事務所では、外国人の在留申請を代行するお手伝いをしていますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。