特定技能とはどのような在留資格でしょうか。また、外国人が特定技能の在留資格を取得するにはどうすればよいのでしょうか。

特定技能とは

特定技能とは、日本において人材確保が困難となっている特定の産業分野において、日本の公私の機関との雇用契約に基づいて知識や技能を有する外国人が業務に従事することを認める在留資格です。

特定技能の在留資格は、介護、ビルクリーニング、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業の12種類の産業分野(特定産業分野)で認められています。

特定技能の在留資格では原則として資格外活動許可を取得することができません

特定技能の在留資格をもつ外国人は、2022年(令和4年)の時点で約13万1千人います。国籍別では、ベトナムが約7万7千人、インドネシアが約1万6千人、フィリピンが約1万3千人などとなっています。

特定技能の活動制限

特定技能1号

特定技能1号では、日本の公私の機関との雇用に関する契約に基づいて行う特定産業分野であって、相当程度の知識または経験を必要とする技能を要する業務に従事する活動を行うことが認められます。

特定技能2号

特定技能2号では、日本の公私の機関との雇用に関する契約に基づいて行う特定産業分野であって、熟練した技能を要する業務に従事する活動を行うことが認められます。特定技能2号の在留資格は、特定技能1号から在留資格の変更を申請する必要があります。特定技能2号の在留資格は、介護以外の産業分野で取得できます。介護の産業分野については、介護の在留資格があるため追加の対象とはなっていません(出入国在留管理庁「特定技能2号の対象分野の追加について(令和5年6月9日閣議決定)」)。

特定技能の在留期間

特定技能の在留期間は、特定技能1号の場合は、1年を超えない範囲内の期間、特定技能2号の場合は、3年、1年、6か月のいずれかとなります。

特定技能1号では、在留期間を更新することで通算5年特定技能2号では、在留期間を更新することで上限なく在留が認められます。

特定技能と技能の違い

特定技能の在留資格が、労働力が不足している分野における人材確保を目的として、技術・知識を必要としない単純労働を含む活動を対象とするのに対して、技能の在留資格は、高度な技術・知識をもつ外国人の活動を対象としています。

申請の手続

特定技能の在留資格を取得する場合は、申請人の在留状況に応じて、在留資格認定証明書交付申請、在留資格変更許可申請のいずれかの手続が必要となります。

在留資格認定証明書交付申請

在留資格認定証明書交付申請は、申請人、法定代理人、外国人を受け入れようとする機関の職員その他法務省令で定める代理人(代理人)、申請等取次者(弁護士または行政書士を含む)が、出入国在留管理局に申請書、申請内容に応じて異なる必要書類を提出して行います。法定代理人または申請等取次者が申請を行う場合は、申請人または代理人が日本に滞在している必要があります。標準処理期間は、1か月~3か月とされています。

在留資格変更許可申請

在留資格変更許可申請は、申請人、法定代理人、申請等取次者(弁護士または行政書士、親族または同居者等を含む)が、出入国在留管理局に申請書、申請内容に応じて異なる必要書類を提出して行います。申請等取次者が申請を行う場合は、申請人が日本に滞在している必要があります。標準処理期間は、2週間~1か月とされています。

申請提出者

法定代理人

申請人が成年被後見人の場合は、成年後見人が法定代理人として申請を提出できます。

代理人

特定技能の在留資格では、申請人と特定技能雇用契約を結んだ日本の機関の職員が代理人として申請を提出できます。

申請等取次者

地方出入国在留管理局長から申請等取次者としての承認を受けた雇用機関、教育機関、監理団体、公益法人の職員は、申請人からの依頼を受けた場合に申請等取次者として申請を提出できます(在留資格認定証明書交付申請の場合は公益法人の職員のみ)。

弁護士または行政書士

地方出入国在留管理局長に届出をした弁護士または行政書士は、申請人からの依頼を受けた場合に申請を提出できます。

親族または同居者等

申請人が疾病その他の事由により自ら出頭することができない場合、申請人の親族または同居者もしくはこれに準ずる者で地方出入国在留管理局長が適当と認める者は、申請を提出できます。適当と認める者には、医療滞在の同行者、刑事施設・児童相談所・婦人相談所の施設の職員、老人ホーム等の職員、教育機関等の職員、児童養護施設等の職員などが当たります。

申請手続の流れ

申請は次のような流れで行います。在留資格認定証明書交付申請は、一般的には国外にいる外国人に代わり日本国内にいる代理人が行います。

申請人が自ら手続を行う場合

1 申請人は、出入国在留管理局(外国人在留総合インフォメーションセンター)に在留申請の相談をします。出入国在留管理局の担当者は、申請人の在留資格や在留状況を確認したうえで、申請の要件を満たす可能性があると判断した場合は、申請に必要な書類について説明します。

2 申請人は、申請書とその他の申請に必要な書類を作成・収集します。出入国在留管理局で説明される書類は、申請に最低限必要となる書類なので、審査を有利にするためには、その他にも様々な書類を作成・収集する必要があります。このとき、書類に誤った内容を記載しないこと、すべての書類で内容に整合性があること、審査を不利にする内容を記載していないこと、収集した書類の有効期間に余裕があることなどに注意する必要があります。

3 申請人は、作成・収集した書類を出入国在留管理局に提出するか、在留申請オンラインシステムを利用して申請します。

4 出入国在留管理局は、提出された書類をもとに審査を行い、必要に応じて追加の書類の提出を求める場合があります。

5 出入国在留管理局は、申請人に審査結果の通知を行います。申請が許可された場合、申請人は出入国在留管理局で在留資格認定証明書または在留カードを受け取ることができます。在留申請オンラインシステムを利用して申請した場合は、申請人は電子メールで在留資格認定証明書を受け取る、または郵送で在留カードを受け取ることができます(出入国在留管理庁「在留資格認定証明書の電子化について」)。日本にいる代理人が申請人の代わりに在留資格認定証明書の交付を受けた場合は、申請人に証明書を送付または電子メールを転送します。

6 申請が不許可となった場合、申請人は出入国在留管理局で不許可となった理由の説明日本語で1回のみ受けられます。不許可となった理由は、再び申請をするときに改める必要があるため、申請に用いた書類の控えを残しておき、どのような理由で不許可となったのか調査できるようにしておく必要があります。不許可の理由の説明は、不許可の判断に対する不服申立の手続ではないため、申請人が不服を主張しても不許可の判断が覆ることはありません。

専門家に手続を依頼する場合

1 申請人は、専門家に在留申請の相談をします。専門家は、申請人の在留資格や在留状況を確認したうえで、申請の要件を満たす可能性があると判断した場合は、申請人の依頼を受けます。専門家によっては、在留申請の知識が不十分な場合もあるため、相談・依頼をするときは外国人の在留手続に詳しい専門家を利用することが重要です。

2 専門家は、必要な書類を作成・収集します。必要な書類については専門家の判断で作成・収集します。

3 専門家は、作成・収集した書類を出入国在留管理局に提出するか、在留申請オンラインシステムを利用して申請します。

4 出入国在留管理局は、提出された書類をもとに審査を行い、必要に応じて追加の書類の提出を求める場合があります。追加の書類の提出は、専門家が取り次いで行います。

5 出入国在留管理局は、専門家に審査結果の通知を行います。申請が許可された場合、専門家は出入国在留管理局で在留資格認定証明書または在留カードを受け取ることができます。在留申請オンラインシステムを利用して申請した場合は、専門家は電子メールで在留資格認定証明書を受け取る、または郵送で在留カードを受け取ることができます(出入国在留管理庁「在留資格認定証明書の電子化について」)。専門家は、申請人に証明書や在留カードを送付または電子メールを転送します。

6 申請が不許可となった場合、専門家は出入国在留管理局で不許可となった理由の説明を受け、申請人に伝えます。再び申請をするときは、申請人は専門家に不許可となった理由を調査して対策をとってもらうことで、許可される可能性が高くなります。

特定技能雇用契約の締結

特定技能の在留資格で外国人を受け入れる場合、日本の公私の機関(特定技能所属機関)は、外国人と雇用契約(特定技能雇用契約)を結ぶ必要があります。外国人と特定技能雇用契約を結んだ後、特定技能所属機関は外国人に対して事前ガイダンスを行い、健康診断を受診させます。

1号特定技能外国人支援計画書の作成

特定技能所属機関は、1号特定技能外国人支援計画書を作成し、その他の申請に必要となる書類を準備します。

在留資格認定証明書交付申請

上陸許可基準

特定技能の在留資格認定証明書を取得して上陸する場合、次の要件を満たす必要があります。

特定技能1号の要件

特定技能雇用契約が次のいずれにも当たること

1 特定技能雇用契約が、次のいずれも適切に定めており法務省令の基準に適合すること

⑴ 活動の内容およびこれに対する報酬、その他の雇用関係に関する事項

⑵ 契約期間が満了した外国人の出国を確保するための措置、その他外国人の適正な在留に必要な事項

法務省令の基準に適合するには、外国人であることを理由として、報酬の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、差別的取扱いをしていないことが必要です。


2 日本の公私の機関が、次のいずれも確保しており法務省令の基準に適合すること

⑴ 1に適合する特定技能雇用契約の適正な履行

⑵ 3に適合する1号特定技能外国人支援計画の適正な実施

法務省令の基準に適合するには、日本の公私の機関は、契約締結の日より前5年以内に出入国または労働に関する法令に関し不正または著しく不当な行為をしていないことが必要です。


3 日本の公私の機関は、特定技能の活動を安定的かつ円滑に行うことができるようにするために外国人に対して行う、職業生活上・日常生活上・社会生活上の支援(1号特定技能外国人支援)の実施に関する計画(1号特定技能外国人支援計画)を作成すること

1号特定技能外国人支援には、特定技能の活動を行おうとする外国人と日本人との交流の促進に係る支援、および外国人が帰責事由なく特定技能雇用契約を解除される場合に他の日本の公私の機関との契約に基づいて活動できるようにするための支援を含みます。


4 次のいずれにも当たること

⑴ 次のいずれにも当たること

① 18歳以上であること

② 健康状態が良好であること

③ 従事しようとする業務に必要な相当程度の知識または経験を必要とする技能を有していることが、試験その他の評価方法により証明されていること

④ 日本での生活および従事しようとする業務に必要な日本語能力を有していることが、試験その他の評価方法により証明されていること

⑤ 有効な旅券を所持していること

⑥ 特定技能1号の在留資格で日本に在留したことがある者は、在留期間が通算して5年に達していないこと

技能実習2号を良好に修了している者であり、かつ修得した技能が従事しようとする業務において要する技能と関連性が認められる場合は、③④の要件を満たす必要はありません。

⑵ 申請人、配偶者、直系・同居の親族その他申請人と社会生活において密接な関係を有する者が、特定技能の活動に関連して、保証金の徴収その他名目のいかんを問わず、金銭その他の財産を管理されないこと、契約の不履行について違約金を定める契約その他の不当に金銭その他の財産の移転を予定する契約締結されておらず、かつ、締結されないことが見込まれること

⑶ 申請人が契約の申込みの取次ぎまたは外国における特定技能の活動の準備に関して外国の機関に費用を支払っている場合は、その額および内訳を十分に理解して機関との間で合意していること

⑷ 申請人が国籍または住所を有する国または地域において、日本で行う活動に関連して遵守すべき手続が定められている場合は、その手続を経ていること

⑸ 食費、居住費その他名目のいかんを問わず申請人が定期に負担する費用について、その費用の対価として供与される食事、住居その他の利益の内容を十分に理解した上で合意していること、その費用の額が実費に相当する額その他の適正な額であり、その費用の明細書その他の書面が提示されること

⑹ 特定産業分野に係るものは、告示で定める基準に適合すること


特定技能2号の要件

特定技能雇用契約が次のいずれにも当たること

1 特定技能雇用契約が、次のいずれも適切に定めており法務省令の基準に適合すること

⑴ 活動の内容およびこれに対する報酬、その他の雇用関係に関する事項

⑵ 契約期間が満了した外国人の出国を確保するための措置、その他外国人の適正な在留に必要な事項

法務省令の基準に適合するには、外国人であることを理由として、報酬の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、差別的取扱いをしていないことが必要です。


2 日本の公私の機関が、1に適合する特定技能雇用契約の適正な履行を確保しており法務省令の基準に適合すること

法務省令の基準に適合するには、日本の公私の機関は、契約締結の日より前5年以内に出入国または労働に関する法令に関し不正または著しく不当な行為をしていないことが必要です。


3 次のいずれにも当たること

⑴ 次のいずれにも当たること

① 18歳以上であること

② 健康状態が良好であること

③ 従事しようとする業務に必要な熟練した技能を有していることが、試験その他の評価方法により証明されていること

④ 有効な旅券を所持していること

⑵ 申請人、配偶者、直系・同居の親族その他申請人と社会生活において密接な関係を有する者が、特定技能の活動に関連して、保証金の徴収その他名目のいかんを問わず、金銭その他の財産を管理されないこと、契約の不履行について違約金を定める契約その他の不当に金銭その他の財産の移転を予定する契約締結されておらず、かつ、締結されないことが見込まれること

⑶ 申請人が契約の申込みの取次ぎまたは外国における特定技能の活動の準備に関して外国の機関に費用を支払っている場合は、その額および内訳を十分に理解して機関との間で合意していること

⑷ 申請人が国籍または住所を有する国または地域において、日本で行う活動に関連して遵守すべき手続が定められている場合は、その手続を経ていること

⑸ 食費、居住費その他名目のいかんを問わず申請人が定期に負担する費用について、その費用の対価として供与される食事、住居その他の利益の内容を十分に理解した上で合意していること、その費用の額が実費に相当する額その他の適正な額であり、その費用の明細書その他の書面が提示されること

⑹ 技能実習の在留資格で日本に在留していたことがある者は、日本において修得、習熟または熟達した技能等の本国への移転に努めるものと認められること

⑺ 特定産業分野に係るものは、告示で定める基準に適合すること

技能試験・日本語試験

外国人が特定技能1号の在留資格の申請手続を行う場合は、特定産業分野別の技能試験に合格し、日本語試験として日本語能力試験(JLPT)でN4以上または日本語基礎テスト(JFT-Basic)でA2以上の認定を受けている必要があります。また、介護の産業分野では、介護日本語評価試験に合格する必要があります。ただし、技能実習2号を良好に修了した外国人については、技能試験および日本語試験が免除されます。

在留資格変更許可申請

特定技能1号から2号への変更

特定技能1号から2号に変更する場合、特定産業分野別の技能試験および実務経験で一定の技能水準を満たす必要があります。

申請に必要となる書類

申請には、手続きに応じて、在留資格認定証明書交付申請書、在留資格変更許可申請書が必要となります。その他にも申請内容に応じて異なる書類が必要となります。

結核スクリーニング

3か月を超える滞在予定期間で在留資格認定証明書交付申請をする場合、フィリピン、ベトナム、中国、インドネシア、ネパール、ミャンマー国籍の外国人は、日本政府が指定した医療機関が発行する結核非発病証明書を提出する必要があります(厚生労働省「入国前結核スクリーニングの実施について」)。

まとめ

外国人が特定技能の在留資格を取得するには、一定の要件を満たしたうえで、在留資格認定証明書交付申請、在留資格変更許可申請のいずれかを行う必要があります。在留申請で提出する書類の作成・収集には、専門的な知識が必要となりますし、申請手続やその準備には多くの時間がかかります。また、不許可となった場合は、その理由を適切に調査できないと、何度申請しても許可されないおそれがあります。そのため、在留申請を行うときは、専門家の支援を受けることが大切です。当事務所では、外国人の在留申請を代行するお手伝いをしていますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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