特定活動とはどのような在留資格でしょうか。また、外国人が特定活動の在留資格を取得するにはどうすればよいのでしょうか。
特定活動とは
特定活動とは、外国人に対して法務大臣が指定した特定の活動を認める在留資格です。
特定活動には、法務省で活動内容を指定されている告示特定活動、法務省告示に定めのない告示外特定活動があります。
特定活動の在留資格をもつ外国人は、2022年(令和4年)の時点で約8万3千人います。国籍別では、ベトナムが約2万6千人、中国が約1万1千人、フィリピンが約6千人などとなっています。
告示特定活動
告示特定活動は、法務省告示で活動内容を指定されている特定活動です。告示特定活動は、2023年の時点で52種類あり、社会情勢などに応じて追加と削除が行われます(法務省告示(令和5年3月改正))。
1号 外交官・領事官の家事使用人
2号~2号の4 高度専門職・経営者等の家事使用人
3号 台湾日本関係協会職員とその家族
4号 駐日パレスチナ総代表部職員とその家族
5号 ワーキング・ホリデー
5号の2 台湾人ワーキング・ホリデー
6号 アマチュアスポーツ選手
7号 アマチュアスポーツ選手の配偶者等
8号 国際仲裁代理
9号 インターンシップ
10号 英国人ボランティア
12号 サマージョブ
13号 大阪・関西万博(2025年日本国際博覧会)の関係者
14号 大阪・関西万博(2025年日本国際博覧会)の関係者の配偶者等
15号 国際文化交流
16~17号 インドネシアEPA看護師・介護福祉士候補者
18~19号 インドネシアEPA看護師・介護福祉士の配偶者等
20~22号 フィリピンEPA看護師・介護福祉士候補者
23~24号 フィリピンEPA看護師・介護福祉士の配偶者等
25号 医療滞在者
26号 医療滞在者の付添人
27~29号 ベトナムEPA看護師・介護福祉士候補者
30~31号 ベトナムEPA看護師・介護福祉士の配偶者等
32号 外国人建設就労者(2023年3月31日で外国人建設就労者受入事業が終了)
33号 高度専門職外国人の就労する配偶者
34号 高度専門職外国人またはその配偶者の親
35号 外国人造船就労者(2023年3月31日で外国人造船就労者受入事業が終了)
36号 特定研究等活動
37号 特定情報処理活動
38号 特定研究等活動・特定情報処理活動に従事する者の配偶者等
39号 特定研究等活動・特定情報処理活動に従事する者またはその配偶者の親
40号 観光、保養を目的とする長期滞在者
41号 観光、保養を目的とする長期滞在者の配偶者
42号 製造業外国従業員受入事業における特定外国従業員
43号 日系4世
44号 外国人起業家
45号 外国人起業家の配偶者等
46号 本邦大学卒業者
47号 本邦大学卒業者の配偶者等
50号 スキーインストラクター
51号 未来創造人材外国人
52号 未来創造人材外国人の配偶者等
告示外特定活動
告示外特定活動は、法務省告示に定めのない特定活動で、次のようなものが認められます。
在留期間更新許可申請、在留資格変更許可申請が不許可となった場合の出国準備活動
在留期間更新許可申請、在留資格変更許可申請が不許可となった外国人が、出国に必要な期間の滞在を認められます。
在留期間は4か月、2か月、30日のいずれかとなります。通常は30日の在留期間が指定されます。
留学生が大学を卒業した後に大学院へ進学するまでの滞在
留学の在留資格をもつ大学生が、大学を卒業した後に大学院へ進学するまでの滞在を認められます(出入国在留管理庁「大学を卒業後大学院へ進学する留学生の在留資格について」)。
在留期間は大学院に進学するまでの期間となります。通常は1年の在留期間が指定されます。
留学生が大学等を卒業した後も就職活動を継続するための滞在
留学の在留資格をもつ大学生、大学院生などが、大学、大学院などを卒業・修了した後も就職活動を継続するための滞在を認められます(出入国在留管理庁「大学等を卒業後就職活動のための滞在をご希望のみなさまへ」)。
在留期間は6か月となります。また、在留期間は1度更新することができ、通算1年の在留が認められます。
留学生が大学等の在学中または卒業した後に就職先が内定し、採用されるまでの滞在
留学の在留資格をもつ大学生、大学院生などが、大学、大学院などの在学中または卒業・修了した後に就職先が内定して、他の在留資格への変更が見込まれる場合に、採用されるまでの滞在を認められます(出入国在留管理庁「大学等の在学中又は卒業後に就職先が内定し採用までの滞在をご希望のみなさまへ」)。
在留期間は内定から1年、かつ卒業・修了した後1年6か月を超えない範囲内の期間となります。
留学生が大学等を卒業した後に起業活動を行うための滞在
留学の在留資格をもつ大学生、大学院生などが、大学、大学院などを卒業・修了した後に起業して、経営・管理の在留資格への変更が見込まれる場合に、起業活動を行うための滞在を認められます(出入国在留管理庁「本邦の大学等を卒業して起業活動を行うことを希望する方」)。
在留期間は6か月となります。
留学生が優秀な留学生の受入れに意欲的に取り組んでいる大学等を卒業した後に起業活動を行うための滞在
留学の在留資格をもつ大学生、大学院生などが、優秀な留学生の受入れに意欲的に取り組んでいる大学、大学院などを卒業・修了した後に起業して、経営・管理の在留資格への変更が見込まれる場合に、起業活動を行うための滞在を認められます(出入国在留管理庁「本邦において優秀な留学生の受入れに意欲的に取り組んでいる大学等を卒業して起業活動を行うことを希望する方」、「本邦の大学等を卒業した留学生による起業活動に係る措置について」)。
在留期間は2年となります。
特定技能1号への移行準備のための活動
特定技能1号の在留資格への変更を考えているが、在留期間内に必要な書類を準備できないなど時間がかかる場合に、移行準備を行うことを認められます(出入国在留管理庁「『特定技能1号』に移行予定の方に関する特例措置について」)。
在留期間は4か月となります。
家族滞在している外国人が高校等を卒業した後に行う就労活動
家族滞在の在留資格またはその要件を満たして在留していた外国人が、日本の義務教育を修了して高校などを卒業または卒業する見込みの場合に、技術・人文知識・国際業務などの在留資格の要件を満たさないものの、就労することを認められます(出入国在留管理庁「『家族滞在』の在留資格をもって在留し、本邦で高等学校卒業後に本邦での就労を希望する方へ」)。
高齢の親が子の扶養を受けるための滞在
適法に日本に在留する外国人に本国で1人で暮らす高齢の親がいて、病気などで1人での生活が難しいが、本国に扶養する親族などがおらず、外国人には扶養する意思や資力があるような場合に、人道上の配慮から親の滞在を認められる場合があります。
在留資格認定証明書交付請求はできないため、短期滞在の在留資格で入国した後で特定活動に在留資格変更許可申請をする必要があります。
特定活動の在留期間
特定活動の在留期間は、告示特定活動を指定される者の場合は、5年、3年、1年、6か月、3か月のいずれかとなります。ただし、特定活動によっては5年を超えない範囲内で個別の在留期間を指定されるものがあります。
原則として在留期間の更新は認められます。ただし、特定活動によっては在留期間の更新に制限がある、または在留期間の更新が認められないものがあります。
申請の手続
特定活動の在留資格を取得する場合は、申請人の在留状況に応じて、在留資格認定証明書交付申請、在留資格変更許可申請、在留資格取得許可申請のいずれかの手続が必要となります。
在留資格認定証明書交付申請
在留資格認定証明書交付申請は、申請人、法定代理人、外国人を受け入れようとする機関の職員その他法務省令で定める代理人(代理人)、申請等取次者(弁護士または行政書士を含む)が、出入国在留管理局に申請書、申請内容に応じて異なる必要書類を提出して行います。法定代理人または申請等取次者が申請を行う場合は、申請人または代理人が日本に滞在している必要があります。標準処理期間は、1か月~3か月とされています。
在留資格変更許可申請
在留資格変更許可申請は、申請人、法定代理人、申請等取次者(弁護士または行政書士、親族または同居者等を含む)が、出入国在留管理局に申請書、申請内容に応じて異なる必要書類を提出して行います。申請等取次者が申請を行う場合は、申請人が日本に滞在している必要があります。標準処理期間は、2週間~1か月とされています。
在留資格取得許可申請
在留資格取得許可申請は、申請人、法定代理人、申請等取次者(弁護士または行政書士、親族または同居者等を含む)が、出入国在留管理局に申請書、申請内容に応じて異なる必要書類を提出して行います。申請等取次者が申請を行う場合は、申請人が日本に滞在している必要があります。標準処理期間は、在留資格の取得の事由が生じた日から60日以内とされています。
申請提出者
法定代理人
申請人が18歳未満の場合は、親権者または未成年後見人、申請人が成年被後見人の場合は、成年後見人が法定代理人として申請を提出できます。
代理人
特定活動の在留資格では、次の者が代理人として申請を提出できます。
1 申請人が所属して活動を行うこととなる機関の職員
2 申請人を雇用する者または法務大臣が告示をもって定める者
申請等取次者
地方出入国在留管理局長から申請等取次者としての承認を受けた雇用機関、教育機関、監理団体、公益法人の職員は、申請人からの依頼を受けた場合に申請等取次者として申請を提出できます(在留資格認定証明書交付申請の場合は公益法人の職員のみ)。
弁護士または行政書士
地方出入国在留管理局長に届出をした弁護士または行政書士は、申請人からの依頼を受けた場合に申請を提出できます。
親族または同居者等
申請人が16歳未満の場合や申請人が疾病その他の事由により自ら出頭することができない場合、申請人の親族または同居者もしくはこれに準ずる者で地方出入国在留管理局長が適当と認める者は、申請を提出できます。適当と認める者には、医療滞在の同行者、刑事施設・児童相談所・婦人相談所の施設の職員、老人ホーム等の職員、教育機関等の職員、児童養護施設等の職員などが当たります。
申請手続の流れ
申請は次のような流れで行います。在留資格認定証明書交付申請は、一般的には国外にいる外国人に代わり日本国内にいる代理人が行います。
申請人が自ら手続を行う場合
1 申請人は、出入国在留管理局(外国人在留総合インフォメーションセンター)に在留申請の相談をします。出入国在留管理局の担当者は、申請人の在留資格や在留状況を確認したうえで、申請の要件を満たす可能性があると判断した場合は、申請に必要な書類について説明します。
2 申請人は、申請書とその他の申請に必要な書類を作成・収集します。出入国在留管理局で説明される書類は、申請に最低限必要となる書類なので、審査を有利にするためには、その他にも様々な書類を作成・収集する必要があります。このとき、書類に誤った内容を記載しないこと、すべての書類で内容に整合性があること、審査を不利にする内容を記載していないこと、収集した書類の有効期間に余裕があることなどに注意する必要があります。
3 申請人は、作成・収集した書類を出入国在留管理局に提出するか、在留申請オンラインシステムを利用して申請します。
4 出入国在留管理局は、提出された書類をもとに審査を行い、必要に応じて追加の書類の提出を求める場合があります。
5 出入国在留管理局は、申請人に審査結果の通知を行います。申請が許可された場合、申請人は出入国在留管理局で在留資格認定証明書または在留カードを受け取ることができます。在留申請オンラインシステムを利用して申請した場合は、申請人は電子メールで在留資格認定証明書を受け取る、または郵送で在留カードを受け取ることができます(出入国在留管理庁「在留資格認定証明書の電子化について」)。日本にいる代理人が申請人の代わりに在留資格認定証明書の交付を受けた場合は、申請人に証明書を送付または電子メールを転送します。
6 申請が不許可となった場合、申請人は出入国在留管理局で不許可となった理由の説明を日本語で1回のみ受けられます。不許可となった理由は、再び申請をするときに改める必要があるため、申請に用いた書類の控えを残しておき、どのような理由で不許可となったのか調査できるようにしておく必要があります。不許可の理由の説明は、不許可の判断に対する不服申立の手続ではないため、申請人が不服を主張しても不許可の判断が覆ることはありません。
専門家に手続を依頼する場合
1 申請人は、専門家に在留申請の相談をします。専門家は、申請人の在留資格や在留状況を確認したうえで、申請の要件を満たす可能性があると判断した場合は、申請人の依頼を受けます。専門家によっては、在留申請の知識が不十分な場合もあるため、相談・依頼をするときは外国人の在留手続に詳しい専門家を利用することが重要です。
2 専門家は、必要な書類を作成・収集します。必要な書類については専門家の判断で作成・収集します。
3 専門家は、作成・収集した書類を出入国在留管理局に提出するか、在留申請オンラインシステムを利用して申請します。
4 出入国在留管理局は、提出された書類をもとに審査を行い、必要に応じて追加の書類の提出を求める場合があります。追加の書類の提出は、専門家が取り次いで行います。
5 出入国在留管理局は、専門家に審査結果の通知を行います。申請が許可された場合、専門家は出入国在留管理局で在留資格認定証明書または在留カードを受け取ることができます。在留申請オンラインシステムを利用して申請した場合は、専門家は電子メールで在留資格認定証明書を受け取る、または郵送で在留カードを受け取ることができます(出入国在留管理庁「在留資格認定証明書の電子化について」)。専門家は、申請人に証明書や在留カードを送付または電子メールを転送します。
6 申請が不許可となった場合、専門家は出入国在留管理局で不許可となった理由の説明を受け、申請人に伝えます。再び申請をするときは、申請人は専門家に不許可となった理由を調査して対策をとってもらうことで、許可される可能性が高くなります。
申請に必要となる書類
申請には、手続きに応じて、在留資格認定証明書交付申請書、在留資格変更許可申請書、在留資格取得許可申請書が必要となります。その他にも申請内容に応じて異なる書類が必要となります。
結核スクリーニング
3か月を超える滞在予定期間で在留資格認定証明書交付申請をする場合、フィリピン、ベトナム、中国、インドネシア、ネパール、ミャンマー国籍の外国人は、日本政府が指定した医療機関が発行する結核非発病証明書を提出する必要があります(厚生労働省「入国前結核スクリーニングの実施について」)。なお、特定活動(台湾日本関係協会職員とその家族)、特定活動(駐日パレスチナ総代表部職員とその家族)は対象となりません。
まとめ
外国人が特定活動の在留資格を取得するには、一定の要件を満たしたうえで、査証申請、在留資格認定証明書交付申請、在留資格変更許可申請、在留資格取得許可申請のいずれかを行う必要があります。在留申請で提出する書類の作成・収集には、専門的な知識が必要となりますし、申請手続やその準備には多くの時間がかかります。また、不許可となった場合は、その理由を適切に調査できないと、何度申請しても許可されないおそれがあります。そのため、在留申請を行うときは、専門家の支援を受けることが大切です。当事務所では、外国人の在留申請を代行するお手伝いをしていますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。