外国人が技能実習生として日本に在留する場合にどのように在留資格を取得するのでしょうか。また、技能実習を継続するためにどのような手続が必要となるのでしょうか。
技能実習とは
技能実習とは、外国人が日本で技能、技術、知識を修得して本国に移転するために実習を受けることを認める在留資格です。
技能実習制度は、1960年代後半に日本企業が海外の現地法人で従業員に対して行っていた研修制度を基に1993年に制度化したものです。制度が作られた当初は、1年目は研修、2、3年目は特定活動の在留資格とされましたが、2010年の法改正により技能実習の在留資格が設けられました。
技能実習の在留資格では原則として資格外活動許可を取得することができません。
技能実習の在留資格をもつ外国人は、2022年(令和4年)の時点で約32万5千人います。国籍別では、ベトナムが約17万6千人、インドネシアが約4万6千人、フィリピンが約2万9千人などとなっています。
技能実習の在留期間
技能実習の在留資格は、技能実習1~3号の資格に分かれています。技能実習の在留期間は、技能実習1号では1年、技能実習2号では2年、技能実習3号では2年の通算5年となっています。
外国人が技能実習の在留資格で長期間在留するときは、技能実習1号の在留資格で上陸した後、技能実習1号から2号、2号から3号へと在留資格の変更を申請する必要があります。
技能実習生の受け入れ方式
技能実習で在留する外国人の受け入れ方式には、企業単独型と団体監理型の2つの受け入れ方式があり、企業単独型に対応する在留資格として技能実習(1~3号イ)、団体監理型に対応する在留資格として技能実習(1~3号ロ)が定められています。企業単独型では、日本の企業等の海外の現地法人、合弁企業、取引先企業等が外国人を日本に派遣し、それを日本の企業等が技能実習生として受け入れます。団体監理型では、海外の送出機関が外国人を日本に派遣し、それを日本の監理団体が技能実習生として受け入れ、傘下の企業等で実習させます。
送出機関
送出機関は、技能実習生の所在する国または地域の公的機関から認定を受けた機関です。送出機関は、技能実習生になろうとする者の中から候補者を選定して日本に派遣します。送出機関のうち技能実習生になろうとする者の技能実習の申込みを監理団体に取り次ぐものを取次送出機関といいます。また、送出機関に対して、技能実習生になろうとする者が所属していた企業、日本語学校などの教育機関、旅券や査証の取得代行者など、外国で技能実習の準備に関わる機関のことを外国の準備機関といいます。
監理団体
監理団体は、技能実習の監理(監理事業)を目的とした非営利法人です。一般的には、商工会議所、商工会、事業協同組合、公益社団法人、公益財団法人などが監理団体となります。監理事業を行おうとする者は、監理団体の許可申請を行い、法務大臣および厚生労働大臣の許可を受ける必要があります。監理団体の許可には、一般管理事業と特定監理事業があり、一般管理事業は、技能実習1~3号を監理でき、許可の有効期間が5年または7年、特定監理事業は、技能実習1、2号を監理でき、許可の有効期間が3年または5年となります(前回許可期間内に改善命令や業務停止命令を受けていない場合は長期の有効期間となります)。
技能実習生を受け入れている国
外国人が技能実習の在留資格で日本に在留するには、外国人の本国政府が日本政府と技能実習に関する二国間取決め(協力覚書)を締結している必要があります。2023年の時点では次の16か国から技能実習生を受け入れています。
インド、インドネシア、ウズベキスタン、カンボジア、スリランカ、タイ、中国、ネパール、パキスタン、バングラデシュ、フィリピン、ベトナム、ペルー、ミャンマー、モンゴル、ラオス
申請の手続
技能実習の在留資格を取得する場合は、申請人の在留状況に応じて、在留資格認定証明書交付申請、在留資格変更許可申請のいずれかの手続が必要となります。
在留資格認定証明書交付申請
在留資格認定証明書交付申請は、申請人、法定代理人、外国人を受け入れようとする機関の職員その他法務省令で定める代理人(代理人)、申請等取次者(弁護士または行政書士を含む)が、出入国在留管理局に申請書、申請内容に応じて異なる必要書類を提出して行います。法定代理人または申請等取次者が申請を行う場合は、申請人または代理人が日本に滞在している必要があります。標準処理期間は、1か月~3か月とされています。
在留資格変更許可申請
在留資格変更許可申請は、申請人、法定代理人、申請等取次者(弁護士または行政書士、親族または同居者等を含む)が、出入国在留管理局に申請書、申請内容に応じて異なる必要書類を提出して行います。申請等取次者が申請を行う場合は、申請人が日本に滞在している必要があります。標準処理期間は、2週間~1か月とされています。
申請提出者
法定代理人
申請人が成年被後見人の場合は、成年後見人が法定代理人として申請を提出できます。
代理人
技能実習の在留資格では、企業単独型の場合は受け入れ企業の職員、団体監理型の場合は監理団体の職員が代理人として申請を提出できます。
申請等取次者
地方出入国在留管理局長から申請等取次者としての承認を受けた雇用機関、教育機関、監理団体、公益法人の職員は、申請人からの依頼を受けた場合に申請等取次者として申請を提出できます(在留資格認定証明書交付申請の場合は公益法人の職員のみ)。
弁護士または行政書士
地方出入国在留管理局長に届出をした弁護士または行政書士は、申請人からの依頼を受けた場合に申請を提出できます。
親族または同居者等
申請人が疾病その他の事由により自ら出頭することができない場合、申請人の親族または同居者もしくはこれに準ずる者で地方出入国在留管理局長が適当と認める者は、申請を提出できます。適当と認める者には、医療滞在の同行者、刑事施設・児童相談所・婦人相談所の施設の職員、老人ホーム等の職員、教育機関等の職員、児童養護施設等の職員などが当たります。
申請手続の流れ
技能実習生の受け入れは次のような流れで行います。
1 技能実習計画認定申請
2 在留資格認定証明書交付申請
3 査証申請
4 上陸手続
5 入国後講習の実施
6 技能実習の開始、実習実施者の届出
7 在留資格変更許可申請
技能実習計画認定申請
技能実習生を受け入れる場合、まず技能実習を行わせようとする者(実習実施者)は、技能実習計画を作成し、外国人技能実習機構(OTIT)の認定を受ける必要があります。企業単独型の場合は受け入れ企業、団体監理型の場合は監理団体の下で実習を行う受け入れ企業が実習実施者に当たります。団体監理型の場合は、実習実施者は監理団体の指導を受けて技能実習計画を作成する必要があります。
技能実習生の要件
外国人を技能実習生として受け入れるには、次の要件を満たす必要があります(外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律施行規則第10条2項3号)。
1 18歳以上であること
2 制度の趣旨を理解して技能実習を行おうとする者であること
3 本国に帰国後、日本で修得等をした技能等を要する業務に従事することが予定されていること
4 企業単独型の場合は、申請人の外国にある事業所または外国の公私の機関の外国にある事業所の常勤の職員であり、その事業所から転勤または出向する者であること
5 団体監理型の場合は、日本で従事しようとする業務と同種の業務に外国で従事した経験が有ること、または技能実習に従事することを必要とする特別な事情があること
6 団体監理型の場合は、外国人が国籍または住所を有する国または地域の公的機関から推薦を受けていること
7 技能実習3号の場合は、技能実習2号の終了後本国に1か月以上一時帰国してから技能実習3号を開始すること、または技能実習2号の終了後引き続き技能実習3号を開始してから1年以内に技能実習を休止して1か月以上1年未満の期間一時帰国した後、休止している技能実習を再開すること
8 同じ段階の技能実習を過去に行ったことがないこと
在留資格認定証明書交付申請
在留資格認定証明書交付申請は、一般的には受け入れ企業または監理団体の職員が代理人として行います。代理人は、出入国在留管理局から在留資格認定証明書を受け取り、外国人に送付します。また、代理人は、査証の申請に必要となる書類も外国人に送付します。
上陸許可基準
技能実習の在留資格認定証明書を取得して上陸する場合、技能実習計画について認定を受けている必要があります。
入国後講習の実施
日本に上陸した外国人は、技能実習を開始する前に日本語、日本の生活知識、出入国や労働に関する法令などを学ぶ講習を受けます。
技能実習の開始、実習実施者の届出
実習実施者は、技能実習を開始したときは外国人技能実習機構に対して届出を行う必要があります。
在留資格変更許可申請
技能実習の在留資格は、技能実習1~3号それぞれに在留期間が決まっているため、長期間在留するためには、在留資格変更許可を申請する必要があります。
技能実習1号から2号への変更
技能実習1号から2号に変更する場合、技能実習生は、都道府県および指定試験機関が実施する技能実習生等向け技能検定の基礎級に合格する必要があります。技能検定は、技能実習1号が終了する6か月前までに受験を申請する必要があり、実技試験と学科試験の両方の合格が必要です。技能実習生が技能検定に合格した場合は、受け入れ企業は技能実習計画を作成し、外国人技能実習機構の認定を受ける必要があります。その後、技能実習生は在留資格変更許可申請を行います。
技能実習2号から3号への変更
技能実習2号から3号に変更する場合、まず技能実習2号の在留資格の時点で、技能実習生は、都道府県および指定試験機関が実施する技能実習生等向け技能検定の3級または臨時3級に合格する必要があります。技能検定は、技能実習2号が終了する12か月前までに受験を申請する必要があり、実技試験の合格が必要です。技能実習生が技能検定に合格した場合は、受け入れ企業は技能実習計画を作成し、外国人技能実習機構の認定を受ける必要があります。その後、技能実習生は在留資格変更許可申請を行います。技能実習3号への変更の場合、技能実習生は技能実習2号が終了してから技能実習3号が開始するまでの間、または技能実習3号が開始してから1年の間に1か月以上の一時帰国をする必要があります。
次に技能実習3号の在留資格の時点で、技能実習生は、都道府県および指定試験機関が実施する技能実習生等向け技能検定の2級または臨時2級に合格する必要があります。技能検定は、技能実習3号が終了する12か月前までに受験を申請する必要があり、実技試験の合格が必要です。
移行対象職種
技能実習1号から技能実習2号、技能実習2号から技能実習3号への変更ができる職種・作業は、移行対象職種として制限されています。移行対象職種に当たる職種・作業は増加しており、2023年時点で88職種161作業が対象となっています。
優良な実習実施者
技能実習3号への変更には、企業単独型の場合は実習実施者、団体監理型の場合は実習実施者と監理団体の両方が、優良な実習実施者の認定を受けている必要があります。優良な実習実施者の認定を受けるには、過去に受け入れた技能実習生の技能検定の合格率、技能実習指導員や生活指導員の講習受講歴、技能実習生の待遇などで一定の基準を満たしたうえで、外国人技能実習機構に対して優良要件適合申告を行う必要があります。
優良な実習実施者の認定を受けると、技能実習3号への変更ができるようになる他、1年間に受け入れることのできる技能実習生の人数の上限が2倍に拡大されます。
申請に必要となる書類
申請には、手続きに応じて、在留資格認定証明書交付申請書、在留資格変更許可申請書が必要となります。その他にも申請内容に応じて異なる書類が必要となります。
結核スクリーニング
在留資格認定証明書交付申請をする場合、フィリピン、ベトナム、中国、インドネシア、ネパール、ミャンマー国籍の外国人は、日本政府が指定した医療機関が発行する結核非発病証明書を提出する必要があります(厚生労働省「入国前結核スクリーニングの実施について」)。
技能実習制度の今後
技能実習制度には、以前より時間外労働、賃金不払い、強制帰国など様々な人権問題や法令違反が発生していることが指摘されています。また、国際貢献という技能実習制度本来の目的ではなく、労働環境が厳しい業種で安価な労働力を確保する目的で利用されているという指摘もされています。このように技能実習制度には様々な問題があることが国内外から批判されています。これを受けて、政府の設置した「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」は技能実習制度についての議論を行い、2023年5月に中間報告を行いました。この報告では、技能実習制度の廃止、新たな制度への移行、他の企業への転籍の緩和、特定技能の在留資格の活用、監理団体の要件の厳格化などが示されています。
まとめ
外国人が技能実習生として日本に在留するには、技能実習制度に基づいて、一定の要件を満たしたうえで、日本の受け入れ企業側の手続も必要となります。また、技能実習を継続するには、技能検定を受験するなど技能実習制度に特有の手続が必要となります。日本の事業主が技能実習生を受け入れる際は、外国人の在留に関する様々な申請手続きが必要となります。在留申請を行うときは、専門家の支援を受けることが大切です。当事務所では、技能実習に関わる在留申請を代行するお手伝いをしていますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。