海外と日本との輸出入においては、外国語を使った事務ややり取りが不可欠です。このことから、高い語学力やコミュニケーション力を備えた外国人の人材を求める企業は少なくないといえます。ここでは、貿易業で外国人を採用するための就労ビザについて説明していきます。

 

許可が下りる可能性のある業務とは

就労ビザは単純労働に対しては許可されません1人が広範囲な業務を負う小規模事業者や個人事業主などに雇用される場合、荷物の授受や簡単な事務作業を担うケースも多いことから、入国管理局の審査官に「単純労働が含まれるのではないか」と見られる可能性も出てきます。基本的にホワイトカラーとよばれる職種は許可される可能性は高くなることから、申請の際には、採用する外国人の担当業務が経理や総務、貿易事務や通訳・翻訳などの専門性を必要とするものであることをきちんとアピールする必要があるでしょう。

 

適切な在留資格と申請要件・必要書類について

ここでは、貿易のジャンルで外国人を採用するにあたり、適切な在留資格やその申請要件、注意すべきポイントなどについてまとめていきます。

 

適切な在留資格は「技術・人文知識・国際業務」

貿易事務として外国人を採用する場合、最も適切と考えられるのは技術・人文知識・国際業務の在留資格です。貿易の場合は文系の高等教育を受けていることが求められることになります。

 

申請要件

技術・人文知識・国際業務の在留資格を得るためには、申請に際して次の条件を満たしている必要があります。

 

  • 大学あるいは同等以上の教育機関で貿易事務に関連する専攻科目を修得していること
  • 専修学校の場合は専門士の資格を得ていること

 

重要なのは、高等教育機関で貿易事務に関連するテーマについて学び学士あるいは専門士の資格を得ている点です。あくまでも外国人の専門分野と就労予定の貿易事務との間に強い関連性があることが条件になりますので、この点について申請前にしっかりと確認することが必要になってくるでしょう。

 

もし、高等教育機関で専門科目を修得していなかった場合でも、すでに貿易事務について10年以上の実務経験を有していれば、申請することが可能です。10年という期間のなかには教育期間を含めてもいいので、貿易事務の実務経験だけで10年以上必要というわけではありません。

 

企業側に求められる書類

技術・人文知識・国際業務の在留資格を得るためには、外国人自身だけではなく雇用元である企業も書類を提出する必要があります。代表的な提出書類には以下のものが挙げられます。

 

  • 法人登記簿謄本
  • 決算報告書(直近の貸借対照表と損益計算書)
  • 事業内容がわかるパンフレットやホームページなど
  • 採用理由書

 

決算書類を提出する理由としては、企業が赤字経営ではないかを確認するためであると心得ておきましょう。赤字経営では、外国人の安定的な雇用に不安があると見なされてしまうため、非常に重要なポイントとなります。また、小規模事業者や個人事業主の場合、事業内容がわかるパンフレットやホームページを持っていないケースも見られるため、事業実態がわかるようあらかじめホームページを開設したりパンフレットを印刷したりしておくことも重要です。採用理由書を提出する理由としては、外国人を採用する必要性を審査官に理解してもらうためであると理解しておきましょう。当該外国人の能力が事業において重要な要素になることを立証する必要があるので、理由書の他に業務内容や業務の実態がわかるような補足資料を添付するのもいい方法です。

 

企業が注意すべきポイント

【待遇】

採用する外国人に対しては、日本人スタッフと同等以上の報酬を支払う必要があります。外国人の母国の物価水準にかかわらず、日本において日本人に支払っている額と同等以上でなければなりません。

 

【専門性】

特に外国人を雇用しなくてもいいような単純労働では、在留資格の申請ができませんし許可を得ることも叶いません。専門的な分野で専門的かつ外国人だからこそできる業務であることが必要なのです。この点を明らかにする書類も添付すると審査官にも実情が伝わりやすくなるでしょう。

 

まとめ

この他にも事業自体の証明として通関証明書やインボイスなどを提出し立証する必要も出てきます。外国人および企業が提出すべき書類は、入国管理局のホームページで確認することができますが、企業は雇用側として上に挙げたような点を立証できる書類を添付することが望ましいといえます。しかし、これまで外国人を採用したことがない企業の場合、具体的にどのような書類を用意すれば審査官の心証が良くなるのか、許可を得られる可能性を高められるのか、ポイントを掴みにくいかもしれません。

このようなときこそ、許認可の専門家である行政書士に相談・依頼し、専門的観点からのアドバイスを得て提出書類を用意していくことをおすすめします。