特定技能の介護分野で外国人を受け入れるにはどうすればよいのでしょうか、特定技能の介護分野で外国人を受け入れる場合の要件について解説します。

特定技能とは

特定技能とは、日本において人材確保が困難となっている特定の産業分野において、日本の公私の機関との雇用契約に基づいて知識や技能を有する外国人が業務に従事することを認める在留資格です。

特定技能の在留資格は、介護、ビルクリーニング、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業の12種類の産業分野(特定産業分野)で認められています。

特定技能の在留資格をもつ外国人は、2022年(令和4年)の時点で約13万1千人います。介護分野で特定技能の在留資格をもつ外国人は、2022年(令和4年)の時点で約1万6千人います。

特定技能の活動制限

特定技能1号

特定技能1号では、日本の公私の機関との雇用に関する契約に基づいて行う特定産業分野であって、相当程度の知識または経験を必要とする技能を要する業務に従事する活動を行うことが認められます。

特定技能2号

特定技能2号では、日本の公私の機関との雇用に関する契約に基づいて行う特定産業分野であって、熟練した技能を要する業務に従事する活動を行うことが認められます。特定技能2号の在留資格は、特定技能1号から在留資格の変更を申請する必要があります。介護の産業分野では、介護の在留資格があるため、特定技能2号の在留資格は取得できません

特定技能の在留期間

特定技能1号の在留期間は、1年を超えない範囲内の期間となります。

特定技能1号では、在留期間を更新することで通算5年の在留が認められます。

他の介護活動が認められる在留資格との違い

介護活動が認められる在留資格には、特定技能の他に介護、技能実習、特定活動(EPA介護福祉士、EPA介護福祉士候補者)があり、それぞれ雇用できる期間や従事させることができる業務が異なります。

介護

介護の在留資格では、在留期間を更新することで上限なく在留が認められ、長期間、継続して雇用することができます。また、すべての介護サービスに従事させることができ、訪問介護サービスに従事させることも認められます

特定技能

特定技能の在留資格では、通算5年、技能実習の在留資格から変更することで併せて通算10年、特定活動(EPA介護福祉士候補者)から変更することで併せて通算9年雇用することができます。また、訪問介護サービスに従事させることは認められません

技能実習

技能実習の在留資格では、通算5年、特定技能の在留資格に変更することで併せて通算10年雇用することができます。また、訪問介護サービスに従事させることは認められません

特定活動(EPA介護福祉士、EPA介護福祉士候補者)

特定活動(EPA介護福祉士候補者)の在留資格では、通算4年、特定技能に変更することで併せて通算9年雇用することができます。EPA介護福祉士候補者が介護福祉士の資格を取得した場合は、EPA介護福祉士として在留期間を更新することで上限なく在留が認められ、長期間、継続して雇用することができます。また、特定活動(EPA介護福祉士候補者)の在留資格では、訪問介護サービスに従事させることは認められませんが、特定活動(EPA介護福祉士)の在留資格では、訪問介護サービスに従事させることが認められます

介護分野で外国人を受け入れるには

特定技能の介護分野で外国人を受け入れるには、外国人を就労させる受入機関(特定技能所属機関)が、外国人と雇用契約(特定技能雇用契約)を結ぶ必要があります。特定技能雇用契約は、出入国管理及び難民認定法、および法務省令「特定技能雇用契約及び1号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令(令和2年改正)」の要件を満たす必要があります。また、介護分野では「厚生労働省告示(平成31年制定)」の要件を満たす必要があります。各要件の詳細について、「分野別運用方針」、「分野別運用要領(令和4年8月改正)」、「運用要領『介護分野の基準について』(令和4年8月改正)」が定められています。

介護分野で外国人を雇用する場合は、外国人を直接雇用する必要があり、派遣請負といった形で間接雇用することは認められません

特定技能所属機関の要件

特定技能所属機関は、次のいずれの要件も満たす必要があります。

1 1号特定技能外国人を受け入れる事業所が、介護等の業務を行うものであること

介護等の業務は、利用者の居宅においてサービス(訪問介護サービス)を提供する業務を除きます

2 1号特定技能外国人を受け入れる事業所において、1号特定技能外国人の数が、事業所の日本人等の常勤の介護職員の総数を超えないこと

日本人等には、介護、特定活動(EPA介護福祉士)、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者の在留資格をもつ外国人および特別永住者を含みます。

3 「介護分野における特定技能協議会」の構成員であること、ただし、1号特定技能外国人を受け入れていない機関は、1号特定技能外国人を受け入れた日から4か月以内に協議会の構成員となること

4 協議会に対し、必要な協力を行うこと

5 厚生労働大臣が行う調査、指導、情報の収集、意見の聴取その他業務に対して必要な協力を行うこと

介護分野で外国人を雇用できる事業所

特定技能の介護分野で外国人を雇用する場合は、次の事業所に当たることが必要です(厚生労働省「対象施設」)。

児童福祉法関係の施設・事業

・肢体不自由児施設または重症心身障害児施設の委託を受けた指定医療機関(国立高度専門医療研究センターおよび独立行政法人国立病院機構の設置する医療機関であって厚生労働大臣の指定するもの)
・児童発達支援
・放課後等デイサービス
・障害児入所施設
・児童発達支援センター
・保育所等訪問支援

障害者総合支援法関係の施設・事業

・短期入所
・障害者支援施設
・療養介護
・生活介護
・共同生活援助(グループホーム)(外部サービス利用型を除く)
・自立訓練
・就労移行支援
・就労継続支援
・福祉ホーム
・日中一時支援
・地域活動支援センター

老人福祉法・介護保険法関係の施設・事業

・第1号通所事業
・老人デイサービスセンター
・指定通所介護
・指定地域密着型通所介護(指定療養通所介護を含む)
・指定認知症対応型通所介護
・指定介護予防認知症対応型通所介護
・老人短期入所施設
・指定短期入所生活介護
・指定介護予防短期入所生活介護
・養護老人ホーム※1
・特別養護老人ホーム(指定介護老人福祉施設)
・軽費老人ホーム※1
・ケアハウス※1
・有料老人ホーム※1
・指定小規模多機能型居宅介護※2
・指定介護予防小規模多機能型居宅介護※2
・指定看護小規模多機能型居宅介護※2
・指定認知症対応型共同生活介護
・指定介護予防認知症対応型共同生活介護
・介護老人保健施設
・介護医療院
・指定通所リハビリテーション
・指定介護予防通所リハビリテーション
・指定短期入所療養介護
・指定介護予防短期入所療養介護
・指定特定施設入居者生活介護
・指定介護予防特定施設入居者生活介護
・指定地域密着型特定施設入居者生活介護

※1特定施設入居者生活介護(外部サービス利用型特定施設入居者生活介護を除く)、介護予防特定施設入居者生活介護(外部サービス利用型介護予防特定施設入居者生活介護を除く)、地域密着型特定施設入居者生活介護(外部サービス利用型地域密着型特定施設入居者生活介護を除く)を行う施設が対象となります。

※2訪問系サービスに従事することは除きます。

生活保護法関係の施設

・救護施設
・更生施設

その他の社会福祉施設等

・地域福祉センター
・隣保館デイサービス事業
・独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園
・ハンセン病療養所
・原子爆弾被爆者養護ホーム
・原子爆弾被爆者デイサービス事業
・原子爆弾被爆者ショートステイ事業
・労災特別介護施設

病院または診療所

・病院
・診療所

介護分野で外国人が従事できる業務

特定技能の介護分野で外国人を雇用する場合は、外国人に従事させる業務が次のものであることが必要です。また、業務と併せて、業務に従事する日本人が通常従事することとなる関連業務付随的に従事させることが認められます(お知らせ等の掲示物の管理、物品の補充や管理など)。なお、訪問介護サービスに従事させることは認められません

1 身体介護等(利用者の心身の状況に応じた入浴、食事、排せつ、整容・衣服着脱、移動の介助など)

2 付随する支援業務(レクリエーションの実施、機能訓練の補助など)

まとめ

特定技能の介護分野で外国人を受け入れるには、外国人と特定技能雇用契約を結び直接雇用する必要があります。また、特定技能の在留資格で外国人が従事できる業務は決まっているため、その範囲内で業務に従事させる必要があります。当事務所では、特定技能の在留資格で外国人を受け入れるお手伝いをしていますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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